運転士以外の前頭乗務を目指す…JR九州香椎線の自動運転は12月24日から

香椎線の自動運転に使われるBEC819系。
香椎線の自動運転に使われるBEC819系。全 10 枚

JR九州は12月22日、香椎線西戸崎(さいとざき)~香椎間で自動列車運転装置の実証実験を12月24日から開始すると発表した。

この装置は、自動列車停止装置(Automatic Train Stop=ATS)のうち「ATS-D」と呼ばれるものをベースに開発されたもの。

従来のATS-S形では、線路(地上)側に設置された「地上子」で速度照査を行ない、超過があった場合は、そこから車両側に設置された「車上子」へ信号が送られ、警報を発する仕組みになっている。

しかし、ATS-D形では線路条件や車両性能に関するデータベースを車上側に設け、速度照査を車両側から行なえるようになっている。速度制限箇所に地上子を設置する必要がないことからコストを削減でき、車両の性能に見合う速度制限が可能で、従来のATS-S形とも互換性を有している。

JR九州のATS-Dは、本州3社やJR四国が使用しているものと若干仕様が異なるため「ATS-DK」と呼ばれ区別されている(JR北海道も仕様が異なるため「ATS-DN」とされている)。

JR九州では、中期経営計画2019-2021の「技術革新をとらえた事業の進化」に基づき、自動列車運転装置の開発を進めてきたが、今回、香椎線で行なわれる実証実験は蓄電池電車のBEC819系「DENCHA」1編成で行なわれ、車両制御の安定性や運転取扱いの変更点、運転士の心理的影響を検証。在来線における自動運転の知見を蓄積するとしている。

踏切があるATS区間における列車への自動運転導入は全国でも初めてのことで、初日は香椎9時発(宇美始発)の列車から開始される。当面は運転士が前頭に乗務しての運行となるが、最終的には運転士以外の係員が前頭に乗務するレベルを目指しており、それを実現するまで実験が続けられる。

ちなみに国土交通省鉄道局が主宰する「自動運転技術検討会」では、「Grade of Automation」(GoA)と呼ばれる自動運転のレベルを4段階(GoA2~4)で示されている。JR九州が目指している運転士以外の係員が前頭に乗務するものはGoA2.5、運転士が前頭に乗務するものはGoA2、係員が前頭以外に乗務するものはGoA3、誰も乗務しないものがGoA4とされている。

今後はGoA2状態での自動運転区間を2021年度末までに香椎~宇美間へ拡大するとともに、対象列車も増やすことを目指しており、「『鉄道における自動運転技術検討会(国土交通省鉄道局)』での議論を踏まえつつ、今後も取り組みを進めていきます」としている。
自動列車運転装置実証運転出発式(12月24日)自動列車運転装置実証運転出発式(12月24日)

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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