“宇宙の総合商社”がつかむ軌道衛星ビジネスのトレンド---Space BD 永崎将利代表に聞く

Space BD 永崎将利代表
Space BD 永崎将利代表全 4 枚

いま宇宙ビジネスはどこを飛び、どこへむかっているか。そんな問いのヒントをくれたのが、Space BD永崎将利 代表取締役社長。2017年9月に東京で立ち上げた“宇宙の総合商社”の代表が語る宇宙事業のトレンドとは。

東京・日本橋に拠点をおく Space BDは、2017年9月、宇宙ベンチャーとして設立。2018年に宇宙航空研究開発機構(JAXA)初の事業化案件を受託、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟から超小型衛星を放出するステージで、初の民間事業者に選ばれた。

ミッションは、「宇宙の産業化にむけたあらゆる課題にワンストップで対応可能なプラットフォームとなり、技術開発を必要とする事業者の負担を軽減することなどで、産業発展に貢献すること」。

宇宙へのアクセスのハードルを下げるサービスを提供しながら、宇宙の産業化に挑むときに出てくるさまざまな課題に商業的アプローチで解決策を提案し、ISSを核とする地球低軌道の商業化を加速させていくという。

そんな Space BDの永崎代表の解説で印象的だったのは、「居住空間」「月から火星へ」だった。

「居住空間ISSのある地球低軌道から、月に行き、火星に行くという宇宙開発の道筋に要るのも通信手段。イーロン・マスクたちが宇宙でいう『通信』というのは、地上と地球低軌道間のみならず、広い意味ではこの『月から火星へ』を見すえて重視してるんじゃないか」

「イーロン・マスクらは最初にロケットを保有した。地球低軌道に15トン以上のものを運べた。Starlink 構想のプロジェクトは、このロケットの空きスペースを利用することで、ほぼ輸送費はただ(ゼロ)に近い。これは強い」

「いっぽうで、ソフトバンク系だったワンウェブ(OneWeb)が一度破綻してしまったのは、衛星屋さんで打上げ手段を持たなかったことも影響しているかもしれない」

「通信衛星、IoT衛星、エンタメ、測位などいろいろ用途があるけど、いまのところビジネスとして成立しているものは少ない。実証機は飛んでるけど、商用には至ってない。いまいろいろな顧客とニーズに向きあってると、ひとつ注目したい想いがある」(永崎代表)

地球を自撮りする…B to C寄りにビジネスチャンス

超小型人工衛星を用いた新たな宇宙の利活用をすすめるASTROFLASHそう矢継ぎ早に語ってくれた永崎代表は、笑いながらこんなヒントをくれた。「ひとつは副業とか趣味といった枠の世界」と。

「たとえば宇宙に夢中になっている人たちが集まって、超小型衛星にカメラを積んで、地球上から自分たちの好きなタイミングで『地球を自撮りする』。それを楽しむことだけが目的」

「それから、衛星に光源を搭載して、地上から衛星が目視できるだけじゃなくて、光源を地上から変えることで、いろいろな人に空をステージにした衛星軌道ペインティングをみてもらうとか。そうした B to C 寄りのビジネスチャンスに注目している」

こうした発想の裏には、世界の宇宙産業ビジネス全体がテクノロジー系の理屈で固められてるなどで、「ばかげた発想やアイデアが言いづらい雰囲気にある」という。

「宇宙の総合商社と自称するように、JAXAと『宇宙をまったく知らない顧客』を結ぶ案内人の存在にちかい。提出する書類も莫大な量で、顧客は自分たちの想いをJAXAに伝える前に断念してしまう」

「もうひとつ、ISSのなかの JAXA が保有しているアダプターとなる船外実験装置『i-SEEP』の独占権を得ていることから、実証段階から商用化へ、ぐんと加速できる」(永崎代表)

最後に、宇宙商社 Space BDが描くもうひとつの宇宙ビジネスについて「教育」と語る永崎代表。

「宇宙飛行士の能力定義・心構えを活用した教育プログラムの企画・開発・運営を行っている。これも宇宙を活用したビジネス。その他にも宇宙ビジネスに参画するチャンスの裾野をさらにと広げて、『宇宙村』をもっともっと大きくしていきたい」

「プレイヤーが増えれば打席が増える、ヒットが増える。そうすると『わたしも宇宙ビジネスをやってみたい』という人が増える。そのサイクルをまわしたい。いまなら3000万円ぐらいから宇宙ビジネス実証へと踏み出せる」

「あと5年で宇宙ビジネスの商用化を軌道に乗せたい」という永崎代表は、早稲田大学教育学部卒業後、三井物産入社。ブラジルとオーストラリアで4年間海外勤務を経験。近著は『小さな宇宙ベンチャーが起こしたキセキ』(アスコム刊、2020年10月初版)。

《レスポンス編集部》

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