危機のときこそ冷静に:CASE・コロナ禍でのサプライヤーの生き残り戦略…ADLジャパン マネジャー 竹内国貴氏[インタビュー]

危機のときこそ冷静に:CASE・コロナ禍でのサプライヤーの生き残り戦略…ADLジャパン マネジャー 竹内国貴氏[インタビュー]
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CASEトレンドやコロナ禍のインパクトは、消費者により近いOEM目線で語られることが多い。しかし、サプライヤーの視点では違った考えや戦略が必要になるはずだ。電動化やニューノーマル以降、サプライヤーのとるべき戦略は何か?

難しいテーマだが、アーサー・ディ・リトル・ジャパン マネジャー 竹内国貴氏が11月30日開催のオンラインセミナー「自動車・モビリティ・スマートシティ関連産業の成長戦略」で100年に一度と言われる業界変革期の分析をサプライヤー目線の視点も加えて紹介する。セミナー開催にあたって事前インタビューを行った。

---:まず、今回のセミナー概要について教えてください。

全体は6つのパートで構成しています。最初の2つは主にコロナ禍による業界への影響を分析し(1、2)、次にCASEに伴う部品業界の変曲点(3)を見ていきます。これらの前提を踏まえて、産業構造と付加価値構造がどう変わっていくのか(4)、OEMとサプライヤーの関係はどうなるのか(5)を考察し、最後にまとめとして日系企業の課題と今後の方向性の提示(6)をしたいと思います。

---:なるほど。順を追って聞いていきたいと思います。コロナの自動車業界への影響はどう見ていますか?

2020年に入ってから9月までをみると、コロナに伴う移動制限などを受け、ほぼ世界中で自動車の製造・販売が大きく落ち込みました。販売台数などコロナの市場全体に対する影響は数年続くと見ていますが、業界に対する本質的な影響としては、優勝劣敗を強めて、強いところがより伸び、弱いところが淘汰されていく現象を際立たせたと見ています。

その象徴的な例がコロナで驚異的に伸びたテスラです。欧州のグリーンディールなど環境政策の追い風もあり、EV専業のテスラの株価が非常に注目され、トヨタなどメガOEMとの比較がさまざまなメディアで行われました。確かにコロナ禍での象徴的な現象ですし、テスラが電動化に留まらずビジネスモデルなどについても先進的な企業であることは間違いないのですが、これに過剰に反応する必要はないと思っています。

セミナーでは、事例や調査データなどで詳しく説明しますが、2030年などを見据えた10年単位の長期的なスパンで冷静に業界構造の変化を捉えるべきだと思っています。

---:確かにトヨタ連合の強化、サプライヤーの統合などは以前からのトレンドでしたが、コロナで進んだ感がありますね。

コロナにおける影響として、CASEトレンドの中でも電動化は主要なドライバーです。欧州では電動車の補助金の導入や増額があり、中国では補助金の延長などがあり、これらが電動化市場を下支えしています。とくに欧州ではコロナによるガソリン車・ディーゼル車の落ち込みを補っていることは数字的に示すことができます。セミナーでは過去の分析結果と直近までの実績グラフなどをお見せしながら検証する予定です。

---:カルソニックは、ファンド主体のドラスティックな再編を行いマレリと統合されました。電動化はサプライヤーの再編をさらに進めるのでしょうか。

そう思います。カルソニックは吸排気や熱交換系に強いサプライヤーでしたが、マレリとの統合で電動化に向けた領域を強化し、メガサプライヤーになったと言えます。

メガサプライヤーほど、CASEやソフトウェアといった新領域への取り組みは重要になってきます。ただし、ここで強調しておきたいのは、これらは新規に増える領域であり、既存の部品領域がすぐに消滅するわけではないということです。電動車(xEV)の生産台数は2030年時点で全体の半分以上を占めると言われていますが、これにはHEVやPHEVも含まれます。仮にBEVが全体の2割だとしても全体の8割前後はエンジン(内燃機関)を必要とするわけです。

マフラーや燃料タンクなどはBEVでは不要になるでしょうが、HEVやPHEVでは、モーター走行で静かになる分、より消音効果が高いマフラーが求められますし、給油回数が減るPHEVでは、ガソリンの長期保存のため機密/耐圧性の高いタンクが重要です。今後10年で確かに電動化は大きく進展することが見込まれますが、その大部分でエンジンは併存しますので、既存部品においてもまだまだ改善余地はあり、全体の規模感(2030年でエンジン搭載車が全体の8割)からすると、既存領域も引き続き重要な領域となります。

---:冒頭の「過剰に反応する必要がない」というのはこのことですね。

はい。CASEをコネクテッドや自動運転というトレンドで見ると、センサやソフトウェア・AIなど新領域がフォーカスされますが、CASEの4つの要素を時間軸を意識しながらサプライチェーンの川上から川下の要素技術や部品でみていくと、サプライヤーとしての戦略が見えてくると思います。

OEMと距離が近く、一部のOEM以上のリソースを要するボッシュやデンソーなどのメガサプライヤーは、CASEの全方位に対応する必要がありますが、リソースに限りもある既存のTier1サプライヤとしては領域に応じてTier1.5としてメガサプライヤーと機能分担やアライアンスをしていくなど再編の動きが考えられます。

CASEで必要とされる部品や技術、OEMとの関係性に応じて、自社で強化すべき領域、グループの中で他サプライヤーと役割分担すべき領域の分類できると思います。もちろん、その中で、CASEのキーとなる領域を新たに広げていくこともできますが、研究開発費用に毎年1兆円以上費やしているトヨタですらCASEに対応するため、グループ含めて積極的にアライアンスを活用していますので、サプライヤーとしては限られたリソースの中で競争領域と協調領域を見極めることがより重要になってくるかと思います。

---:セミナーではOEMを頂点とする産業構造の変化についてもお話するそうですが。

あくまで相対論ですが、ドイツ系はOEMとサプライヤーの関係は主従関係でなく対等であるのに対して、日本はOEMを頂点として系列サプライヤーが階層的につながるピラミッド型の産業構造になっています。

ニューノーマルによる新しい市場ニーズやCASEによる新領域の付加価値が重みを増してくると、OEMの影響力は弱まるはずです。MaaSやコネクテッドのようなサービスビジネスの領域はGoogleなどIT系との連携が必要ですし、電動化におけるキーデバイスである電池についてはCATLのような中華系企業との連携も必要になってきます。

---:自動車に限らずグローバルでは垂直統合から水平分業にシフトしています。日本OEMの構造もそうなるのでしょうか。

はい、確かに、水平分業化は日系企業でも進展すると思いますが、日系企業の競争力の源泉であった系列内の企業間でのすり合わせを完全になくしてしまうことは、得策でないと思います。例えばトヨタグループでは、CASEのコアになる技術や領域をデンソーやアイシンのようなグループサプライヤと連携して強化しています。自動運転ではTRIAD、電動化ではBulE Nexusやパワー半導体のMIRISE Technologiesなど合弁新会社の設立がよい例です。

一方で、コネクテッドやMaaSなどについてはNTTとスマートシティ、ソフトバンクとMONET Technologiesなど、従来の系列を超えた連携を行うことでグループとして垂直統合と異業種含む水平分業をうまくミックスさせています。日本連合としてはうまいやり方だと思います。

国内サプライヤーは、コロナの影響や上記のようなCASE関連の業界のダイナミズムを踏まえつつも、危機のときだからこそより冷静に、現在の事業領域と規模やリソースに応じて競争領域と協調領域を使い分けつつOEMやメガサプライヤーと新たな関係を構築することが今後重要になってくると思います。当日の講演でも最後は日系企業の今後の方向性検討の一助となるような提言をできればと考えています。

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竹内氏が登壇する11月30日開催のオンラインセミナー「自動車・モビリティ・スマートシティ関連産業の成長戦略」はこちらです。

《中尾真二》

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