IPOを出口戦略にロボット関連産業の集積を目指す…南相馬市経済部理事(企業支援担当)笹野賢一氏[インタビュー]

IPOを出口戦略にロボット関連産業の集積を目指す…南相馬市経済部理事(企業支援担当)笹野賢一氏[インタビュー]
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福島県の南相馬市では、”ロボットに関する取組みを行う事業者等の市内でのチャレンジを応援し、その成果(産業集積等)が市民生活や地域の中に溶け込むことで、ロボットと人が協働・共生し、市民の笑顔と高い付加価値を生み出すまち”をスマートシティと捉える。

福島県浜通り地域などの産業を回復するための2014年から始まった国家プロジェクト「福島イノベーション・コースト構想」がベースにあり、2020年には国土交通省のスマートシティ令和2年度重点事業化促進プロジェクトに選ばれた。スタートアップなど産業振興が行える支援体制や環境を用意し、出口戦略として株式公開(IPO)まで目指すユニークな取組みを行い、企業誘致に成功している。南相馬市経済部理事(企業支援担当)の笹野賢一氏に取組みについて詳しく聞いた。

笹野氏は、11月27日に開催するオンラインセミナースマートシティ/加賀・熊谷・南相馬に登壇し市の取組みについて詳説する予定だ。

---:南相馬市は東日本大震災で甚大な被害を受けましたが、現在の暮らしの状況を教えてください。またロボットを軸としたスマートシティは南相馬市の事業のどこに位置付けられているのかを教えてください。

笹野氏:人が住んでいない一部に帰還困難区域がありますが、その他はすべて避難区域などの指定から解除されました。

南相馬市では「南相馬市復興総合計画 後期基本計画」を策定し、その中の復興重点戦略に「福島ロボットテストフィールドを核とした新産業創出と人材誘導」を掲げています。ここの部分が、ロボットを軸としたまちづくりの取組みにあたります。

ロボットを軸としたまちづくりに関しては、2014年から始まった国家プロジェクトである福島イノベーション・コースト構想に沿うものであり、そうした取組の一環として、市のロボット産業推進アドバイザーである東京大学名誉教授の佐藤知正(さとうともまさ)先生とともに国交省のスマートシティの公募事業、市内のスタートアップ企業支援などいくつもの取組みを行っています。

福島ロボットフィールドと南相馬市産業創造センター

---:ロボットを軸としたまちづくりの具体的な取組みを教えてください。

福島イノベーション・コースト構想のロボット分野における主要プロジェクトであり、ロボットやドローンの研究開発に必要な実証試験や性能評価が一か所で行える世界的にも類を見ない「福島ロボットフィールド」が2020年3月に全面開所しました。デンソー、スカイドライブ、アルソックなど大企業からスタートアップまで21事業者が入居しています。

さらに福島ロボットフィールドから1.7キロ、車で数分の所に、南相馬市のインキュベーション施設(貸事務所・貸工場)「南相馬市産業創造センター」が2020年9月から本格稼働し、現在12事業者が入居しています。斬新なビジネスモデルを持ったスタートアップ型のベンチャー企業の入居が増えています。

南相馬市産業創造センターは事務所や工場をただ単に貸し出すだけではありません。南相馬インキュベートコンソーシアム(出口戦略の策定支援などをツクリエ、IT関連ベンチャー企業の支援業務などを福島県ベンチャー・SOHO・テレワーカー共働機構相双支部、施設の維持管理と地域交流支援などをゆめサポート南相馬が行う)が、企業進出から事業計画のブラッシュアップ、各種助成金の活用の支援、VC連携などの資金調達支援、リバースピッチなどの大企業連携支援、IPOなどの出口戦略支援までの支援メニューを描いてサポートします。

IPOを狙うスタートアップも入居

---:注目企業をご紹介ください

笹野氏:愛知春日井市から進出した企業で、長距離無人航空機を開発する「テラ・ラボ」です。この企業は、2019年に福島ロボットテストフィールドの研究室に入り、2020年には南相馬市産業創造センターの貸工場へ移転、来年の2021年には復興工場団地に入り量産化を試みます。航空機測量は現在有人で行われており、それを無人化させる新しい試みで、ジャパンドローン2020のドローン・ニュービジネス部門で最優秀賞を受賞しました。IPOも視野に入れており、ベンチャーキャピタルなどから資金調達も行っている状況です。

VCを公募、ピッチイベントを開催予定

---:まさに、南相馬インキュベートコンソーシアムで描かれている理想的なステップを駆け上っている企業ですね。実証実験フィールドとして提供して、企業誘致を行う自治体はあります。しかし、実際に産業集積まで結果が出ているところは少ないように思います。うまく行っている理由は何だと思いますか?

笹野氏:国、県、基礎自治体が一体的に動けている点が功を奏しているように感じています。県は福島ロボットテストフィールドの提供、国は全国でも例がない手厚い補助制度、基礎自治体は地域の各種調整といったような強みがあり、それらを融合することができているのではないでしょうか。

ベンチャー企業の資金面のバックアップは、行政の補助金だけでは足りません。ベンチャーキャピタルや地方銀行などの金融機関との連携が欠かせません。そこで2020年11月12日より、市内ベンチャー企業などへ支援いただけるベンチャーキャピタル等の募集を開始しました。2020年12月21日には連携協定締結式と福島ロボットテストフィールドを用いたピッチイベントを開催する予定です。

笹野氏が登壇するオンラインセミナースマートシティ/加賀・熊谷・南相馬は、11月27日開催予定。

《楠田悦子》

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