「手軽で奥深い」フルサスeバイク…ヤマハの最高峰『YPJ-MT Pro』に二輪ライターが乗ったら世界が変わった

ヤマハ YPJ-MT Pro に試乗する青木タカオ氏
ヤマハ YPJ-MT Pro に試乗する青木タカオ氏全 32 枚

前後サスペンションが衝撃を吸収し、電動アシスト機能によって上り坂もスイスイ、マウンテンコースをアグレッシブに駆け抜けられる。ヤマハのスポーツ電動アシスト自転車の最高峰モデル『YPJ-MT Pro』(税込み66万円)だ。

エンジン搭載のバイクで走るモトクロスよりかなり手軽で、自転車に乗れれば誰でもすぐに楽しめる。それでいて、ライディングには奥深さがあり、追求したらキリがない。バイクジャーナリストの自分(青木タカオ)からすれば新感覚で、病みつきになりそうな面白味がある。

ヤマハ発動機SPV事業部事業企画部の鈴木真理さんによると「オフロードバイクでの走行経験やスキルがある人がターゲットです」とのことで、筆者にはグサッと直球で突き刺さってしまう(感銘を受けた)。

自転車がオートバイ競技のトレーニングに役立つことは知っていたが、ホビーとして楽しむとき、自転車だとペダルを漕ぐのが正直なところしんどい。もちろん、ロードスポーツやモトクロス、トライアルなどエンジンを搭載したバイクでおこなうモータースポーツも、突き詰めればフィジカルがとても重要でハードだが、ファンライドするならとりあえずアクセルを開ければオートバイなら前に進む。

その点、自転車はなにはともあれペダルを漕がない限り前進できないから、自分のようにフィジカルトレーニングなど一切を怠っているライダーからすれば、とても手強い。しかし、電動アシスト付きとなれば話が違う。上って下るマウンテンコースを余裕を持って周回できるではないか。神奈川県横浜市の「トレイルアドベンチャー」で開かれた報道向け試乗会で、その楽しさを味わってしまった!!

バイクメーカだからこそできるデザインと走り

ヤマハ YPJ-MT Proヤマハ YPJ-MT Pro
“楽するため”の電動アシストから、“楽しむため”のアシストへ飛躍した「YPJシリーズ」は2013年に『YPJ-01』が登場し、年を追うごとに進化してきた。19年の東京モーターショーには「YPJ-YZ」を参考出品。モトクロッサー「YZ」のテクノロジーは、バイラテラルビーム・フレームにシルエットが似たアルミ製ツインチューブフレームにも感じることができ、ブルーのカラーリングもヤマハレーシングイメージとのリレーションを意識している。

トップチューブとダウンチューブが二股に分かれて、トップチューブにはリヤサスペンション、ダウンチューブにはバッテリーが挟み込まれ、車体の重量バランスと剛性を両立。トップチューブとダウンチューブ、それぞれ2本ずつで構成されるツインチューブフレームは、モーターサイクル譲りの技術とデザインが注ぎ込まれ、ハードな路面でも優れた走行安定性と旋回性能を発揮する。

ヤマハ YPJ-MT Proヤマハ YPJ-MT Pro
デザインを担当した北山亮平さん(ヤマハ発動機クリエイティブ本部プロダクトデザイン部)は「モーターサイクルメーカーのヤマハだからできるデザイン」と胸を張る。閉断面のチューブでバッテリーを挟み込み、「隠さず見せることで、軽快感のあるスタイリングを実現しています。やはりヤマハですから、重厚感より軽快であることが大切です」と言う。

青×黒×シルバーに塗り分けられた車体からは、YZのレーシングイメージを想起させる。車体サイズが3つ設定され、車両重量はL=24.2kg、M=24.1kg、S=23.8kgと軽い。

ヤマハ YPJ-MT Proヤマハ YPJ-MT Pro
フロント160mm、リヤ150mmとストローク量が長く路面追従性に優れるROCKSHOX製フル(前後)サスペンションが足まわりにセットされ、飛んだり跳ねたりも問題なし。前後ブレーキも油圧ディスク式と、オートバイにも負けない装備を誇っている。

コーナーにはバンクもつくられ、いかに速度を落とさず旋回するか、周回するたびにペースを上げることに夢中となっていく。このスポーツ、ハマったら抜け出せないのは明らかだ。

オートマチックアシストモードで効率よく進む

ヤマハ YPJ-MT Proのモーターユニットヤマハ YPJ-MT Proのモーターユニット
電動ドライブユニット『PW-X2』は自社製で、ヨーロッパで数多くのe-Bikeに採用される実績がすでにある。アシストモードは弱から強まで5段階あり、最初のうちは最強の「EXPW(エクストラパワーモード)」で走っていたが、濡れてスリッピーな路面でタイヤが空転するロスに気づき、「HIGH(ハイモード)」や「STD(スタンダードモード)」も試す。

さらに11-46Tのワイドレシオ設定となる外装11速ギヤもあり、シフトチェンジも巧みにこなしたい。そこで威力を発揮したのが「オートマチックサポートモード」で、走行状況に応じてライダーの要求にシンクロするアシストを HIGH / STD / ECO の3モードから自動選択し、最適なアシストを提供してくれる。

ヤマハ YPJ-MT Proヤマハ YPJ-MT Pro
ヤマハ発動機SPV事業部開発部の渡邉岳さんによれば、「傾斜角センサーを搭載し、スピード、クランク回転、ペダリングトルク、角度の4つのセンサーからなる“クワッドセンサーシステム”が走行状況を把握。コンピュータが瞬時に演算し、乗り手が欲しいアシストパワーで、走りを後押ししてくれる」という。実際、トラクションが良好となり、グイグイ進むから驚く。

1回の充電で可能な走行距離は、最長の「+ECOモード」で197km、最短の「EXPW」で73km。13.1Ahリチウムイオンバッテリーが満充電に要するのは約3.5時間(家庭用100Vコンセント)となる。

液晶マルチファンクションディスプレイには、速度、走行アシストモード(ランプの色でも瞬時に視認できる)、ケイデンス、ペダリングパワー、消費カロリーなどさまざまな情報を見やすく表示。マイクロUSBポートも搭載し、スマートフォンなどへの給電もできる。

フラッグシップに相応しい販売体制を構築し、購入後も支援

ヤマハ YPJ-MT Pro に試乗する青木タカオ氏ヤマハ YPJ-MT Pro に試乗する青木タカオ氏
スポーツ電動アシスト自転車(e-BIKE)の市場は拡大する一方で、国内市場でもMTBリターンライダー、モーターサイクルファン、オフロードバイクファンらで活発化する見込み。ヤマハではYPJシリーズ最上位販売チャンネルとして「YPJ Pro Shop認定店」を全国65点設置(10月9日現在)し、高い技術力やアフターサービス、的確なアドバイス、e-BIKEライフの提案・支援していく。

また、レース会場のヤマハブースで展示会や試乗会を実施し、バイクファンへ認知拡大、興味喚起を促す。機会があれば、ぜひ体感していただきたい。自転車ならではの爽快感がありつつ、バイクとはまた違った魅力にあふれ、筆者のように走りに夢中になること間違いなしだろう。

ヤマハ YPJ-MT Proと二輪ライターの青木タカオ氏ヤマハ YPJ-MT Proと二輪ライターの青木タカオ氏

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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