スズキ 鈴木修会長「歩け、歩け、地球上に市場は無限にある」…相談役に退く

スズキの鈴木修会長
スズキの鈴木修会長全 3 枚

スズキの鈴木修会長(91)がついに会長を退き、相談役に就任することになった。修会長は1978年の社長就任以来40年以上にわたって、スズキの経営トップを務め、「生涯現役」と常々語っていた。それだけに今回の退任に鈴木俊宏社長をはじめ、驚く人も少なくない。

「100周年の峠を越えたこともあり、決断した。中期経営計画では電動化とリコール対策に絞ってやっていくことも本日の取締役会で承認され、納得してやめさせていただく。今後は現役の役員が気軽に相談できるように、相談役として全うしたい」

修会長は2月24日に開催された記者会見で、会長を退任する理由についてこう述べた。その口調はいつものユーモアたっぷりのものと違って、非常に弱々しかった。そのため、健康に問題があるのかと心配する向きもあったが、修会長は「昨年、ゴルフを47回もした。身体はピンピンしている」と否定した。

修会長については、今さら説明するまでもないが、これまでに数々の功績を残してきた。「カンピューター」と自ら名づけた独特の勘を生かし、大手自動車メーカーの間隙を突いて会社を3兆円企業にまで発展させてきた。その口癖は「うちは中小企業」で、業界の話になると、「それは大手さんに聞いてください」と煙に巻くことが少なくなかった。

やはり最大の功績はインド市場での成功と言っていいだろう。なにしろ同国ではシェア50%を誇り、圧倒的な強さを発揮しているからだ。そのインド市場の成功について、修会長は「行き当たりばったりでインドを発見し、インドに上陸したらスムーズに進んだ。私に先見の明はありませんよ」と謙遜する。

もちろん、インド政府といろいろなやりとりをして、いまの地位を築いてきたのは言うまでもない。「社長へのアドバイスとしては、歩け、歩け、行動力で発見しろ。地球上に市場は無限になる」と敏宏社長にエールを送る。

その俊宏社長は同日、2021年4月~26年3月までの5カ年の中期経営計画を発表した。その数値目標は、連結売上高が4兆8000億円(20年3月期実績3兆4884億円)、営業利益率5.5%(同6.2%)、四輪車の世界販売370万台(同285万台)、二輪車の世界販売200万台(同171万台)。特に目をひくのは研究開発投資で、1兆円を5年間に使うという。“ケチケチ経営”が持ち味のスズキとしては、大盤振る舞いと言っていいだろう。

「世界的なカーボンニュートラルの流れの中で、電動化技術の確立には一刻の猶予もない。今後5年間で、2025年以降もスズキが生き残るために、電動化技術を集中的に開発していく」と俊宏社長は強調。ストロングハイブリッドやEVの自社開発などにほぼ研究開発費の全額を投入する姿勢を示し、必要に応じて提携するトヨタ自動車の技術を活用する方針だ。

「会長自身は生涯現役だと言っていたので、このようなタイミングで退任することになるとは思っても見なかった。これからはまず中期経営計画をやり切る。軽自動車を守り抜くためにしっかりやっていくことが、私のやるべきことだと思っている。目標に達成すべく役員などと議論しながら会長に後ろ指を指されないように頑張っていきたい」と俊宏社長は話す。

すると、すぐに修会長が「中期経営計画を見続け、チェックしていく」と付け加えた。そして、会見の最後に「仕事が生き甲斐だ。人間は仕事を放棄したら死んでしまう。みなさんも仕事を続けてください。バイバイ」と言って右手を振って見せた。

《山田清志》

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