コロナで変わる社会・ビジネス3つのモビリティ空間を考えよ…日本総合研究所 創発戦略センター 程塚正史氏[インタビュー]

コロナで変わる社会・ビジネス3つのモビリティ空間を考えよ…日本総合研究所 創発戦略センター 程塚正史氏[インタビュー]
コロナで変わる社会・ビジネス3つのモビリティ空間を考えよ…日本総合研究所 創発戦略センター 程塚正史氏[インタビュー]全 1 枚

先が見えない新型コロナウイルスによるパンデミック。仮にワクチンが開発され、会話や接触に気を使う必要がなくなっても、おそらく元の社会や生活と同じに戻ることはないだろう。企業に必要なのは、単にコロナ終息を待つだけではない。ウィズコロナの現在と、アフターコロナの将来にどう対応するかが問われている。

自動車やモビリティサービス産業という視点では、コロナ禍で注目される3つの空間があり、それによる新しい市場が想定されるという。そう主張するのは株式会社日本総合研究所 創発開発センターのシニアマネジャー程塚正史氏だ。程塚氏は10月30日開催のオンラインセミナー「コロナ禍が拓く3つの自動車空間の新市場~自動車・モビリティサービス編~」 に登壇し詳説する予定だ。どんな内容なのか事前インタビューを行った。

パンデミックによるモビリティ環境の変化

---:新型コロナウイルスの影響は、さまざまな業界・業種に影響を及ぼしていますが、自動車業界・モビリティ業界の現状はどうとらえているのでしょうか。

新型コロナウイルスの影響は、社会的な面と技術的な面に分けることができます。直接的には社会的な影響が大きく、まずは人々の意識や考え方の変化がすでに起きつつあります。個人の意識は知らず知らずのうちに変わっています。例えば、見知らぬ人との接触はリスクであるという考え方が一般化しつつあり、ソーシャルディスタンスという概念はコロナ収束後も何らかの形で残るかもしれません。人々の暮らしや移動のあり方に影響を及ぼす可能性もあります。少なくともコロナ禍が収束していない現状では、電車やバスといった人々が密集する公共交通を避けてマイカー通勤に切り替えたりする動きがあります。個室空間としての車は改めて価値を認められつつあります。

社会的な影響でもう一つ重要なこととして、都市のあり方の見直しが進むでしょう。といっても有識者や政治家が旗を振るというよりは、オフィス需要や住宅需要といったニーズの変化によって徐々に変化が進むと考えたほうが現実に近いかもしれません。リモートワークやオンライン会議といった習慣は一定程度残り、都心に向けて毎日電車通勤という、従来の大都市周辺の都市のあり方は変化するでしょう。地方の都市や、都市ではない地域への分散も進むと思われます。環境の良い自宅で仕事をしたり、巣ごもり消費をしたりという暮らしの変化は、住宅に対するニーズを変えるとともに、ラストマイル範囲での地域の移動ニーズを変えると考えられます。

ニューノーマルが生むコロナテック

---:パンデミックが終息しても、リモート会議やパブリックスペースでの消毒や振る舞いなど影響が残りそうですね。では、技術的な変化はどうでしょうか。

はい。大きなトレンドとしては、社会的な影響という面もありますが「デジタル化」があります。日本では給付金支給の煩雑さに象徴されるように、海外と比べての遅れをいかに取り戻すかという文脈で語られています。もちろん日本社会の様々な面に存在している意味のない手続きを簡略化するという動きも大事ですが、これからは、公共的なデータを有効活用して新たなサービスにつなげるという動きが強まってくるでしょう。もちろん、自動車やモビリティサービスにも影響を与えるはずです。

デジタル化に、「コロナテック」と言われる動きが加わります。私なりにまとめると、遠隔操作を可能にする通信技術、センサーなどのヒューマン・マシン・インターフェイス(HMI)、モバイルアプリをはじめとするソフトウェアという面があるでしょう。手術を含む遠隔医療や大規模なオンラインイベントでは大容量の映像を遅滞なく通信する環境やデバイスが注目されています。特に東アジアで有効性が確認されつつある、コロナ接触者の検知や統計処理をするソフトウェアの応用も広がっています。センサーによるバイタルサインの検知は高度に発展しそうで、カメラで群衆を捉えて同時に検温・追跡するような取組みも行われています。ドローンやロボットによる無人での宅配、店舗やレストランでの無人サービスも実用化が加速します。

コロナとCASE/MaaSの関係

---:自動車に関しては、CASEやMaaSといったくくりで語られていたものが、コロナテックと融合するということでしょうか。

CASEやMaaSといったトレンドは、社会や技術の多様で膨大な変化を、ある一定の切り口で切り取ったものだと考えています。インターネット経由でのサービスを利用する習慣、環境意識の高まり、所有から利用への動きといった社会的な変化や、クラウド技術、センシングやエッジ処理技術、電池関連技術といった技術的な変化を、ある一定の見方で切り取ったものです。

もちろんそのように切り取ることにも意味はあって、関係者の意識を集中させることができますし、新たなラベルを貼ることで変化を加速させることもできます。その切り口を見出したり注目したりした方は慧眼だったのだと思います。一方で、何らかの切り口が5年も10年も意味を持ち続けるほど現在はのんびりしていないとも感じています。特にコロナ禍による変化は大きいでしょう。

今後重要になる要素技術は、通信、センサーを含むHMI、ソフトウェアという点で、コロナテックと共通しているように思います。また、人々の意識や都市のあり方の変化、社会全体のデジタル化の動きも、今後重要になる切り口に大きな影響を与えるでしょう。

ここでは、3つの空間に注目してみたいと考えています。一つめは自動車の車内空間、二つめはラストマイル程度の範囲での地域空間、三つめは都市における道路空間です。

3つの空間での大きな潮流

---:3つの空間とはどのようなもので、どのような変化になるでしょうか。

まず車内空間は、個室として見直される動きが進むでしょう。その際、その空間で何ができるのかが重視されます。もしかしたら移動中だけでなく、ガレージの中での利用も含めて考えることが必要かもしれません。すでに従来の動きとして、インフォテインメント関連の技術やサービスの進化があります。このようなソフトウェアの多様化が進むでしょうし、それを支える車内のコンポーネントも高度化が促されるでしょう。五感を刺激するHMIが重要になるはずです。

地域空間は、ラストマイルモビリティのあり方が大きく変わるでしょう。店舗事業は困難な時代になり、宅配ニーズが必ず増えるでしょう。日本ではそもそもまだ発展途上ですが、世界的にもECはさらに伸びます。公共交通を使って遠くに遊びに行くのではなく、地域を家族で探検するという動きも出てくるかもしれません。そうすると、特に米国などがそうですが、大型車両がどの程度必要なのかという議論も出てきます。地域内のフリート車両を群制御する動きも加速すると思われます。ラストマイルでのハード面やソフト面の変化が想定されます。

道路空間では、デジタル化が次第に強まってくる可能性が高そうです。より焦点を絞れば、スマートシティにおける自動運転の仕組みが具体化するという言い方もできそうです。信号データや交通流データなどを掛け合わせて、最適な道路運用が図られます。もちろん従来からある試みですが、デジタル化が進むことで社会実装が加速すると思われます。

程塚氏が登壇するオンラインセミナーコロナ禍が拓く3つの自動車空間の新市場~自動車・モビリティサービス編~10月30日開催。

《中尾真二》

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