1.車載コンテンツの位置づけ
前回の記事では「自動車DXの萌芽」と題して、自動車に関連する要素技術の進化から、車内空間での体験価値を醸成するサービスが高度化する可能性を指摘した。特に車載HMI機器やバイタルセンシングの進化が重要で、自動車と搭乗者の関係性が今後必ず大きく変わるという点について述べた。
一方で、車載HMIやバイタルセンサがあるだけでは体験価値にならない。スマホだけでは使い勝手が限られるのと同様で、そこで様々なアプリケーションが活用可能になって初めて大きな価値が生まれる。自動車でも、高機能な電子機器やセンサの機能を活かすソフトウェアである車載コンテンツが必要だ。
今回は、車載コンテンツやコンテンツを用いたサービスの現状について整理したうえで、今後の課題を抽出することにしたい。なお、ここで言う車載コンテンツとは、自動車に搭載されているディスプレイやオーディオ機器などのHMI機器を通じて、映像・画像、光彩、音声・音楽、芳香、振動、空気流やそれらの組み合わせによって、搭乗者の五感に刺激を与えるものを指す。車内空間での体験は、このようなコンテンツを群制御するサービスによって大きく変わると想定される。
2.現状の車載コンテンツ事例
車載コンテンツを実現するには、高度なHMI機器や、ソフトウェアを遠隔でアップデートする通信環境が必要となる。そのため現状では必然的にプレミアムブランドでの動きが中心で、特に米国のTESLAや中国のNIOといった新興ブランド、そして欧州のMercedesなどのブランドが中心となる。この節では、これらのブランドでの現状の車載コンテンツやサービスの事例を確認したい。