鉄道自殺、運転士のその後---心のケアと鉄道事業者による対応

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駅に進入する電車がけたたましく警笛を鳴らして急ブレーキ、直後にバーンと大きな音……。飛び込み自殺だ。運転席の窓ガラスに、蜘蛛の巣のように白くヒビが入っている。列車の運転士、事後処理にあたった駅員・職員が、精神的に参ることはないのだろうか。

ホームドアを作れ、とか、何々線は自殺者が多い、といった記事をしばしば目にするが、鉄道事業現場についての報道はほとんどない。現状を複数の鉄道事業者に取材した。

まず、事故の精神的な影響度合いについては、個人差があるという。参る運転士もいるだろうし、参らない運転士もいて、人それぞれのようだ。事故後の列車は、基本的に所定の運転士が運転を継続する。管理者が添乗することもある。また運転士自身が負傷し、乗務できないようならば交代する。

事故後、通常業務への復帰までの時間も、その時の状況によって変わる。例えば、最寄交代駅まで運転して当日は乗務を外れ、翌日の所定勤務から通常勤務に復帰する場合もある。事故後、乗務にすぐ復帰できるようであれば復帰するし、反対に、「ちょっと乗れない」というようなことになり、復帰が遅れる場合もある。事故列車の運転士が事故後に退職した例は聞かれなかった。ごく稀だが、休養の後、他の業務(駅員など)へ異動した例はあった。

事故に関係した運転士・駅員への精神的なケアは適宜行なっており、一定の効果があるようだ。ある事業者では、事故後に管理者が状況確認を含め面談し、さらに必要性を認めた時は、産業医との面談を実施している。またある事業者では、事故に関係した運転士へは、当日および3カ月後を目途に所属長による面談を行っている。さらに本人の希望があれば、臨床心理士との面談および看護師との電話相談を実施している。これらは自殺ではない人身事故でも同じ対応だ。いっぽう、特に対応をしていない事業者もあった。

また、職員養成期間に、自殺事故後の精神的ケアについてのカリキュラム、あるいは、現役の職員に対して同様のセミナーなどを設けている事業者は、取材範囲ではなかった。自殺事故に限らず、一般的な精神的ケアのカリキュラムを設定しており、事故後にそれで対応している事業者はあった。各事業者は事故後の精神的ケアについて、事故の都度、当事者の話を聞き、状況や個人に合わせた対応をしているようだ。

参考
★こころの健康相談統一ダイヤル…0570-064-556  全国どこからでも共通の電話番号に電話すれば、電話をかけた所在地の公的な相談機関に接続されます。
★厚生労働省の自殺対策ホームページ…https://www.mhlw.go.jp/mamorouyokokoro/ SNSや電話を通じた相談窓口もあります。

《高木啓》

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