【池原照雄の単眼複眼】2020~21年新車市場展望…日中は前年実績超えも苦境続く欧米 

販売急回復の中国は北京モーターショー2020も開催した(トヨタブース)
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全地域マイナスのなかで中国の落ち込みは最小に

日本、中国、米国、欧州の主要新車市場4か国・地域の販売動向について、2020年を振り返り、明けた2021年を展望した。

20年の新車販売は、猛威を振るう新型コロナウイルスによって、すべての主要地域でマイナスとなった(筆者の一部推定値などを含む)。その落ち込み具合は、感染状況を映しており、12月になってウイルスの変異種が確認されるなど、深刻な事態が続く欧州が最大の減少となった。さらに、国別感染者数が最大の米国が欧州に次ぐ落ち込みだった。

欧米に比べると感染者が極めて少ない日本のマイナス幅は、欧米より軽微で済んだ。また、ウイルス確認の起点となった中国は、国家主導の感染封じ込めが効き、意外にも4か国・地域では最も少ない減少にとどめている。21年は視界不良の幕開けとなったが、欧米の苦境は続き、中国と日本は前年を上回る回復も期待できる情勢となっている。

日産 アリア(北京モーターショー2020)日産 アリア(北京モーターショー2020)

■主要国・地域の新車市場2020年~2021年
   20年見込み    21年トレンド
日本 458万台(▲12%) 増加へ
中国2,530万台(▲2%) 2,630万台(4%)
米国1,430万台(▲16%) 弱含み
欧州1,000万台(▲35%) 弱含み
※カッコ内は前年比増減率、▲はマイナス。日本と欧州の20年は一部筆者推定含む。中国は中国汽車工業協会の予測値。米国の20年は英HISマークイット社の予測値。

日本は新モデル効果もあって20年は12%減に踏ん張る

トヨタC-HR EV(北京モーターショー2020)トヨタC-HR EV(北京モーターショー2020)

日本の20年は、19年10月の消費税率引き上げの影響が続き前年同月比マイナスでのスタートとなった。春先からはコロナ禍による落ち込みが始まり、マイナスは9月まで続いた。10月は前年の消費税増税による大きな落ち込みの反動もあって2ケタ増と1年ぶりにプラスに浮上し、11月も増加した。

前年の特殊要因からの反動だけでなく、各社の新モデル効果も秋以降の需要回復に寄与している。トヨタ自動車は人気のSUVで『ハリアー』や『ヤリスクロス』といった新モデル投入が奏功し、登録車市場では7月以降、レクサスブランドを含むシェアが50%を超える快走を続けている。ホンダの『フィット』、SUBARU(スバル)の『レヴォーグ』、日産自動車の『ノート』といった新モデルも好調で、改良によって商品力を高めたクルマにはコロナ禍においても顧客の支持が集まる展開となっている。

盛況の北京モーターショー2020盛況の北京モーターショー2020

20年の日本市場は1~11月累計では前年同期比13%減の約422万台。12月を前年同月比5%増と推定して年間の販売台数をはじくと前年比12%減の458万台規模となる。自動車業界が近年、好不調の目安としてきた年間500万台には乗らず、16年以来4年ぶりの大台割れになった。ただ、それでも後述する米国および欧州の落ち込みより断然に軽微だ。

「15か月予算」でEVやPHVの補助金を倍増させる日本

日本市場では新モデルに高い支持(スバル・レヴォーグ)日本市場では新モデルに高い支持(スバル・レヴォーグ)

感染拡大がより深刻にならないという前提だが、21年の始まりも19年の10月以降のトレンドが続き、前年同月を多少上回るレベルでのスタートとなろう。コロナ禍で19年に大きく減少した4~6月は相当な前年超えが見込め、年間でも20年を上回る市場が期待できそうだ。

政府は12月に第3次の20年度補正予算を決め、年初の1月から21年度末までのいわゆる「15か月予算」で、感染拡大防止と経済浮揚の両立を狙った対策を講じている。自動車では今回の3次補正で、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)など、走行時の環境性能が極めて高い車両を対象に、購入時の補助金を倍増させるなどの策を講じ、年末から実施している。

この需要喚起策では、購入者の家庭や事業所の電力を再生可能エネルギーによるものに切り換えるのを条件に、補助金の上限をEVでは従来の40万円から80万円に、PHVは20万円から40万円に倍増させている。EVについては自治体独自の補助金制度を導入しているところも多く、例えば東京都では30万円となっているので、国との合計で110万円もの補助になる。水素で走る燃料電池車(FCV)も補助金の上限額が225万円から250万円に引き上げられている。この3次補正の補助金増額は1万台程度が対象になるよう予算が組まれた。
一方、21年4月で期限が切れるエコカー減税も内容の見直しはあるものの、2年間の延長が決まった。さらに19年度から実施されている65歳以上の高齢者が一定の安全運転支援車(サポカー)を購入する際の補助金(最大10万円)についても、当初は20年度内だった期限を、予算が消化されるまでは21年度も続けることが決まっている。

こうした一連の政策は、購入を検討しているユーザーを着実に後押しすることになろう。日本自動車工業会の永塚誠一副会長は21年の需要動向について「政府の15か月予算による補助金や税制に期待したい。コロナ禍による新しい日常で、移動手段としての自動車の果たす役割も再認識されているので、そうした動きを取り込んでいきたい」と、話している。

中国は4年ぶりの増加で世界の販売回復けん引へ

中国の20年は2月の販売がほぼ停止状態となって前年同月を8割下回ったものの、4月にプラスに浮上すると年末まで連続して前年超えと、世界最大の新車市場は驚異的な回復を見せた。感染拡大を封じ込め、生産や販売活動も早期に復活したため、日本各社も総じて好調に推移している。トヨタは11月時点で20年の販売が前年に続いて過去最多となる見通しになった。

中国汽車工業協会は12月に20年の新車販売見込みと21年の予測を公表した。このなかで20年は前年を2%下回る2530万台を見込んだ。中国のピークは17年の2887万台(3%増)で、そこまでの市場拡大が急だったこともあり、18年以降は3年連続のマイナスとなった。21年は、20年見込み比で4%増となる2630万台と、4年ぶりのプラスを予測している。うち乗用車は2170万台(同8%増)の想定。新年も世界の販売回復は、中国がけん引することになろう。汽車工業協会は今回、全体需要が25年には3000万台の大台に達するとの見通しも示した。

中国はEV、PHV、FCVを「新エネルギー車」として、環境対策の推進とともに、自動車産業育成の重点領域と位置付けている。20年11月には政府が35年に新車販売の半数を新エネルギー車とする長期の「発展計画」を公表した。足元の21年は、前年見込み(130万台)を約4割上回る180万台を見込んでいる。EVは世界最大手の米テスラが20年から中国での生産を始めるなどで注目が高まっており、今年も着実な販売増が見込まれている。

20年の米国は8年ぶりの1500万台割れ

米国の20年は第1四半期(1~3月)が前年同期比12%減、第2四半期(4~6月)が33%減、第3四半期(7~9月)が9%減と推移した。月次では9月に増加に転じていたものの、11月には再び落ち込んだ。営業日が前年より3日少なかったことが主因だが、同月から感染者数が再び最多ペースの増勢に転じたコロナの影響も出た。

英調査会社のIHSマークイットは、20年の米国市場を1430万台(前年比16%減)規模と予測している。1500万台を割り込むのは、リーマン・ショックからの回復途上にあった12年(1449万台)以来、8年ぶりだ。日本勢は一部を除いて9月から回復を続けており、米国で人気の高いスバルは9月、10月と月次で過去最多の販売を記録した。

21年の市場はコロナの感染状況に大きく左右される展開が必至だ。ただ、英国などとともにいち早く始めたワクチン接種の成果がどう出るのかも含め、不確実要素が多い。一部の調査会社は年間では増勢に転じると見込むところもあるが、論拠は希薄だ。スバルの中村知美社長は「回復は不透明であり、引き続きコロナのリスクをはらんでいる」と警戒する。

最大の落ち込みとなった欧州は21年も厳しいスタート

欧州の20年は4か国・地域で最も落ち込みが大きかった。欧州自動車工業会(ACEA)によるEU26か国の統計(マルタ除く、乗用車)は1~11月で前年同期比26%減の891万台だった。12月の販売を11月とほぼ同じトレンドの前年同月比10%減と想定して算定した年間市場は、前年比35%減の1000万台となる。

ただ、一昨年の12月は排出ガス規制強化を前にした駆け込み需要が拡大し、12月としては過去最多となっていただけに、20年はその反動減で落ち込みが膨らむ懸念もある。21年の欧州は、米国同様にコロナの影に覆われている。12月にはドイツで販売店が営業停止になり、英国ではロンドンが3度目の実質的なロックダウンを余儀なくされた。新車市場回復の糸口は見えてこない。

《池原照雄》

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