有人飛行試験に成功したSkyDrive『SD-03』公開、触って座って確かめた…フライングカーテクノロジー展

6日まで開催されている「フライングカーテクノロジー展」に出展されたSkyDriveの「SD-03」。機体は展示専用
6日まで開催されている「フライングカーテクノロジー展」に出展されたSkyDriveの「SD-03」。機体は展示専用全 11 枚

地上から空へ。そんな夢を乗せて今年8月下旬、有人飛行による飛行試験を成功させた「SkyDrive」(愛知県豊田市)の“空飛ぶクルマ”「SD-03」が、東京ビッグサイト南棟4Fで開催されている「フライングカーテクノロジー」展で一般公開されている。会期は11月6日まで。

2人乗りで100km/h、20~30分の航続時間を目指す

SkyDriveは2012年に発足した有志団体「CARTIVATOR」をベースとするスタートアップで、2018年7月に設立された。今回の飛行試験は、2020年までに「空飛ぶクルマ」のデモフライトを実現させるというCARTIVARTORの夢を引き継いだもの。その機体は電動で垂直離発着を可能とするeVTOLの形態を採る1人乗り。同社は次のステップとして2人乗り飛行を目指し、100km/h、20~30分の航続時間を想定する。

操縦はパイロットが行うものの、コンピュータ制御によって飛行を常に安定させるアシストが入るため、誰でも簡単に操縦できることを前提とする。先日、インタビューした同社の・最高技術責任者である岸信夫氏によれば「まずはアトラクション的な乗り物としてスタートし、そこから技術的な積み上げを図っていくことが現実的な展開となりそうだ」という。その理由はバッテリーの問題が大きい。

「(SD-03に搭載したバッテリーでは)現状ではせいぜい5~10分程度しか飛ぶことができない。安全に飛行するためにバッテリーはクルマ以上に重要だが、23年の時点でもバッテリー事情が飛躍的に進化するとは思えず、さらに2人乗りにすれば当然、機体は重くなる」(岸氏)からだ。つまり、こうした状況下を踏まえると、当面は短時間のアトラクションなどを通して実績を積み上げることが重要というわけだ。

とはいえ、空を飛ぶことをより身近にしてくれる空飛ぶクルマへの夢は膨らむ。SkyDriveが想定する空飛ぶクルマは、現在の乗用車の2台分ほどの車幅を想定し、この中には四隅に8つのプロペラを備えた二人乗りの車体が収まる。この日披露されたビデオ映像では、空飛ぶクルマが実用化されたときの未来が描かれていた。その映像では空飛ぶクルマが目的地に向かってコンビニの脇に用意された“FLYING AREA”から飛び立つ様子が描かれていた。ここに渋滞で時間に遅れる想定はない。

乗用車ライクな造り込みは仕上がりの良さを伝えてくる

では、一般公開された機体はどうなっているのか。実際に乗り込んでその感触を味わってきた。乗り込む際は座席を囲む部分を前方に開き、跨ぐようにしてシートに座る。前方には目的地を入力するためのディスプレイが一つあるだけ。自動運転で誰でも乗れることを前提にしているため、乗員が操縦することはない。余裕のあるシートはホールド感も良好で足元も広々としており、これならラクに座っていられそうだ。

驚いたのが内装の仕上がりの良さ。極めて乗用車ライクに造られており、ファブリックの素材感も上質さを伝えてくる。しかも外観も一目見て格好良さを感じさせた。聞けば、これらは海外在住の日本人デザイナーに依頼してデザインしてもらったものだという。SkyDriveでは最終的に個人オーナーの所有を目指しており、事業用途だけを想定していたら、こうした造り込みはしなかったはずだ。この辺りがBtoBを目指す会社と発想が根本的に違うと感じた。

空飛ぶクルマは現在のヘリコプターよりも低いコストで飛ぶことができるため、都市部でのタクシーサービス利用にとどまらず、何よりも離島や山間部での救急搬送などでの活用に期待がかかる。SkyDriveによれば、空飛ぶクルマを目指すスタートアップは200~300社ほどあるが、現時点で有人飛行を成功させたのは10社ほどだという。SkyDriveでは今後、23年に有人運行サービスをスタートさせ、2025年の大阪万博で一定の認知を獲得し、2028年には誰もが空を飛べる時代を迎えたいロードマップを描く。空での移動が身近になって誰でも自由に飛べる日を楽しみに待ちたいと思う。

《会田肇》

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