コロナ禍で分かった日本のスマートシティ成功のヒント …LINE Fukuoka Smart City戦略室 室長 南方尚喜氏[インタビュー]

コロナ禍で分かった日本のスマートシティ成功のヒント …LINE Fukuoka Smart City戦略室 室長 南方尚喜氏[インタビュー]
コロナ禍で分かった日本のスマートシティ成功のヒント …LINE Fukuoka Smart City戦略室 室長 南方尚喜氏[インタビュー]全 1 枚

2020年コロナ禍での取組みを通して気づいた日本のスマートシティ成功のヒント について、LINE Fukuoka株式会社 Smart City戦略室の南方尚喜室長に聞いた。

南方氏が登壇する、1月26日開催のオンラインセミナー「会津若松・高松・福岡のスマートシティ、スーパーシティ戦略」はこちら。

コロナのよる社会変化を即座にキャッチ

---:2020年は約30本のプレスリリースを出されたようですね。コロナ禍のアクションを振り返ってください。

南方氏:福岡で新型コロナウイルス感染症の患者がまだ1人程度だった昨年2月。社会の変化を察知し、プロジェクトの選択と集中を行いました。例えば、観光に関するプロジェクトを止め、コロナ対策のプロジェクトに注力する決断をしました。

その分、福岡市民が一番知りたいと思った新型コロナウイルスに関する質問や特別定額給付金の疑問点について、LINE と福岡市が締結した「情報発信強化に関する連携協定」に基づいて開設された「福岡市LINE公式アカウント」の中 で、テキストを用いた自動会話プログラムのチャットボットで聞けるようにしました。

8日間で混雑状況の提供に対応。コロナで深まった民間連携

---:緊急事態宣言の解除直後にコロナ対策で西日本鉄道(西鉄)と連携して、福岡都心部を運行する一般路線バスと西鉄電車の混雑状況を、西鉄が運営する2つのLINE公式アカウント「にしてつバス(ID:@nishitetsu_bus)」および「【公式】西鉄電車(ID:@nishitetsu_train)で発信しはじめたことが注目されましたね。

南方氏:福岡は2020年5月14日に緊急事態宣言が解除されました。市民のみなさんが求めたことは、三密を避けた安心安全な移動でした。

そこで西鉄さんは交通系ICカード「nimoca(ニモカ)」を用いた混雑情報を公開するなどして対策をとられたのですが、HP上であったためあまり閲覧されていませんでした。そこで、より多くの市民の方に公共交通の混雑状況をお伝えするために、西鉄のLINE公式アカウントでその情報を配信することを提案し、なんとわずか8日間で実装。非常にスピーディーに進みました。
西鉄のLINE公式アカウントの友だち数も機能リリース後から2020年10月時点で「にしてつバス」は約1.8倍、「【公式】西鉄電車」は約4.7倍に急激に伸びました。

さらにこの西鉄さんとの取り組みが、福岡銀行さんの整理券の利用情報を用いた窓口のリアルタイム混雑情報の公開にも発展しました。このようにコロナ禍がきっかけとなり、福岡市内の民間企業との連携が急激に進みました。

そこで民間企業との連携をより強固にするために、LINE Fukuokaが発起人となり、2020年10月14日に「Fukuoka Smart City Community」を発足させました。

福岡の9社が団結

---:福岡ではすでにスマートシティについて、民間企業が連携しているイメージでしたができていなかったのですね。Fukuoka Smart City Communityに参画する企業を教えてください。

南方氏:福岡には、コンソーシアムなどの組織体は存在しますが、勉強会やディスカッションが中心です。感染症や自然災害が相次ぐ中、その時々に発生する市民の課題を迅速に解決すべく、アウトプット重視の組織体を結成するに至りました。

Fukuoka Smart City Communityの参画企業は、福岡市をオブザーバーに迎え、九州旅客鉄道、⻄部ガス、⻄日本シティ銀⾏、⻄日本鉄道、福岡銀⾏、福岡国際空港、福岡地所、嘉穂無線ホールディングス、弊社で市民生活と密接な9社です。

昨年に発足したコミュニティで、具体的な取組み内容の検討はこれからになります。

市民と技術との間に大きな距離を感じる

---:これまでとコロナ禍での活動を通して気づいたことを教えてください

南方氏:福岡市LINE公式アカウントの運用、QRコード決済LINE Payの普及、その他にも社会の課題を解決すべくスマートシティに取組んできました。

しかし、ユーザーに常時使ってもらうサービスに育てることは非常に難しいです。

これは、これからの日本のスマートシティの課題だと思います。自動運転、MaaSなどせっかくサービスの提供をはじめたけれど、まったく使われないという問題が、これからさらに増えるのではないかと思います。
“市民と技術との間に大きな距離”があるのです。ではこれはどうすれば縮まるのか?

私たちはコロナ禍での数々の取り組みを通し、市民の皆さんが直面する困りごとをタイムリーに解決してきました。すると、とても多くの方がそれを自発的に活用したり、家族や友人、同僚などにオススメするシーンを目の当たりに。市民と技術との距離が縮まる大きな手応えを得ました。

LINEのミッション「CLOSING THE DISTANCE」のもと、人と情報、人と技術などをいかに縮めるかの挑戦です。市民の皆さんが毎日利用するLINEだからこそできる、困りごとのスピード解決と、それによる市民の行動や価値観の変化を促すことが、スマートシティ成功への第一歩になると確信しています。

南方氏が登壇する、1月26日開催のオンラインセミナー「会津若松・高松・福岡のスマートシティ、スーパーシティ戦略」はこちら。

《楠田悦子》

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