なぜ『オーラNISMO』がベースなのか? 強引にエクストレイルのe-POWERを搭載した、日産最小のスーパーカー…東京オートサロン2026

日産モータースポーツ&カスタマイズNISMO事業所モータースポーツパワートレイン開発部主管の片倉丈嗣さん(右)と同オーテック事業所カスタマイズデザイン部部長の森田充儀さん(左)
日産モータースポーツ&カスタマイズNISMO事業所モータースポーツパワートレイン開発部主管の片倉丈嗣さん(右)と同オーテック事業所カスタマイズデザイン部部長の森田充儀さん(左)全 20 枚

日産自動車と日産モータースポーツ&カスタマイズは「東京オートサロン2026」で、『AURA NISMO RS Concept』を世界初公開した。コンパクトスポーツ『AURA NISMO(オーラニスモ)』のボディに『X-TRAIL NISMO(エクストレイルニスモ)』のパワーユニットを搭載した高性能スポーツで、レースの現場での知見をより早く市販車につなげるために位置付けられたクルマだという。

【画像】日産 AURA NISMO RS Concept

◆一番小さいクルマに一番大きいe-POWERを搭載

日産 AURA NISMO RS Concept(東京オートサロン2026)日産 AURA NISMO RS Concept(東京オートサロン2026)

日産モータースポーツ&カスタマイズは「NISMO」として現在、電動車のレースカーを開発中だ。当然市販車へのフィードバックのための活動なのだが、「レースカーをいきなり作ってしまうと、量産車へのフィードバックに時間がかかってしまいます。そこですぐに量産にフィードバックできるような“検証車”を作りたい。そしてどうせ検証車を作るのであれば市販も匂わせたい。そこでデザインに格好良い絵を描いてくださいといってできたのがこのクルマです」と背景を話すのは日産モータースポーツ&カスタマイズ NISMO事業所モータースポーツパワートレイン開発部主管の片倉丈嗣さんだ。

パワートレインはe-POWERにe-4ORCEが組み合わされた。e-POWERのラインナップは『ノートオーラ』に搭載されている1.2リットルエンジン、『セレナ』などの1.4リットルエンジン、そして『エクストレイル』の1.5リットルVCターボエンジンがある。片倉さんは、「どうせやるなら中途半端は良くないと、かなり強引な手法でエクストレイルNISMO用の1.5リットルVCターボをそのまま搭載しました。車格的には2段階ぐらい大きいエンジンですが、全体のパワーとともに、トルクも大きくなります。パワーウェイトレシオでいえばいまやり得る中で最大限にすることもできています」と説明する。

◆「レース専用パーツは使用しない」

日産 AURA NISMO RS Concept(東京オートサロン2026)日産 AURA NISMO RS Concept(東京オートサロン2026)

そこまでやるのであれば、「シャシー制御も協調制御しよう」と、オリジナルの四駆からe-4ORCEにした。実は片倉さんは日産時代に実はe-4ORCEの開発にも携わっていたので得意分野だ。

「レースのレギュレーションによると、ST-Qクラスという開発カテゴリーであればチャレンジできることが分かりました。シャシー制御すると、これぐらい良くなるとか、プロドライバーでももっと速く走らせられる。さらにはエネルギーマネジメントやトルクマネジメントもレースでチャレンジしたいというのが開発としての思い」と述べ、「結果としてかなり良いクルマになると思っています」と仕上がり予想に自信を見せる。

またエクストレイル用のパワートレインを採用したのは量産技術の磨き込みも想定してのこと。片倉さんは、「レース専用部品など尖ったことはやっていません」と明言。その理由は、「日産がいま出している技術の延長線でこういうクルマが作れるということをアピールしたかったから」だという。

日産 AURA NISMO RS Concept(東京オートサロン2026)日産 AURA NISMO RS Concept(東京オートサロン2026)

「いま日産は商品力やモデル更新のタイミングなどもあり、必ずしもいい印象だけではなく、反省すべき点があります。ですがいま出している技術の集合体で魅力的なものに生まれ変われるところを見せることで、期待もしていただけるのではないか。そしてそこにちゃんと応えていかなければいけない。これは自分で自分の首を絞めている部分でもありますが、こういったクルマをきっかけに、期待もしてほしいですし、我々ももっとそれに応えるような開発のやり方につながる起爆剤になってほしい」とコメントした。

ではなぜオーラNISMOをベース車として選んだのか。片倉さんは、「e-POWERの商品価値を上げたいから」だと話す。「e-POWERを搭載しているクルマの中で一番小さなカテゴリーのスポーツモデルをベースにして、そこに一番大きなエンジンを搭載しようと、あえてオーラを選んでいます。実はこれ以上小さいクルマが存在しないこともあるんですが、1.5リットルVCターボがギリギリ入ってくれたこともあります」と明かした。

日産モータースポーツ&カスタマイズNISMO事業所モータースポーツパワートレイン開発部主管の片倉丈嗣さん(右)と同オーテック事業所カスタマイズデザイン部部長の森田充儀さん(左)日産モータースポーツ&カスタマイズNISMO事業所モータースポーツパワートレイン開発部主管の片倉丈嗣さん(右)と同オーテック事業所カスタマイズデザイン部部長の森田充儀さん(左)

◆ベースのデザインコンセプトをよりピュアに表現

デザインのコンセプトについて同社オーテック事業所カスタマイズデザイン部部長の森田充儀さんによると、「オーラNISMOは“Agile Electric City Racer”で、このワード自体は変えていません。ただ量産車ではあまり無理ができないので、今回はタガを外してこのワードをより素直に、ピュアに表現できないかと考えていきました」という。

その上で、「全長が140mm伸びていますが、これは全て空力を良くするために使っています」。一方全幅は145mm広がった。これは当然トラクションを確保するためにトレッドを広げた結果だが、全面投影面積が増えるため空力的にはデメリットとなる。「できるだけドラッグを減らしたいので、フェンダーの最もエッジの効いたショルダー部分をできるだけ下に作るようにしました」と話す。通常ショルダー部は肩というだけあって高い位置にあり、そこを張り出させることでパワフルさなどを表現する。言い換えると人間が肩を怒らせると強く見えるのと同じと考えていい。

日産 AURA NISMO RS Concept(東京オートサロン2026)日産 AURA NISMO RS Concept(東京オートサロン2026)

NISMOとしては、「理論的に、理屈のあるデザインをしたい」。そこで幅を広げても全面投影面積をどうしたら減らせるかを考えた。結果として「できるだけ肩を下げて富士山型にしていく方がいいんですね。NISMOですから意味にある形の方が格好良いと思っていますし、それがキャラになるだろうと信じてデザインしました」。そうして出来上がったAURA NISMO RS Conceptは、「実際のマスボリュームとしての重心高を下げるだけではなく、ビジュアルスタビリティ、見た目のスタビリティがものすごく低く見えるようになりました。まさに低重心でロー&ワイドで安定していることが見てすぐわかるデザインになったのです」。

ただ、それを実現するのは簡単ではなかった。特にフロントフェンダーとフロントドアにかかるキャラクターラインの整合性だ。フロントドアはベースモデルと共通なのでなおさらである。

日産 AURA NISMO RS Concept(東京オートサロン2026)日産 AURA NISMO RS Concept(東京オートサロン2026)

森田さんも、「そこが一番の悩みどころでした」と認めたうえで、「フェンダーのショルダーエッジは基本的に前から後ろに向けて流しましたが、どうしてもドア上部にあるベルトラインとは繋がらず、ずらしています」という。そのままでは単に途切れたラインになってしまうことから、「クルマ全体が前に進む動きが出しにくくなり、本来の連続感が欲しくなりました」。そこで、フロントフェンダー上部後端に僅かにドアからのラインを入れたのだ。

「ドアのベルトラインをフェンダーに通すこともできるんですが、そうするとフェンダーの上の面が3つに分断されてしまい、すごく煩わしくて良くないんです。そこでシンプルにしようと2つにして、その真ん中にちょっとだけなんとなく前後をつなぐエレメントがあるという、絶妙なことをやりました」と説明した。

◆将来のNISMOカラーになるか

日産 AURA NISMO RS Concept(東京オートサロン2026)日産 AURA NISMO RS Concept(東京オートサロン2026)

「ダークマットNISMOステルスグレー」と呼ばれる専用ボディーカラーにもこだわりがあった。NISMOには「ステルスグレー」というコミュニケーションカラーがあり市場に浸透しつつある。そこでデザインとしては“次”を考えなければいけない。その可能性のひとつがこのマットカラーだという。森田さんは、「プロダクションモデルで再現できるかどうかは別として、マットカラーをぜひやってみたかったんです」と話す。

その理由は、「NISMOはカラーでも加飾を削いで研ぎ澄ますことをやって来ました。従来のステルスグレーはパールやメタリックさえも抜いています。ですから今度は艶も抜いてしまおうと」。さらに、「周りの映り込みで輝くのがグロスカラーです。しかし他の影響を受けない、常に自身の持っているソリッド感が表に出るという意味では艶消しは絶対に強い。そこで表現したいのは、“他の影響を受けないんだよ私は”、というメッセージで、NISMOのデザインのあり方だけでなく、NISMOそのもののあり方にも被せているんです。そういう進化をしていったらどうかという提案がこのカラーです」と語る。

このマットカラーにも、「ブルー味は残していますので、NISMOステルスグレーが進化したもの、そのラインにある色として開発しました」と語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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