ハイブリッド車はバッテリー上がりの“救援車”にならない!?【岩貞るみこの人道車医】

トヨタ アクアのエンジンルーム。取扱説明書にはブースターケーブルをつないでのバッテリー上がり救援は「できません」との記載が。
トヨタ アクアのエンジンルーム。取扱説明書にはブースターケーブルをつないでのバッテリー上がり救援は「できません」との記載が。全 3 枚

2020年12月あたま、「経済産業省は、2030年代半ばに日本国内における新車販売を全て、ハイブリッド車や電気自動車などの“電動車”にする目標を設けるべく調整に入った。」というニュースが入ってきた。12月中旬に最終決定するというから、このコラムが出るか出ないか、読者のみなさんが読むか読まないかというタイミングで、リリースされると思う。

コロナで私(や多くの人たち)がステイホームしたり、右往左往しているあいだに、世界は電動化に舵を切り始めた。秋にはイギリスが、2030年までにエンジンだけの新車販売を禁止するといいだしたし、ふと気づけば、北米や中国も2035年までに、フランスも2040年までにと、こぞってエンジン車販売禁止の電動化宣言である。

日本はすでに、ハイブリッド技術が確立されているので、電動車といわれてもちっとも心配していないのだが、気になることがひとつある。

それは、バッテリーが上がった時の対応だ。

ハイブリッド車はバッテリー上がりの“救援車”にならない!?

バッテリー上がり。それは聞くも恐ろしく、実際に体験すると、一瞬にして地獄に突き落とされるものである。冬とか雪とか夜とかに出くわすと、人生終わった気分にすらなる。仕事に行くタイミングで発覚したときは、滝のように流れ出る冷や汗でおぼれるかと思ったくらいだ(うそです)。

バッテリーが上がったときの、手っ取り早い再始動は、救援車を利用してブースターケーブルでつないでもらうというパターンである。私自身、長いドライバー人生で、何度もこれで助けていただいたことがある。

しかし!HV(ハイブリッド車)は、エンジン車がバッテリー上がりになったとき、救援車になってくれないのである!

いや、正確には、HVの多くは、なのだが。

トヨタの場合、『アクア』の取扱説明書には「できません」ときっぱり。マツダの『アクセラハイブリッド』も同様に「できません」とある。日産は、新型が出たばかりの『ノートe-POWER』は「救援車にしないで」とやんわり書いてあるけれど、まあ、できませんということだ。ホンダの場合は、『フィット』は取扱説明書に書いていないので、お客様相談センターに電話してみたところ「ハイブリッドのe:HEVの場合、エンジン車の救済車として使えるけれど、発電量の関係で救済できるかどうかはわからない」という回答だった(ていねいな回答で、すごく感じのいい女性でした。ありがとうございます)。

今後、ハイブリッド車が増えていったら、どうなるのだろう。

JAF(日本自動車連盟)によると、2019年度の救援要請は209万7083件である。要請内容のトップ3は、

1位 バッテリー上がり 82万0733件
2位 パンク等 41万2165件
3位 キーの閉じ込め 15万4753件

堂々一位のバッテリー上がりは、2位のダブルスコアというダントツぶりだ。おそらく、JAFを呼ばずに自力で救援車を手配し、ブースターケーブルをつないだ人も相当数いることだろう。

しかし!今後、電動車が増えていったら、もう助けてはもらえない。いつもトランクにバッテリーケーブルを積んで不測の事態に備えて雪山に繰り出す身としては、これから出会うクルマ、出会うクルマがHVで、助けてもらえないかと思うと不安で仕方がない。ジャンプスターター、買おうかな……。

岩貞の冬山セット、これに毛布(スタックしたときの脱出用)がつきます。岩貞の冬山セット、これに毛布(スタックしたときの脱出用)がつきます。

盆暮れ正月、バッテリーの点検をお忘れなく

自動車メーカーには、ぜひともお願いしたい。電動化をしていくにあたり、救援車になりうるクルマに仕立てていただきたいと。

そして、私もくれぐれもバッテリー上がりに気を付けよう。過去の反省を活かし、ルームライトは必ず消そう!(バッテリー上がりのはずがないと大騒ぎしたあげく、キャリアカーを呼んだことがある)。毎日、乗っているからといっても、ちょい乗りの繰り返しだとバッテリーは充電しないし、バッテリー液も減って、前日まで元気に走っていたのに突然、ご臨終になるので気を付けよう!(バッテリー上がりのはずがないと大騒ぎしたあげく、キャリアカーを……以下省略)。

JAFによると、特に盆暮れ正月に出動要請が多いんだそうな。今年はコロナで自粛ムードが続き、バッテリーが弱っているかもしれない。正月休みにクルマで走ろうという人は、事前に点検をお忘れなく。

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家
イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。主にコンパクトカーを中心に取材するほか、ノンフィクション作家として子どもたちに命の尊さを伝える活動を行っている。レスポンスでは、アラフィー女性ユーザー視点でのインプレを執筆。コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。

《岩貞るみこ》

岩貞るみこ

岩貞るみこ|モータージャーナリスト/作家 イタリア在住経験があり、グローバルなユーザー視点から行政に対し積極的に発言を行っている。レスポンスでは、女性ユーザーの本音で語るインプレを執筆するほか、コラム『岩貞るみこの人道車医』を連載中。著書に「未来のクルマができるまで 世界初、水素で走る燃料電池自動車 MIRAI」「ハチ公物語」「命をつなげ!ドクターヘリ」ほか多数。2024年6月に最新刊「こちら、沖縄美ら海水族館 動物健康管理室。」を上梓(すべて講談社)。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 最後のフォードエンジン搭載ケータハム、「セブン 310アンコール」発表
  3. 史上最強のVW『ゴルフGTI』、6月20日デビューを予告
  4. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
  5. 宮崎「シーガイア」にサーキットがオープン! セグウェイの「電動ゴーカート」を日本初導入
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る