ソフトウェアファースト時代:UX/UIは車両開発のコアバリューになる…アクセンチュア 鵜塚直人氏[インタビュー]

ソフトウェアファースト時代:UX/UIは車両開発のコアバリューになる…アクセンチュア  鵜塚直人氏[インタビュー]
ソフトウェアファースト時代:UX/UIは車両開発のコアバリューになる…アクセンチュア 鵜塚直人氏[インタビュー]全 1 枚

自動車産業におけるソフトウェアの役割や位置づけが変わりつつある。OEMやサプライヤーにとっては電動化よりも大きな変革をもたらすインパクトを持っている。

ひとつは、車両開発のプロセスや戦略が大きく変わることだ。たとえば、CASE時代は、車両ハードウェアの基本性能や安全性、先進技術による付加価値だけでなく、移動を含むサービスや体験による価値が求められるという。この変革は、ソフトウェアの存在なくして実現できないものだ。

ソフトウェア革命で車両のコアバリューを決めるのは、HMIとそのUX/UIの設計、つまり車室内空間設計だという。そう主張するのはアクセンチュア株式会社 製造・流通本部 マネジング・ディレクターの鵜塚直人氏だ。鵜塚氏は2月22日開催のオンラインセミナー 「次世代モビリティに求められるHMI・UXUI~最新の考え方、事例、次なる一手~」でこの点について講演する。今回、講演前に話をきいた。

――ソフトウェアが車両開発での重みが増すと言われています。まずその背景について説明いただけますか。

自動車業界に限らず、デジタルが社会や産業に与える影響や変革はますます無視できない状態にあると思います。自動車業界では、CASE車両の登場によって車両開発にかかわるソフトウェア、車両に搭載されるソフトウェア、サービスやサプライチェーンにかかわるソフトウェアの質・量ともに次元を超えたものになってきています。

自動車産業そのものが、メーカー、サプライヤー、ディーラーといった既存プレーヤーだけでは成り立たなくなっていますし、意思決定や商品開発に求められるスピードも上がっています。ここで注目されるのが、柔軟な組織運営、プラットフォームによるアーキテクチャの統合化、内部・外部の人材強化です。

以前のように、車種・車種群ごとに独自設定、独自モデルとするような開発、ピラミッド型の分業体制が適合しにくい状況が生まれています。技術や人的リソースについても、従来の電気・電子実装からAI、クラウドまですべて1社でまかなうことも不可能です。

車両開発プロセスを見直して、バリューチェーンを組み直す必要があります。

――そのためにソフトウェアに対する取り組み方の再整理が欠かせないということでしょうか。

はい。ビジネス、デザイン、エンジニアリング、生産を一体化して取組む必要がありますが、今後、ソフトウェアの開発工数が爆発的に増えます。これを回避・コントロールするために、ブランドとしての提供価値を起点にアーキテクチャを整理し、開発の効率化を目指す必要があります。また、ソフトウエアもハイテク業界で行われているアーキテクチャのレイヤー化が行われるでしょう。

この動きはEU勢が先行しており、開発プロセスの刷新や専門の人員を増やすなどソフトウエア開発の手の内化を進めています。やみくもに内製化をするのではなく、アーキテクチャレイヤーごとにどこまでを自分達で管理するか、どこを外部やパートナーシップに委ねるか、吟味しながら戦略を立てています。

――ソフトウェアが重要になるとして、HMIがそのコアのひとつになるというのはどういった理由からでしょうか。

CASE車両開発の論点にHMIがあるのは、それが人が直接さわるところであり、今後の付加価値の源泉になるからです。CASE車両は、走る、曲がる、止まる、安全といった車の基本性能だけでは不十分と言われています。走る・曲がるなどはハードウェアの機能や性能で実現できるものですが、コネクテッドカー、自動運転カー、シェアリングカーは、移動全体、車が止まっているとき、車から降りたときを含めた価値を設計する必要があります。

CASE車両の付加価値は、ユーザー体験にあると言ってもいいでしょう。ユーザー体験には、もちろん運転したり走ったりというものもありますが、UX/UIといったHMIを通じてもたらされる体験の比重が多くなります。

このような体験は、車両の走りや乗り心地、外観デザインといったブランド価値と同等なものになります。ボタンやノブだけでなく、タッチ操作、アイコン、画面デザイン、コックピットデザインは、今以上にブランドが提供する価値と一体化していきます。また、HMIについては、従来以上にPhygital(Physical + Digital)UIによるUXの実現が重要となってきます。

――スマホアプリやWebサービスのように、車もUX/UIやサービス機能の設計から入るようになるということですか。

車両の場合、アプリよりハードウェアに依存する部分があるのでまったく同じにはならないでしょう。設計の段階にブランド戦略を組み込むことはすでに行われていると思います。これからは、ブランドを体現するようなユーザー体験を組み込む必要があります。そして、前述したレイヤー化されたアーキテクチャで、ハードとソフトを統合的に開発していくことになると思います。

統合的に開発するといっても、簡単ではありません。近年のソフトウェアの領域では、2週間といった短い期間で、機能単位で開発・リリース・インテグレーションしていくアジャイル開発が広がっています。一方、従来から行われてきた車両開発はいわゆるウォーターフォール開発が基本です。開発途中段階で複数回設定されている評価会を目指し、段々とハードウェア開発が進んでいきます。この異なるライムラインで進む活動の同期がポイントになります。

ウォータフォールとアジャイルをうまく混在させるには、開発プロセスを大幅に見直す必要があるでしょう。プロセスを見直す際のポイントは、ソフトウェアの伸びしろを邪魔しないようにする視点に立つことです。欧州の進んだOEMは、この視点で組織改革、プロセス改革を行っています。

鵜塚氏が登壇する2月22日開催のオンラインセミナー 「次世代モビリティに求められるHMI・UXUI~最新の考え方、事例、次なる一手~」はこちら。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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