マイクラで車両開発? クラウドとシミュレーションがもたらす車両開発DX…Ansys INNOVATION CONFERENCE 2020

Ansys INNOVATION CONFERENCE 2020
Ansys INNOVATION CONFERENCE 2020全 4 枚

CASE、モビリティ革命、さらに自動車業界にも及ぶDX(デジタルトランスフォーメーション)の波は、車両開発において、今以上の効率化、時短、コストダウンを強いる圧力にもなっている。開発のスピードアップや効率化で注目されるのはシミュレーション技術だ。

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シミュレーション技術の最新動向について、アンシス・ジャパン 専務執行役員 芳村貴正氏による「Ansys INNOVATION CONFERENCE 2020」でのセッション内容を元にまとめてみたい。

現在の車両開発に不可欠なシミュレーション技術

これまでシミュレーション技術というと、主にモデル開発という視点で語られることが多かった。部品形状や構造解析。材質の最適化。素材の物性や分子構造の試行錯誤。空力や熱マネジメント。光学系の反射解析。電子機器のノイズ特性など部材やコンポーネントごとの設計への適用だ。

単体シミュレーションだけでも、試作品の試行錯誤を減らし、開発期間の短縮とプロトタイプコストの削減に貢献していた。バーチャル空間ではパラメータを変えることでさまざまな条件、形状を短時間で試すことができる。新素材の合金やポリマーの発見では、考え得る物質の組み合わせもシミュレーションでの試行により最適なものを見つけることが可能だ。ADASや自動運転では、シミュレーション技術がなければ、事故回避機能のテストはダミーを使った限定的なシチュエーションでのチューニングしかできない。

部品・コンポーネント・制御システムなど車両設計全般にわたり、シミュレーション技術は欠かせない存在となっている。加えて、車両のコネクテッド化と自動運転化、ADAS機能の強化が進むと、設計段階から、各コンポーネントの連携やデータ共有が不可欠となってくる。

時代はマルチドメインシミュレーションへ

コネクテッド化が進み、ソフトウェアが車両の機能や付加価値に大きく影響する時代になれば、各部ごとに最適化したコンポーネント(ハードウェア)を組み合わせて完成車両にするアプローチは通用しなくなる。OTAにより機能(ソフトウェア)がバージョンアップされる前提で仕様を設計する必要があるからだ。

例えば自動運転機能の開発で、車両の物理特性だけのシミュレーションでは、実装したときの統合的な制御がどうなるかはわからない。実際のECUによる制御や動き、センサーの反応による動き、キャビン空間を含むHMIと連携した開発が現場では求められている。

EV開発では、構造から熱マネジメント、EMC/EMIも考えた開発が重要になってくる。とくにノイズ対策は、単体で出ていた性能が、筐体やボディに組み込むことで変化することがある(芳村氏)。ユニットが完成していると導電性フェルトを貼るような対策を余儀なくされコストアップの要因にもなる。

また、緊急ブレーキ、レーンキープ、自動追い越し、自動駐車といった機能の設計は、ドライバーへの情報伝達やドライバーからの指示を正しくやり取りできるコックピットの設計と別々に行うことはできない。

わかりやすく言えば、車両の設計開発は、構造や流体など個別シミュレーションによるモデル開発から、車両全体の事象を可能な限り再現するモデルによる開発にシフトしていく。車両全体を再現するには、構造・流体・電磁界・高額、システム、組込みECU、材料データベースなど、既存シミュレーション技術を包括的に扱うマルチドメインシミュレーションが一つの要件となる。

設計空間をクラウド上に実現

個別シミュレーション技術が共通基盤上に統合されれば、シミュレーションによるバーチャル開発に加え、プロトタイプ評価、システム評価もバーチャル評価が可能になる。マルチドメインシミュレーションの共通基盤を実現する上で、忘れてはならないのは、蓄積される各種シミュレーションデータの管理と連携だ。

アンシスでは、この共通基盤を利用した新しいプランがあるという。クラウド上に自動運転のテストをするための仮想的なコースを構築し、各国のOEMやサプライヤーがそこで車両開発を行う。コースだけでなく、開発に必要なCPUやGPUリソースもスケーラブルに展開可能とするものだそうだ。

バーチャルな世界でモノを作るというと、「Minecraft(マイクラ)」をイメージするかもしれない。すでに、大陸並みの面積を持つオンラインゲームのマップは存在するし、Minecraftの仮想空間はすでに地球の表面積を超えている。製品開発でプロトタイプの製造や最終的なリアル環境でのテストはなくならないが、シミュレーションの領域は確実に広がっている。設計の大部分がバーチャルで、ソフトウェアのように行われるようになっても不思議はない。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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