【インフィニティ QX60 モノグラフ】キーワードの“コマンディングプレゼンス”とは?[デザイナーインタビュー]

インフィニティグローバルデザイン担当シニア・デザイン・ダイレクターの中村泰介氏
インフィニティグローバルデザイン担当シニア・デザイン・ダイレクターの中村泰介氏全 18 枚

インフィニティは次期型『QX60』のデザインコンセプトモデル、『QX60モノグラフ』を公開した。2021年の発売が予定されているが、残念ながら日本では発売されない。

北京モーターショー2020と日産グローバル本社(神奈川県横浜市)において公開されたこのQX60モノグラフのデザインについて、一部報道陣向けにプレゼンテーションが行われた。

キーワードは“コマンディングプレゼンス”

インフィニティ QX60 モノグラフインフィニティ QX60 モノグラフ
「モノグラフとはディテールも含めたデザインスタディという意味」とはインフィニティグローバルデザイン担当シニア・デザイン・ダイレクターの中村泰介氏の弁。「2021年にQX60のプロダクションモデルを準備しており、事前にそのエクステリアデザインを紹介したもの。このモデル自体はそのままプロダクションモデルになるというわけではなく、非常に近いものと捉えてほしい」とこのモノグラフのポジションを説明。

そして、「現行のQX60は非常に好評で、インフィニティのブランドの中で大事なモデル。その現行車の良いところをキープしながら昇華。そのうえで、もっとクルマとしてのロバスト、強い感じにしようと、キーワードを“コマンディングプレゼンス”とした」という。

その結果、「よりSUVらしいタフな感じを持ちながら、インフィニティとしてのエレガントなスキンをまとったデザインになった」とのことだった。

バニシングポイントを「遠くにとる」

インフィニティ QX60 モノグラフインフィニティ QX60 モノグラフ
QX60モノグラフは、「フロント、サイド、リアとも非常に整理されたグラフィックを持っている」と中村氏。「インフィニティが以前から用いている特徴的なダブルアーチモチーフのフロントグリルと、デジタルピアノキーシグネチャー(ヘッドランプ上の部分)など、ハイテクと融合させたフロントデザインだ」。

そしてそのデジタルキーシグネチャーが「自然に強いホリゾンタルなショルダーラインに流れている」と述べ、同じくデジタルピアノキーシグネチャーを使ったリアコンビランプに繋がっていることを示唆。そのリアコンビランプも左右を繋げ、「クルマを一周回るように非常に長い線、長い動きでクルマを大胆に見せるという手法をとっている」とこのショルダーラインが、大きなポイントであることを説明した。

また全体は、「クルマとしてベースを強く表現することで、グッドスタンスとした。さらにタイヤの大きさや、ボディの厚みによるしっかりとした表現とともに、キャビンのルーミーさがエクステリアからもわかるように、なるべく水平に広がったグラフィックを採用。同時に、Dピラーの一部を窓にすることで、なるべく長いウインドウグラフィックを作っている」と説明。その結果、「すごくルーミーで強いSUVだがエレガントさも表現している」と中村氏。

インフィニティ QX60 モノグラフインフィニティ QX60 モノグラフ
ルーフラインも、「後ろに向かって少しスロープしているが、現行のQX60の良い部分である室内の広さは新型でも十分に確保しながら、(ルーフの)大きな動きを作ることで、よりダイナミックさを表現。ルーフラインと、ボディーとキャビンの境目となるベルトラインを後方に伸ばしていった先の交差する点(バニシングポイント)をすごく遠くにとったので、遠くから見るとクルマ全体がスリークに見える」。

その結果、「室内が広くて大きなクルマなのだが、エレガントさとダイナミックに見えるのがサイドビューの特徴だ」と話す。

今回のコンセプトモデルに塗られたプラチナムグロウというカラーは、「リキッドメタルで、外の景色やリフレクションをよく拾うもの。ボディー断面や、スカルプチャーを非常に強く見せる効果を持っている」という。下を向いている断面は床部分の色を、上を向いている部分は上の光をよく拾い、かつ、「光を受けると僅かに入っているゴールドのフレークが微妙に面の色を変え、すごくリッチな感じに見える」とカラーにも特徴を持たせていることを語った。

ユニークなクルマを作って来たインフィニティ

インフィニティ各種。真ん中が2代目『FX』インフィニティ各種。真ん中が2代目『FX』
インフィニティ全体のデザインについて中村氏は、「これまで割とユニークなクルマを作って来た」と振り返る。インフィニティの初代となる『Q45』は日本でも販売したもので、「ものすごくシンプルで新しいラグジュアリーの価値にチャレンジしようと、“ジャパンオリジナル”というコンセプトでデザインした」と述べ、「欧州の高級車と比べると、クルマとしてのデザインのアピールの仕方が違っている。とてもシンプルで飾りもあまりなく、ラジエーターグリルもないという特徴的なクルマだが、それがエアロダイナミクスに効くなど、高いパフォーマンスを持つクルマだった」と紹介。

また、インフィニティ『FX』の2代目は、「日本のシンプルなミニマリズムがQ45だとすると、FXはそれをもっと強くアピールしたもの」と中村氏。カテゴリー的にもFXは、「SUVとクーペのクロスオーバーという、これまでなかったカテゴリーを作った」。

そのデザインも、「シンプルな中にものすごく強い表現が出来ている。ボディは割とプレーンな面が多く、タイヤの大きさとフェンダーの強さだけで表現。ストレートでホリゾンタルなショルダーとベルトラインにより、少ない要素の中で強さやエレガンスさを表している」と解説。これは、「インフィニティの財産だと思っており、このようにいままでやってきたことを見ながら、時代がどんどんモダンになっていく中で、いまのインフィニティから新しい時代に少しずつトランディションしていく。その過程にあるのがこのQX60モノグラフだ」と述べた。

今の時代に求められているデザイン

インフィニティ QX60 モノグラフインフィニティ QX60 モノグラフ
実はこういった流れは2018年頃から見られたものだ。「いくつかのショーカーを発表しており、クルマのタイプなどは全然違うが、よく見るとボディサイドのショルダーのテーマは『Qインスピレーション』、『QXインスピレーション』、『Qsインスピレーション』の全て共通の考え方でデザインしている」という。

それぞれ、「フロント、リアフェンダーの作り方が異なっているので同じに見えないかもしれないが、水平な折れのラインからフロントもしくはリア(はQXインスピレーションのみ)に向かって、その折れを挟む上下の面が円錐(コーン)状に広がっていくショルダー形状となっている」。これは「インフィニティらしいエモーショナルな部分をよりモダンでクリーン、ピュアに表現していくという新しい世代の表現」と説明。

これまでインフィニティのデザインは、「色々なスカルプチャーを入れることで、光を受ける面や影の面、Sセクションと呼ばれる面(ボディーの断面がS字状になっている)など、ある意味濃い味の表現をして、いまのラインナップを作ってきた」。

しかし、「そこから一歩抜けて日本のシンプルで強い塊感を表現出来ないかを、過去のクルマを見てしみじみ思っていた。そこで過去にやってきた良いことと、今時代として求められているシンプルでシームレス、ハイテクな感じを入れた結果、QX60モノグラフのデザインになった」と思いを語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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