【スバル レヴォーグ 新型試乗】旧型と乗り比べてわかった、「次元が違う」走りとは …中村孝仁

スバル レヴォーグ 新型(プロトタイプ)
スバル レヴォーグ 新型(プロトタイプ)全 39 枚
間もなくスバル『レヴォーグ』が一新される。すでに8月20日に先行予約が開始され、10月に発売という段取りだ。発売に先行してプロトタイプの試乗会が開催された。ナンバーがないから勿論クローズドコース。今年はコロナの影響で、商品の説明もリモートで行われた。

商品概要の紹介を見ると、やたらと「次元が違う」という言葉が使われている。これは乗った後での感想だが、確かに旧型と比較して乗り比べてみると、本当に次元が違う。嫌味に解釈すると、じゃあ今まで何をやっていたの?ということになるのだが、先代があるからこそ今があるわけで、その先代も十分に良いクルマと評価をさせて頂いていたのだが、今度はホントに次元の違う進化を見せた。これは凄いことである。

◆「アイサイトX」の進化

オプション装備される「渋滞時ハンズオフアシスト」でテストコース内走行する新型レヴォーグのプロトタイプ
その次元の違いは走りとなって表れているのだが、今回JARIのテストコースを使って行われた試乗会のホントの目的は、新しいアイサイトの体感であるのでまずはそちらから。

新しいアイサイトはその名も「アイサイトX」と呼ばれる。さすがに従来のアイサイトよりも少し割高になるが、それでもハンズオフでの走行を可能にしたり、高速の料金所に見立てた場所に近づくと自動的に速度を落とし、勝手に走行してくれる他、アクティブレーンチェンジアシストと言って、車線変更も条件さえ整えば自動的に行う。

さらにドライバーに異変が生じるとそれを検知して何段階かに別けたアラートを出し、最後には周囲にクラクションで知らせながらクルマを止めるというところまでやってくれる。また、渋滞で前車に従ってクルマが停車すると、従来は前車が発進した際にはドライバーが何らかのアクションでクルマを発進させなければならなかったが、再発進まで自動的にやってくれるし、停車の時間が長くなっても再発進を行ってくれる。まあとにかく便利だ。

ただしである。これらはすべて現行の道交法に基づいて制御が行われる。だから例えば料金所では速度をほぼ20km/hまで減速するが、ご存知の通り高速の料金所で20km/hまで減速しているドライバーなどほとんど見かけることはないから、実践的かと言われれば、そこは中々判断が難しいし、場合によっては追突される危険性だってある。

全てのクルマが自動的にこうした走行状況を作り出してくれれば問題はないが、自動と手動が混在している状況では、完璧を望むことはできない。それでも、事故を減らそうというスバルの取り組みは大いに評価すべきだと思う。

◆これまでとは次元が違う走り


ではいよいよ次元の違う走りについて話をしよう。今回のレヴォーグ、新たに新開発の1.8リットルエンジンが設定された。因みにエンジンはこれだけ。よりリーン領域を広げて燃費改善が図られているそうだ。勿論パフォーマンス的な向上も見られる。一番感心したのはそのスムーズさや静粛性であった。

次に骨格は新たにSGP(スバルグローバルプラットフォーム)を採用して、従来車よりもねじり剛性を44%も向上させたという。これが走りに大きく寄与していることは後述する。


最後はステアリング。新たに2ピニオンの電動パワーステアリングが採用された。従来はハンドルからの入力とモーターアシストが同軸上にあったが、これを分離。これによってスムーズな応答と遅れのないステアフィールを実現しているそうだ。これも走りを次元の違うステージに引き上げた原動力だと思う。

走りとは関係ないが、室内には11.6インチという巨大なディスプレイが装備されて、どちらかと言えば縦長のディスプレイに変貌した。ボルボのようなイメージだが、見易いという点では大きな進化である。

◆レーンチェンジで旧型と大きな違い


というわけでほぼすべてに渡り、大きな進化を遂げているのが新しいレヴォーグ。で、その走りを旧型と乗り比べてくださいというのが今回のもう一つのテーマでもある。試したのは70~80km/h程度でのレーンチェンジ。そして50R程度の旋回及びパイロンスラロームである。

顕著な違いを見せたのは、レーンチェンジ。アクセルオフから転舵そして荷重移動という一連の動きで最も異なっていたのは、最初のアクセルオフから転舵の動きである。旧型で試すとまあスムーズには動くのだが、新型と比較するとメリハリのないダラーっとした動きであるのに対し、ニューモデルはカチッカチッとメリハリがあって何よりも非常に正確な動きを見せる。その違い…まさに次元が違う。

骨格が強化されて入力をきちっと受け止め、新しいスムーズな2ピニオンステアアリングが正確にクルマをドライバーの意図通りに動かしてくれるという印象である。まあ、自動車の試験場という特殊な路面だから、一般道にダイレクトに当てはめることはできないが、良い条件下とはいえ、ここまで気持ちよくスパッとクルマが動いてくれると感動的である。

◆キープコンセプトでも見栄えが変わった


最後に少しデザインの話を。先代で何が気に入らなかったかと言えば、サイドウィンドーグラフィックの下側を走るクロームのラインがリアウィンドー下でバッサリと断ち切られていたこと。何であのようなデザインになったかさっぱりわからなかったが、ニューモデルではそれをちゃんとサイドウィンドー下全域に通るように改めてくれた。基本的なデザインは完全にキープコンセプトであるが、これだけで見栄えがだいぶ違う。

内外装及びメカニズムを大幅刷新しているにもかかわらず、お値段は若干程度の上昇にとどまるようで、ここでも正直「なんでもっと早くこれ出してくれないの?」と突っ込みたくなるほど今回のレヴォーグは良くできている。



■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、その後ドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来40年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。 また、現在は企業向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「本当に世に出るとは」車重わずか1トンで800馬力V12、「超アナログ」スーパーカー…新型車記事ランキング 8月
  2. マツダの新型SUV『EZ-60』すでに4万台の予約殺到! SNSでは「マツダ復権か??」「日本でも売るべき」など話題に
  3. さらなる人馬一体へ!NDロードスター用「リビルトエンジン」発売、価格は65万7800円
  4. ホンダの社員食堂、白いユニフォームでカレーうどんを金曜日に食べる理由
  5. ホンダアクセス、新型『プレリュード』の純正用品発売…スペシャリティクーペをさらに上質に
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る