「つなげる」サービスでカーメンテナンス業界の改革を進める…カーフロンティア 広瀬洋平社長【インタビュー】

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カーフロンティア 広瀬洋平社長
カーフロンティア 広瀬洋平社長全 11 枚

カーフロンティアは、カーメンテナンスサービスを提供する店舗とカーメンテナンスを行いたいドライバーをオンラインで「つなげる」ことで、それぞれの利用者がWin-Winの関係性を築くビジネスモデルを提案してきた企業だ。

同社は、2015年に業務用カーケア用品の仕入れサイト「AnotherRoot(アナザールート)」を、翌2016年にタイヤ購入&取付予約サービスの「TIREHOOD(タイヤフッド)」を開設し、本格的にスタート。さらに、2017年には、カーメンテナンス予約サービス「timy(タイミー)」を開設するなど、サービスを提供する側と利用者をつなぐ様々な提案が話題を呼んだ。

2020年1月には、現社長の広瀬洋平氏が就任。世の中の仕組みが急速なスピードで変化するなか挑み続けてきた同社の現況について、聞く機会を得た。

AIによる電話予約対応実用化へ

----:社長に就任されて1年が経過しましたが、社内体制の改革など、手応えはいかがでしょうか?

広瀬洋平社長(以下敬称略):この一年は、タイヤEC事業の分社化が大きなトピックでしたが、それ以外にもカーメンテナンス予約サービス「timy」のアプリ化やAIを活用した電話予約対応の実証実験などを進めてきました。

また、社内においては意思決定のスピードを速くするための取り組みにも力を入れています。決定するのは社長である私ですから、今起きていることを把握することが重要です。経営に近い立場になるほど、基本的な質問をしがちですし、現場の人が何度も同じ説明を繰り返すことはタイムロスにつながります。私自らがゲリラ的に色々な部門の打ち合わせに参加することで、日々何が行われていて、何に困っているのか、これから何をしようとしているか、全体像を把握できるようにしました。その場で意見や質問はしませんが、どのタイミングでどのような話が来るかを予測できるので、スピーディーな意思決定につながります。

----:現場主義を大切にされているのですね。新規事業の取り組みはありますか?

広瀬:2020年10月からの約4ヶ月間、カーメンテナンス予約サービス「timy」において、AI(人工知能)を活用した電話予約対応の実証実験を行いました。これまではWEB予約機能の提供でカーメンテナンス業界のデジタル化を進めてきました。しかし、実際にガソリンスタンドや整備工場などの現場を見ると、未だに電話予約が多いのが現状です。店舗、ドライバー、双方にとって本当に価値のあるサービスを提供することを目指すのであれば、電話予約の自動化にも踏み出すべきだと考え、取り組みを行いました。

----:それはどのようなシステムなのですか?

広瀬:お客様からかかってきたカーメンテナンス予約の電話にAIが対応し、予約情報を「PITLOCK(ピットロック)」という整備作業管理に対応したカーメンテナンス事業者向けのWEB予約台帳へと、落とし込むサービスです。

実証実験では、手洗い洗車のサービスに特化して行いました。実験開始当初はマニアックな車種名などをAIが認識できないこともありましたが、1ヶ月、2ヶ月と時間が経過するとAIの学習が進み、驚くほどスムーズに聞き取るようになりました。

----:音声認識と組み合わせたAIは、最近のクルマにもカーナビや機能設定に活用され始めていますね。

広瀬:このサービスは2021年の春にガソリンスタンドや整備工場に対し、本格的に販売していく予定です。現場では、電話に出なくても予約が入っていく点が好評でしたが、洗車以外にもコーティングやオイル交換などの作業に対応して欲しいという要望も出てきました。今後は、そういった現場の声への対応も視野に入れ、取り組んでいきます。

----:低燃費なクルマが増えた今、ガソリンスタンドが燃料を売るだけで利益を得られない時代だと考えると、お店と利用者をつなぐことが求められていきますね。

広瀬:電話で受けた内容をAIが対応し、WEB予約台帳「PITLOCK」に予約内容を反映する。その間、人の手は掛かっていません。ガソリンスタンドや整備工場は一定程度、電話がかかってくる環境です。デジタル化するためには、少しでも人の手が予約管理から離れることが必要だと思います。

----:ガソリンスタンドでいうと最近はセルフが多いですし、人手が少ない様子も見受けられます。電話に出る負担が減れば、お客様へのサービスや作業に集中できそうですね。

「AnotherRoot」「timy」も大きく成長

----:カーフロンティアは、「つなげる」ことに重きを置いてきましたが、そうした事業は近年、どのように進化や変化をしているのでしょうか?

広瀬:カーケア用品の仕入れと店舗の運営を支援するサービスとして、2015年に「AnotherRoot」という事業者向けのECサイトを開設しました。5年が経過した今、加盟店は約1万4000店舗に拡がっています。

----:AnotherRootは、豊富な商材をもつ、いわゆるインターネット上の問屋さんのような仕組みですね。

広瀬:これまで、ガソリンスタンドや整備業者のみなさんは、地域ごとの部品商から仕入れを行うことが主流で、価格交渉をしたり、在庫を持つ必要がありました。その点、ECサイトなら、数を扱うバーゲニングパワーもあって、色々な方々のメリットにつながっています。

----:小規模な事業者だと仕入れ金額で不利になりやすいですし、交渉するのに労力を費やすことも。皆がまとまることで安価に仕入れることが出来れば、事業者が利益を得た上で、ユーザーに安価でサービスを提供することに結び付きますね。ちなみに、会員になるのに費用は必要なのでしょうか?

広瀬:会費はかかりません。「現場の役に立ちたい」という思いからスタートしているので、加盟してもらうことでお金をいただくのではなく、利用していただいた時に我々に収益が生まれる仕組みになっています。

----:カーケアサービスの予約サイト「timy」も現場とユーザーをつなぐ画期的なサービスですね。

広瀬:コロナ禍の今、密を避けたいという理由もあって、ガソリンスタンドや整備工場の作業を予約することが浸透し始めています。予約制は待ち時間を減らせるメリットもありますし、予約とWEBは相性が良く、timyの予約は2020年12月で前年比4倍以上に増えました。対応している店舗数が約4700店に増えてきていることもありますが、WEB予約のニーズが高まった結果だと受け止めています。そうした意味では、世の中の変化を含めてデジタル化が進んだ印象です。

----:timyのサイトを見ると、カーメンテナンスのサービスがメニューのように並んでいて、女性にも分かりやすく、一歩踏み出せない不安を払拭してくれそうです。

広瀬:timyの利用者は男女比が5:5です。女性男性問わず、皆さんに親しみを感じていただけるようなデザインを用いたり、生活の中に落とし込まれている画像を使ったりするなど、工夫しています。作業については、具体的な内容や所要時間の目安を掲載したり、お店によって呼び方が異なる作業用語は使わず一般的な表現にするなど、誰にとっても使いやすいサービスであることを心掛けています。

将来的にはカーメンテナンス拠点全体のつながりを強化

----:今後の取り組みやビジョンについて、教えてください。

広瀬:カーメンテナンス業界は他とは違う側面が多いですから、改革できる要素はまだまだあります。今後、クルマをネットで買う時代が来れば、メンテナンスの拠点が必要です。ガソリンスタンドや整備工場が日常的なメンテナンスの拠点を担える可能性もある。皆が一緒になって、それぞれが機能分担するのも将来の姿かもしれません。

今私たちは、ガソリンスタンドや整備工場などをデジタルでつないでいますが、オートバックスのようなカー用品店、ディーラーやタイヤショップなども含めて、カーメンテナンス拠点全体のつながりを強化していくのが将来的な目標です。そのような目標を実現する上で、大きなプラットフォーマーとの接点は重要だと考えています。

サービスの展開や拡張も自社だけではスピード感も遅くなりますので、他社との提携を積極的に行っていきます。来年度中にはいくつかの取り組みが実現するように交渉を進めています。

----:三菱商事グループとしての強みも、その中で生かされていくのでしょうか?

広瀬:私たちの母体は三菱商事エネルギーですが、商社はものづくりの会社ではありません。その点、カーフロンティアはアイディアを出し、実際に作ることができる会社です。しかし、できあがったサービスをどう連携すれば大きくなっていくのか、現場にどうやって落とし込んだらいいか、という作った先のことは商社のDNAが生かせる領域です。彼らは現場目線で意見が言えるので、そうした人材とうまく協業していきたいですね。基盤は築いてきたので、2021年度は三菱商事エネルギーとも密に連携しながら商社機能を発揮することで、拡がるスピードを一気に加速させたいと思っています。

カーフロンティア 広瀬洋平社長とモータージャーナリスト 藤島知子氏カーフロンティア 広瀬洋平社長とモータージャーナリスト 藤島知子氏

デジタルでつながることは、どこか無味乾燥で自分たちにとって馴染みのないものではないかと受け止める人がいるかもしれない。しかし、広瀬社長の言葉からは、現場で起こっている課題に真摯に向き合い、ストレスなく向き合えるサービスに取り組もうとしている様子が伝わってくる。

従来型の仕組みが新しい時代に移り変わるとき、何かを諦めなければならないと思っていたが、シームレスなサービスを駆使しながら、様々な障壁を取り払うことで、皆に有益な解決策を提供できることを示してくれたと思う。不便であることほど、新たなビジネスチャンスにつながるのではないかという希望を持たせてくれた。


広瀬洋平:カーフロンティア代表取締役社長
1971年生まれ、埼玉県出身。成蹊大学経済学部卒。1994年三菱商事石油(現三菱商事エネルギー)に入社。三菱商事・石油事業本部石油製品部 総括マネージャーを経て、2018年三菱商事エネルギー・経営企画部長に就任。2020年1月より現職。

カーフロンティアの詳細はこちら

《藤島知子》

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