若者向け“脱ハーレー”クルーザーに、ホンダ レブル1100 はスティードの再来ではない

ホンダ レブル1100DCT
ホンダ レブル1100DCT全 20 枚

401cc以上の大型バイクに乗るには、まだ「限定解除」という難問がライダーたちの前に立ちふさがっていた1980年代後半。ホンダは『スティード400』を発売し、90年代に“アメリカンブーム”を引き起こす立役者となった。

そのホンダが、今度は1100ccもの大排気量エンジンを積むカジュアルなクルーザーを新発売する。『REBEL(レブル)1100』だ。

先行して3月11日に、クラッチレバー操作やシフトチェンジをオートマ化した『レブル1100デュアルクラッチトランスミッション(DCT)』を、5月13日に従来どおりのマニュアル操作となる『レブル1100』をそれぞれ発売。価格はレブル1100が110万円、レブル1100 DCTが121万円となる。

ひとめで“レブル”とわかる独創的デザイン

左からレブル1100DCT、500、250。左からレブル1100DCT、500、250。
レブルシリーズは2017年にデビューし、国内では250ccと500cc、海外では300cc版もラインナップ。80年代から90年代中盤に生まれた「ジェネレーションY」(IT繁盛期に成長したことでデジタルネイティブやミレニアル世代ともいわれる)をメインターゲットに、世界中の幅広い年齢層から評価が高く、これまで累計2万5000台を販売してきた。

最後発のデビューとなるシリーズの長兄は、ライダー股下のくびれ形状や後部のループ形状を踏襲しつつ、1100ならではの重厚感も程よく持たせている。スティードはハーレーダビッドソンのフォルムをなぞっていたが、レブルは独創的なデザインで、くびれのあるナロースタイルをシリーズで共有。何にも似ていない、レブルだとひと目で分かるシルエットを、新型の1100でも貫いた。

このシルエットからは、これまでの「大排気量クルーザーといえばハーレー」という通説に抗う“Rebel”(反逆者、反逆する)のスピリットを感じてならない。ハーレーに憧れてスティードに乗った、かつてのバイク乗りたちとは一線を画す、レブル250でバイクの楽しさを知った若者たちのステップアップの受け皿になっていくのだ。

本気さ伝わるラジアルマウントキャリパーの装備

ホンダ レブル1100DCTホンダ レブル1100DCT
さて、新型レブル1100の詳細を見ていこう。車体に跨ってまずわかるのは、レブルシリーズ共通のナロースタイルにより、低重心で安心感のある足つき性を実現していること。シート高はわずか700mmで、レブル250より10mmしか上がっていない。

車体重量も223kgと大排気量車にしては軽く、DCT仕様でも233kgに抑えている。おかげで、押し引きなど取り回しで苦労することがなく、カジュアルにいつでもどこへでも乗っていける印象。レブル250や500でも感じたイージーライディングが、兄貴分にも受け継がれている。

驚きはバンク角が35度と深いことで、これならコーナリングも苦手としない。フロントフォーク角30度とクルーザーらしいスタイリングを表現しつつ、スラント角を2度設けることでキャスター角を28度に立てて、直進安定性とニュートラルなハンドリングを両立した。

フロントブレーキにはモノブロックラジアルマウントキャリパーがおごられ、330mmのフローティングディスクとセット。カートリッジ式フロントフォークは径43mmのインナーチューブにダークネイビーの酸化チタンコートを施し、アルミ展伸材とアルミ鋳造の2ピース構造としたボトムケースと組み合わせている。

ロッド径12.5mmのリヤクッションは分離加圧式ピギーバックタイプとし、スポーツライドにおいても安定した減衰力を発生。新構造のプリロードアジャスターも採用した。

パルス感にこだわったパラレルツインエンジン

ホンダ レブル1100DCTホンダ レブル1100DCT
新設計の専用フレームには排気量1082cc、『CRF1100Lアフリカツイン』譲りの水冷SOHC4バルブ並列2気筒エンジンが搭載された。専用のカムシャフトや質量を32%増加させた重いフライホイール、吸排気系や点火時期の見直しによって低回転域でのパルス感を強調させ、クルーザーらしいトルクフィールを実現。回転数が低い領域では重厚かつ上質なパルス感、高い領域では弾けるような力強いパルス感が味わえる。

DCT仕様ではライディングモードも備え、パワーフィールやHSTC(後輪トルク/ウイリーコントロール)、エンジンブレーキ(減速フィール)、DCT(シフトタイミング)を協調させて変更可能。プリセットは「STANDARD」のほか、加速状態ではより低いギアを選択し、高回転を積極的に使用する「SPORT」、高いギアを多用しながら、シフトチェンジではクラッチを緩やかにつなぐことでショックをおさえ、よりスムーズな乗り心地を実現した「RAIN」の3つを設定。持ち味であるイージーライドをより楽しめるのは、想像に容易い。

燃料タンクは13リットルの容量を確保しつつ、丸みを帯びたフォルムを実現するためにフランジレス製法を採用。質感や触感に訴えるフェンダーは、前後ともに厚さ1mmの鋼板を絞り成型し、素材感と機能美を追求するとともにカスタマイズイメージも膨らませる。

シート下には容量3リットルのストレージボックスがあり、3AのUSB Type-Cも装備。ガジェット類の収納および充電が可能で、さらにグリップヒーターやETC2.0車載器も標準装備した。

エンジン始動までの所作にもこだわり、キーシリンダーを車体左側に配置。コックピットまわりをすっきりさせることで解放感を演出しているのも、シンプルさを追求した結果だ。250や500がそうだったように、1100もまた若者を含む幅広い層に支持されそうだ。

《青木タカオ》

モーターサイクルジャーナリスト 青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

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