新連載[音質向上 ワンポイント]デッドニングを追加!

ドアスピーカーの取り付け例。ドアトリム内ではデッドニングが施行されている(製作ショップ:クァンタム<茨城県>)。
ドアスピーカーの取り付け例。ドアトリム内ではデッドニングが施行されている(製作ショップ:クァンタム<茨城県>)。全 1 枚

「システムの音を今よりもっと良くしたい」そう考えたときの“ワンポイント・テクニック”(主要ユニットの交換以外の方法)を、全国の実力カーオーディオ・プロショップに訊き、紹介している。今回は、“デッドニング”を追加していくことの面白さについて解説する。

講師役を務めてくれたのは茨城県守谷市の有名店、“クァンタム”の土屋さんだ。さて、段階を踏んで“デッドニング”を煮詰めていくという音質アップ術の楽しさ、そしてその実践方法とは…。

徐々に“デッドニング”を進化させると、都度音が良くなる感動を味わえる!

“デッドニング”は奥深い。ゆえに各カーオーディオ・プロショップごとで考え方ややり方に異なる点が多々ある。さて、“クァンタム”ではどのように“デッドニング”を実践しているのだろうか。まずは、“デッドニング”を段階的に進めていくというアプローチがアリなのかナシなのか、そこのところから訊いてみた。

「アリだと思います。当店ではむしろ、段階を踏むことの方を推奨しています。なぜなら“デッドニング”は臨機応変に行うべきですし、どこまでやるべきなのかもケースバイケースです。使用するスピーカーやシステムレイアウトによって、さらには車種によってもそしてお客様のお好みや価値観によっても変わってきます。段階を踏んで進めていけば、そのときどきで必要なことだけを行えますし、どこまでやれば良いのかの判断もしやすいです。

例えば、1stステップの作業をやった段階で『もうこれで十分』と思える場合もあるわけです。そうであればそれ以上はやらなくて良いと思います。そうすればコストも掛かりませんし。実際、当店でスピーカー交換をされるお客様の約半数の方は、1stステップだけで満足されます。

そして必要性を感じたときに、次のステップへと進めば良いのではないでしょうか。なお、1stステップだけでも確実な効果が得られますが、次のメニューを施せば一層の音質アップが果たせます。そうしてさらに段階を踏んでいけば、その度に音が良くなる感動を味わえます。

なお当店では、工程を6つに分けています。で、まず1stステップでは『アウターパネル(ドアの外側の鉄板)の制振と吸音』を行います。スピーカーの背圧(スピーカーの裏側から放出される音エネルギー)を制御するために吸音材と制振材を貼り、さらに鉄板の薄いところと弱いところにも制振材を張っていきます」

敢えて全面貼りはせず、振動エネルギーを車外に放出!

「アウターパネルから行う理由は主には3つあります。1つは、遠いところから作業をしたいからです。先に手前を施行してしまうと、後から奥側へアクセスしにくくなってしまいます。2つ目の理由は、問題が大きい場所への対処を優先したいからです。スピーカーの背圧は音を濁す大きな要因の1つですから、それへの対策から手を付けるべきだと考えています。3つ目は、外部からのノイズの流入も減らせるからです。車内の静粛性が上がり、リスニングコンディションの向上も果たせます。

なお、制振材を薄いところと弱いところだけに貼るのは、共振周波数の範囲を狭めたいからです。そうすることで制振を効率的に行えるんです。また、制振材を貼らない場所も敢えて残します。その部分から振動エネルギーを車外に放出できるからです。ガチガチに制振しても振動エネルギーをゼロにすることは難しく、抑えきれなかったエネルギーはフロアやピラーやルーフに伝わってしまいます。それよりも車外に放出した方が総合的に良い結果が得られます。作業効率的にも有利ですし。

続いて2ndステップでは、インナーパネルのスピーカー周辺と薄く弱い箇所への制振を行います。

スピーカー周りへの制振を行う目的は、スピーカーの振動板が動くことで発生する振動を鉄板に伝わりにくくするためです。ただし、スピーカーとインナーバッフルとの間、そしてインナーバッフルと鉄板との間には何も入れません。硬いもの同士が接する箇所では、それらが密着しているべきです。ホーム用のスピーカーでも、スピーカーユニットとバッフル面との間に何かが挟まれたりはしていません。制振材は、インナーバッフルと鉄板との接点の周辺に手厚く貼り込みます。いわば“防波堤”を作るようなイメージです。こうすることで効率良く振動を抑制できるんです」

“流れ”を作り、不要な振動エネルギーをスムーズに逃がす!

「そして3rdステップではサービスホールを埋めます。なおインナーパネルには、アウターパネルに貼った制振材よりも重く硬い部材を使用します。なぜかと言うと、振動エネルギーの“流れ”を作りたいからです。振動エネルギーは硬く重い箇所から柔らかく軽い箇所へと伝わっていきます。インナーパネルを重く硬くすれば、振動エネルギーはアウターパネルに流れスムーズに車外へと逃げていきます。

その後は、内張りパネルのコンディションを整えていきます。4thステップではインナーパネルと内張りパネルとの接点周辺の制振を行い、5thステップでは内張りパネルの弱く薄い部分への制振を行い、そして6thステップとしてインナーパネルと内張りパネルとの間の空気の流動を止める作業を施します。ここでは吸音材を使用します。

なおインナーパネルとドアトリムとの接点においても、両者が直に接する部分には何も挟みません。ここでも接点部分は密着させておき、その周辺を固めることで効率的に制振します。

ちなみに、すべての工程はこの順序で行わなければいけないと考えています。ドアトリムへの施行もそれ以前の工程を終えたからこそ必要となる作業です。また空間の空気の流動を止める施行も、最後の最後で大丈夫です。なおスピーカーを“アウター化”する場合には、この作業は不要になります。段階を踏んでいけば、後から不要になることをやらずに済んだりもするわけです。

“デッドニング”では、状況に応じて適材適所に行うことと、部材を適量使うことが重要だと考えています。そして段階を踏んでいくことで、カーオーディオをより深く楽しめると思います。お近くでしたらぜひお気軽にご来店ください。“デッドニング”についても詳しくご説明させていただきます。お待ちしています」

達人直伝! 音質向上のためのワンポイント・テクニック! Part2「デッドニングを追加!」

《太田祥三》

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