ナノメートルからメートルまで、電磁界をシミュレーション…アンシスHFSS Mesh Fusionのすごさ

Ansys HFSS Mesh Fusion発表
Ansys HFSS Mesh Fusion発表全 4 枚

電動化、コネクテッド化が進む車両開発において、ノイズ対策やコンポーネント・製品レベルの電磁気のシミュレーションがますます複雑になってきている。ここでの課題のひとつは、デバイスのシミュレーションと製品や利用環境でのシミュレーションが連続していないことだ。

たとえば、ナノメートル単位で電磁気のシミュレーションをしたいシリコンチップと、自動車のキャビンとでは、連続した行列演算が難しい。チップ内の配線やプリント基板上の配線の電流がどんなノイズを発生させ他の基板にどう影響を与えるか、さらには車両内の他のECU、キャビン内の人体にどう影響を与えるのか。

シミュレーションの世界では、対象となる空間をメッシュと呼ばれる小さい空間に区切ってメッシュごとのモデルを計算する。もしチップの動作から製品の利用環境までの電磁界シミュレーションをしようとしたら、いちばん小さいナノメートル単位のメッシュとメートル単位のメッシュを混在させる必要がある。

このような混在かつ連続メッシュでもシミュレーターの演算能力でこなすことは可能だ。実際そのようなシミュレーションを行うこともある。しかし、細かいメッシュと粗いメッシュを混在させる場合、許容量の関係で複雑な形状のメッシュの境界に実物とは違う穴や交差が生じやすい。補正は手作業で行う必要があり、メッシュの切り方で初心者と熟練の差が出やすくなる。

アンシス・ジャパンが発表した「Ansys HFSS 2021 R1」は、同社の電磁界シミュレーターHFSS(High Frequency Structure Simulator)に、レンジが異なるメッシュの自動生成と、それを連続処理するアルゴリズムを組み合わせた「Mesh Fusion」が追加された。

Mesh Fusionは、チップ、基板、空間といったレンジごとに別々にメッシュ生成を自動的に行う。これによって、大きさが異なるメッシュ生成に必要な人力作業を減らす。このままではチップや基板などの境界面のメッシュがつながらない。同じソルバーが使えないので、接続先のソルバーが扱えるように計算によって値を収束させる。このアルゴリズム「New FEM Solver」も新開発されたものだ。

境界面での計算時間は増えるが、手作業でのメッシュ生成や試行錯誤がなくなり、トータルの設計時間は短縮される可能性がある。そもそもメッシュの解像度の差が大きすぎる場合、シミュレーションができないか、片方を疑似的なモデルに置き換えるしかない。いずれにせよ厳密なシミュレーションとはならない。

レンジごとにメッシュ生成が分離できるので、分業や並列処理も可能になる。分業の応用例としては、部品メーカーが納入部品単位のメッシュやモデルデータを作り、製品メーカーはそれを利用して基板レベルのシミュレーション、空間レベルのシミュレーションが可能になる。

電動化車両には高周波スイッチング回路で構成されるインバーターが不可欠である。充電設備やケーブルには、ペースメーカー向けに電磁波の既定がある。コネクテッド機能には通信モジュールやタッチディスプレイも必須装備だ。ADAS機能や自動運転ではコンポーネントごとのECUも干渉せずに動作する必要がある。

これらは、チップレベルから実環境までシミュレーションする技術が求められる領域だ。

《中尾真二》

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