【マツダMX-30 EV】カーボンニュートラル・電動化で独自性を模索する

MX-30 EVモデルの戦略
MX-30 EVモデルの戦略全 10 枚

マツダが28日、『MX-30 EVモデル』を日本国内市場に投入する。欧州ではすでに発表され20年9月には出荷も始まっているマツダのEV。国内ではリース販売のみと言われていたが、購入支援策も充実させた一般販売となった。その狙いや戦略を事前発表会の内容からまとめたい。

マツダは内燃機関にこだわるあまり、電動化やEVには否定的な立場と捉えられていた。欧州でMX-30を発売したときも「CAFE規制のためにやむなく作ったので売れなくてもいい車だ」と論評する専門家もいた。だが、CAFE規制の過料を回避するだけなら、クレジットを購入すればいい。CAFE規制のためならむしろ売れなければ意味がない。

カーボンニュートラルの達成は、車両側の対応だけでなく政策的なエネルギーミックスの中で再生可能エネルギー(再エネ)へのシフトが不可欠とされる。自然エネルギーは安定供給など課題は多いものの欧米はすでにLCAの視点で再エネシフトを進めている。日本も公式に再エネシフトを表明した。たとえ、初期投資がすぐに回収できなくても、中長期的には電動化車両の開発・市場投入は避けられない。

MX-30 EVモデルの国内市場投入。しかも当初噂されていたリース販売ではなく、一般販売が正式発表された。発表会でもマツダは「EV・PHEVの市場比率は、2030年で11%から30%と幅があるが、2018年当時の5%前後という予想からは上振れしている。市場の動きも予想を越えた動きをしめしている。」と語る。

今回の発表では、ロータリー発電機搭載のレンジエクステンダーモデルの22年投入も正式にアナウンスされ、グローバルには、2030年までに、独自・自社開発によるEV専用プラットフォームの開発とEV・PHEVの追加車種の投入が必要との認識も示された。EV専用プラットフォームは、共同開発やOEM供給を受けるのではなく、自社製のものになる予定だ。

この状況を「積極的でなかったマツダも電動化に舵を切った」と捉えることも可能だ。しかし、これを方針の大転換とするのは間違いだろう。マツダは2012年に小型ロータリー発電機によるレンジエクステンダーをデミオに搭載したEVを開発している。MX-30は2019年10月の東京モーターショーでコンセプトカーが公開されたが、翌年1月には欧州で先行予約を開始している。車両の工場出荷は9月からだが、すでにEU圏で1万台の登録実績があるという。とりあえずEVを作りました、というデモンストレーションではできない芸当だ。

コンセプト発表から1年で量産出荷(MX-30の欧州発売は20年9月から)ができたのは、モーターショーの時点でかなり準備が進んでいたと考えられる。加えて、マツダのフレキシブル製造ラインの存在も大きい。マツダの広島工場は、同じラインでディーゼル、ガソリンが混在したエンジンの製造が可能だ。ロボットや工作機械、ラインの流れを替えるのに大規模な工事が必要ない。柔軟性が高く、量産といえど少量多品種の傾向が強い現代のビジネストレンドとの親和性も高い。

規模の違いもあるが、トヨタくらいになると工場は車種専用となり、混在や切り替えは時間とコストの面で現実的ではない。トヨタは電動化やカーボンニュートラル対応、あるいはモビリティ革命に「全方位」で望んでいるが、戦線はスマートシティや全固体電池、水素自動車と広範にわたる。状況がどのように進んでも対応できる万全の備えと言えるものの、他OEMにはおいそれとマネはできる戦略ではない。トヨタでもスポーツカーはマグナやスバルと、EVをスバルと共同開発するなど、R&Dのリスク・コスト分散を行っているくらいだ。

マツダは、欧州で「ヤリス」のOEM供給を受けると言われている。しかし、今回独自のEVプラットフォームに言及したことを見ると、むしろこのアライアンスは一時的なものと考えられる。あるインタビューでマツダの藤原副社長は「OEM供給では雇用を維持できない」と述べている。この発言を「(売れない)EVを作ると雇用を維持できない」と解釈する向きがあるが、主旨はプラットフォームやパワートレインの供給を受けて生産するだけでは、完成車メーカーとして今の規模の工場も人員も要らなくなるということだ。「独自プラットフォーム投資は回収できる」とも発言している。

マツダは電動化の準備や対応を怠っていたわけではない。電動化戦略でも持前の独立精神は顕在だ。

《中尾真二》

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