【ホンダF1】来季で参戦終了、八郷社長「“環境”もホンダのDNA。育った人材を振り向けたい」…最後に30年ぶり母国優勝なるか

今季F1第5戦70周年記念GPで優勝したM.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。
今季F1第5戦70周年記念GPで優勝したM.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。全 7 枚

2日、ホンダは緊急オンライン会見を実施し、F1参戦を来季2021年限りで終了すると発表した。八郷社長が語った理由、その骨子をまとめると「“環境”もホンダのDNA。F1で育った人材を振り向けたい」というところに集約されるが、やはり寂しい決定であることは否定できない。

ホンダのF1参戦は現在の活動が“第4期”にあたる。今回の活動はパワーユニット(PU)供給というかたちで、2015年シーズンに実戦参戦がスタート。当初はかつて第2期に栄光をともにした名門マクラーレンと組んだが、良い結果が出ず、同チームとの提携は17年限りで終わりを告げることに。

翌18年、当時のトロロッソ(20年よりアルファタウリに改称)にPU供給を開始。八郷隆弘社長は当時を振り返り、「我々が苦しいときに手を携えてくれたのがトロロッソでした」と深い感謝の意を示した上で、第4期ここまででいちばん嬉しかったことに、「トロロッソ~アルファタウリとの参戦50戦目という節目だった今年(20年)のイタリアGPで、アルファタウリ・ホンダとして初優勝できたこと」を挙げている。

19年には当代トップチームの一角であるレッドブルにもPU供給、2チーム体制となった(レッドブルはトロロッソ~アルファタウリの系列上位チームにあたる)。そして同年はレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンが3勝し、ホンダは第3期(00~08年)の06年以来となるF1勝利を記録。今季20年もレッドブル、アルファタウリと共闘中で、第10戦までに各陣が1勝ずつをマークしている(レッドブルのフェルスタッペン、アルファタウリのピエール・ガスリーが各1勝)。ホンダのエンジン/PUとしての通算勝利数は現時点で77、これは歴代5位とされる数字だ。

ホンダPUのレッドブルとアルファタウリへの供給は、昨年末(19年末)の時点で、当時は20年までだった契約が21年まで更新されていた。言いかえれば22年以降についてはもともと“未定”だったわけだが、八郷社長は「21年の参戦を決めた段階から(将来的なことは)議論していました」との旨を今回語っており、コロナ禍については「短期的な収益ということよりも(他に重要な理由があった)」と、直接的な影響は否定している。

ホンダがF1参戦を終了するのは、次のような重要な理由からだ。

「優勝という目標を達成し、一定の成果を得ることができました。その力を、これからはパワーユニットとエネルギーのカーボンフリー化、『カーボンニュートラル実現』という新しいフィールドでの革新に注ぎます。F1同様にたいへん難しいチャレンジであり、今回の発表は新たな挑戦に向けた決意表明でもあります」(八郷社長)

2050年にカーボンニュートラルを実現することを大目標に、通過点として「2030年には四輪車販売の3分の2を“電動化”したい」とのターゲットも掲げるホンダ、八郷社長は「レースはホンダのDNAですが、環境対応もホンダのDNA」とし、「F1で若い技術者が育っている。技術の進歩、人材育成という意味でもF1参戦は一定の成果を出しました。これからはホンダのリソースを、特に人材という面で“環境”に注いでいきたい」との意を話した。

確かにホンダの歴史を振り返ってみると、F1を筆頭にしたモータースポーツという華やかに映る面でのDNAもあれば、かつてのCVCCなど、環境という派手ではない部分でのDNAもあった。八郷社長が語った内容には「なるほど、さすがホンダ」と思えるところが大きい。

レッドブルにはこの8月に21年限りでの参戦終了の意向を伝え、9月末に最終決定したという。会見では八郷社長が「再参戦は考えていません」とも語った。一部ではこれを重大視する向きもあるようだが、なにもホンダが未来永劫、絶対にF1に参戦しないという意味ではないだろう。「現段階で近い将来の再参戦は考えていません」と意訳すべき言葉だと考える。

とはいえ、ホンダがF1活動から退くという判断は、いつの時代もやはり大きい。日本のモータースポーツ文化はホンダF1を中心にまわっている側面が大きく、その中核が失われることは波及的影響も小さくないと懸念されるからだ。

また、最近は日本人ドライバーのF1実戦参戦が絶えて久しく、そのなかでホンダ育成の角田裕毅が今季のF2で結果を出し、速さも示すという状況がついに生まれてきてもいただけに、今回の決定は、環境への取り組みの意義を理解したうえでも残念至極だ(もちろん、これで角田の将来の可能性が狭まったわけではない。彼はレッドブルの育成選手でもあり、完全自力で道を開ける可能性も充分にもつ)。

偶然かもしれないが、ホンダのF1活動終了には大きな社会問題の発生と連動しているところがある。第1期は公害問題、第2期はバブル崩壊、第3期はリーマンショック、そして今回が(あくまで推測だが)コロナ禍。仕方のない面はあるのだが……。

残りの参戦期間に向け、八郷社長は「今季残り7戦と2021年シーズンに向けては、レッドブル、アルファタウリとともにさらなる勝利を目指し、最後まで全力で戦い抜きます」との決意を語っている。また、第4期の最近の成績向上には、ホンダジェットなどを含む“オールホンダ”の力を結集した取り組みの成果が大きかったことを強調していたのも印象的だった。

今年はコロナ禍でF1日本GPの開催がない。本来なら、来週が日本GPのレースウイークだった。コロナ禍の行く末が見えないなか、来季の開催があるかどうかについても確定的な物言いはできないが、願わくは来秋には“いつも通り”に鈴鹿サーキットでF1日本GPが開催され、そこでホンダ勢が多くのファンの前で1991年以来30年ぶりとなる母国優勝を達成してくれることを祈りたい。

《遠藤俊幸》

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