【ルノー ルーテシア 新型】Bセグのサイズと燃費、Cセグ並みのパフォーマンスでダウンサイザーも狙う

ルノー・ルーテシア
ルノー・ルーテシア全 16 枚

ルノー・ジャポンは5代目となるBセグメントコンパクトカー、『ルーテシア』の導入を開始した。新型プラットフォームを採用しADASも充実したものになった。

デザインが大きな戦力

1990年、『5(サンク)』の後継車としてデビューしたルーテシア(欧州名『クリオ』)は、その後累計で1500万台販売。そして4代目となる先代ルーテシアは欧州Bセグメント6年連続ナンバーワンを記録し、ヨーロッパ全体の乗用車販売台数ではナンバー2(ナンバー1はVW『ゴルフ』)というヒット作で260万台を記録した。

このクルマの成功についてルノー・ジャポンマーケティング部の内田浩行氏は、「それまで、Bセグメントはプラティカルで燃費が良い、取り回しが良いなど機能軸で選ぶ人が多かった。しかしルーテシア4は圧倒的にデザインでクルマを選ぶ人が増えた」とデザインが商品力になったことを明かす。

内田氏は、「これまでのルーテシア4は、全て曲線を使ったといっても過言ではないほど、直線を廃したデザインにより、クルマのセンシュアルな面を出していた」とし、5代目となる新型ルーテシアは、「(サイドシルの)メッキに代表されるように、ストレートで力強いパーツを多用し、曲線と直線を融合したデザインになった」と述べる。そして、「どこから見てもルーテシアだが、パーツは100%同じものを使っていない」と話す。ルノーデザインの最高責任者、ローレンス・ヴァン・デン・アッカーの言葉を引用し、「先進的でエレガント。このデザインに込めた思いは、現代のフランスである」とコメントした。

大きく向上したインテリアの質感

インテリアは、スマートコックピットと呼ばれ、大きく二つ、人間工学に基づいた操作系、エルゴノミクスと、快適性と高品質の特徴があるという。

操作系について内田氏は、「かなりラウンドしたダッシュボードにより、コックピット周りはドライバーに包まれ感をもたらし、計器類はドライバーに向いているので非常に使いやすい」。このインパネを上から見るとS字型のシェイプを描いていることから、「Bセグメントであるにも関わらず広がり感のあるデザインだ」とのこと。

また、ステアリングコラム周りも全て見直しミリ単位で調整。その結果、「足元もかなりの余裕のある作りになった」と内田氏。7インチのデジタルメーターは、任意で表示を変えることが可能で、センタークラスターの7インチタッチスクリーンは、「様々なマルチメディア系、ミラーリング系、ADAS機能の設定を行うことが出来る。エアコンのように直感的に使いたいものに関しては、物理スイッチとして残した」とコメントした。

インテリアでは質感の向上も大きなポイントだ。多くの部分にソフトパッドが使用され、「Cセグメントでもここまで多くのソフトパッドを使用しているクルマは少なく、ルノー『メガーヌ』でもここまでは行っていない」と内田氏。ドライバーやパッセンジャーが触れられるような部分はソフトタッチで手触りを意識した素材が使われており、「ルノーは革命といっているほどクオリティを上げており、ダッシュボードを始め、コンソールやドアのインナーパネルを含めてかなりの部分がソフトパッドだ」と説明した。

街は大きくならないのでサイズダウン

ボディサイズは全長4075mmで、先代より20mmほどダウンサイズ。その理由について内田氏は、「ヨーロッパマーケットではCセグ、Bセグ、そして先代ルーテシアもかなりサイズアップし、Cセグメントでは4300mmぐらいが標準になって来ている」という。しかし、「街自体は大きくならないので、どこも交通渋滞で大変。それを踏まえ、Bセグメントのジャストサイズを求め、新型ルーテシアはサイズダウンした。これはマーケットリーダーだからこそ出来たことだ」と述べる。

ホイールベースも2515mmと先代より15mmほど短くなったものの、「競合車に比べて最長だ」と内田氏。同時に「後席の足元空間は広がっている」とのことだ。

今回、インテンス仕様以上にはボーズサウンドシステムを採用。世界初のフレッシュエアースピーカーが搭載される。内田氏によると、「通常Bセグメントでボーズを採用するクルマは少ない」という。その理由は、「値段と共に、ボーズはサブウーハーのスペースをすごく取ることから、例えばCセグメントでも荷室が狭くなるなど、スペースの点で弊害が出てしまう」と説明。しかし、フレッシュエアースピーカーは非常に薄く、リアコンパートメントの中に内蔵され、「これまでの中で一番スペースを取らないボーズだと思う」と評価。その結果、「ラゲッジスペースはクラス最大級を確保している」と述べる

そのラゲッジスペースは、391リットルを確保。「Bセグメントは300から330ぐらいが標準で、先代ルーテシアも330リットルなので、ほぼCセグメントのサイズといっても過言ではない」と話す。

アライアンスの成果により新プラットフォームを採用

ルーテシアに採用された新プラットフォームはCMF-Bと呼ばれるルノー・日産・三菱のアライアンスの最新型で、このルーテシアが最初だ(因みに日産『ノート』が続く)。この狙いについて内田氏は軽量化を挙げ、「50kg軽量化された」とのこと。また、ADASの対応もあり、それらを可能にしたプラットフォームだ。また、安全性の面でもユーロN-CAPで5スターを獲得している。

搭載されるエンジンも新型で、前記アライアンスのもとに開発されたもの。メルセデスの『Aクラス』にも搭載されている、1.3リットル直噴ターボエンジンだ。「各社チューニングは違っており、前モデルと比べると、出力・トルクとも大幅に向上。特に最大トルクは240Nmで、先代ルーテシアR.S.と同じだが、発生回転域が1750に対し、より低い1600回転なので、エンジンを回さないで燃費にも貢献しているだろう」と語る。

エンジンのパフォーマンスについて内田氏は、「先代もトルク・出力ともBセグメントトップクラスだったが、新型ではCセグメントのガソリンのベーシックモデル並み。車重はCセグメントに比べて軽いので、かなりエンジンに余裕がある」。その一方、メガーヌGTと同じゲトラグ製7速湿式のクラッチを採用し、ギア比を変更することで、「燃費にも貢献。実際の数値を見れば、競合車と比べて全く遜色のないものだ」と述べ、「BセグメントのサイズでありながらパフォーマンスはCセグメントを凌駕する。しかし燃費はBセグメントなのだ」と実力の自信を見せた。

新プラットフォームの採用に伴いADASも充実した。セーフティ系では、アクティブエマージェンシーブレーキ、ドライビングアシスト系の、ハイウェイ&トラフィックジャムアシストを装備。これはアライアンスの恩恵で、日産の名称ではプロパイロットだ。「ただしチューニングは各社別々で、すごくスムーズに仕上がっている。また同じくアライアンスの装備として360°カメラ(アラウンドビューモニター)も搭載している」。

最後に内田氏は、「ルーテシアは欧州のマーケットリーダーということもあり、狙いは明確だ」という。それは、「欧州ではBセグメントのダウンサイズが進み、もう少し小さくて、良いクルマが求められ、また複数保有から1台にまとめる傾向もある」という。ルーテシアは、「都市部の使い勝手だけでなく、様々な使い方を想定し、小型車としてはこれ一台、オールインワンでいける合理的なパッケージだ」。また、「新型ではCセグメントユーザーも受け入れられるよう、内装も装備も良くなった。そしてプラットフォームも最新のものを。エンジンはCセグメントよりも少し上ぐらいの良いものを搭載しているので、サイズはBセグメントだがそれ以外はひとつ上のクラスを狙ったクルマ作りになっている。日本でもダウンサイザーは増えつつあるので、そういう方たちも取り込めれば」と意気込みを語った。

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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