北陸新幹線問題で、鉄道・運輸機構へ初の業務改善命令…JR北海道は「こらえ時」 2020年最後の国交相定例会見

3年総額1302億円という莫大な支援を受ける見込みとなったJR北海道。赤羽大臣は会見で「北海道庁における検討状況を踏まえつつ、地元関係者の御意見も伺いながら、国としても黄色線区を含め、必要な支援がどうあるべきかをしっかり検討し、精力的に行っていきたいと思っております」と述べ、地域の足を守る姿勢を示した。写真は「黄色線区」のひとつである宗谷本線の終点・稚内駅。
3年総額1302億円という莫大な支援を受ける見込みとなったJR北海道。赤羽大臣は会見で「北海道庁における検討状況を踏まえつつ、地元関係者の御意見も伺いながら、国としても黄色線区を含め、必要な支援がどうあるべきかをしっかり検討し、精力的に行っていきたいと思っております」と述べ、地域の足を守る姿勢を示した。写真は「黄色線区」のひとつである宗谷本線の終点・稚内駅。全 2 枚

赤羽一嘉国土交通大臣は12月25日に開かれた定例会見で、北陸新幹線敦賀延伸問題とJR北海道への支援継続方針について記者の質問に答えた。

2022年度末予定より1年程度の開業遅れが見込まれている北陸新幹線金沢~敦賀間については、事業費が増額された2019年3月以後も、金額が徐々に増す「増嵩(ぞうすう)」や工事の不調不落が続き、建設主体の独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)から、開業が予定より1年半ほど遅れる見込みになったことが明らかにされた。

これを受けて国交省では、11月17日に「北陸新幹線の工程・事業費管理に関する検証委員会」と題した最初の会合が開かれ、原因究明や再発防止策を検討。12月10日にはその中間報告書を明らかにしていた。そして12月22日には鉄道・運輸機構に対して「業務運営の抜本的な改善に基づく命令」(いわゆる「業務改善命令」)を出している。

業務改善命令は、国交省の鉄道関係では鉄道事業法に基づき鉄道事業者へ出されるケースが多いが、今回は独立行政法人が対象となることから、1999年に制定された各独立行政法人の組織や運営、管理について定めた「独立行政法人通則法」を根拠に出されている。鉄道・運輸機構へ業務改善命令が出されたのは初めてのことだ。

関連して12月25日には、鉄道・運輸機構から2021年1月5日付けでの北村隆志理事長と小島滋副理事長の更迭が発表され、副理事長の後任には翌日付けで水嶋智国交省官房長が就任することが発表されている。

水嶋氏は整備新幹線問題で中心的な役割を果たしてきた人物で、2019年7月に鉄道局長に就任。1年後の7月には官房長に就任しているが、以来、わずか半年足らずで鉄道・運輸機構へ転出するという異例の事態となった。

この人事について赤羽大臣は、水嶋氏の辣腕ぶりを高く評価した上で「それだけ今回の北陸整備新幹線の事案を重く見ておりますし、再度同じような事を起こしてはならない、本当に決着をつけるというような思いで、今回の人事をさせていただいたところです」と述べ、理事長の後任については年明けにも公募手続きを行なうとし、外部からの採用を示唆している。

一方、JR四国やJR貨物とともに2021年度からの支援継続方針が決定したJR北海道については、2023年度までに総額1302億円が支援されることになり、それとは別の新たな支援として、輸送密度200人以上、2000人未満の8線区(いわゆる「黄色線区」)に対する支援なども行なうとされている。

これらの支援について赤羽大臣は「少なくない額」としながら、北海道が持つ観光のポテンシャルや北海道新幹線札幌延伸、中核都市間の交流人口増加、インバウンド需要の復活などに期待感を込め、「国も大変なのですけれども、北海道庁も含めてJR北海道は、ここはこらえ時として頑張っていただき、そして新たな展開につなげていきたい。そうした思いから、従来よりは相当踏み込んだ支援をさせていただく」と述べた。

また、支援を受けるJR北海道に対しては、経営改善努力を怠りなく支援継続をしっかり受け止めてほしいと釘を刺している。

《佐藤正樹(キハユニ工房)》

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