年末から年始にかけ、国内においてマイクロEVが徐々に盛り上がり始めています。昨年12月25日にはトヨタ自動車が法人ユーザーや自治体などを対象にしたマイクロEV「C+pod(シーポッド)」の限定販売を開始しました(図1)。また2月16日には、出光興産とタジマモーターが本年4月に「株式会社出光タジマEV」を設立し、マイクロEVを核とした次世代モビリティサービスの開発と提供を開始することを発表しました(図2)。


世界では新型コロナウイルスの感染拡大などによって環境問題が改めてクローズアップされ、第5次とも呼べる新たなEVブームが到来しています(図3)。現在のEVブームをけん引しているのはテスラ モデル3、VW ID.3やID.4、ポルシェ タイカン、日産 リーフなどの乗用車であり、多くが大手自動車メーカーのものです。しかし、バイク以上乗用車以下の大きさであるマイクロEVの分野は、乗用車と比べて参入障壁が低いことから多様性に富む様々なクルマが登場してきました。歴史も含めて代表的なものをご紹介したいと思います。

かつての名車をEVにしたイタリアのMicrolino
最初にご紹介したいのがイタリアのマイクロEV “Microlino”です。まずは次の動画をご覧ください。
動画を見ていただければおわかりだと思いますが、何と言ってもこのクルマの大きな特徴は前面がドアになっていてそこから運転席に乗り込む構造になっていることです。この構造は1953年にイタリアの自動車メーカーのイソが開発したイセッタというマイクロカーが由来となっています。イセッタはBMWなどでもライセンスされた名車で、今でも根強いファンが存在します(図4)。

ガソリン車としてのイセッタは衝突安全などの規制強化等の理由もあり随分と前に市場から消えてしまいましたが、それをマイクロEVとして復刻させたのがMicrolinoです(図5)。2016年にジュネーブモーターショーに初登場し2018年から量産され、ヨーロッパでは12,000ユーロ~(約155万円~)で販売されています。航続距離はバッテリーの搭載量によって125kmと200kmの2種類から選ぶことができます。

ユニークなマイクロEVを誕生させたヨーロッパのL6e、L7e車両カテゴリー
ヨーロッパではスクーター以上、乗用車未満のマイクロEVとしてL6eとL7eという2つの車両カテゴリーが設定されており、これらの車両カテゴリーでは衝突安全に関する基準が設定されていないことからユニークなマイクロEVが登場しています。市場から消えたイセッタをマイクロEVの形で復活させたMicrolinoもL7e車両カテゴリーに属しています。また、L6eの場合は時速45km以下、最大モーター出力4kWなどの制約が掛かりますが、ヨーロッパ内の多くの国において中学生・高校生以上の年齢であれば免許なしでも運転することができます。これらの国では日本でいう原付免許相当の講習が学校で義務付けられていますので、L6eは原付免許があれば運転できるマイクロEVということになります(図6)。

L6e、L7eの車両カテゴリーを代表するクルマが、2012年にルノーが発売を開始した2人乗りのマイクロEVであるTwizyです(図7)。発売当初、TwizyにはL6e版である最高時速45kmのタイプとL7e版である最高時速80kmのタイプが提供されていました。現在はL7e版のみが販売されています。TwizyのL7e版は日本国内にも導入され、日産ニューモビリティコンセプトという名称で日産自動車がカーシェアリングなどを目的に提供しています。2020年4月に公表されたルノーの資料によるとTwizyは全世界で通算29,118台販売されたとのことですので、マイクロEVの分野ではかなりのヒット商品であったことが伺えます。
参考:日産自動車ウェブサイトhttps://www.nissan-global.com/JP/ZEROEMISSION/APPROACH/NEWMOBILITYCONCEPT/ルノー"UNIVERSAL REGISTRATION DOCUMENT 2019"https://group.renault.com/wp-content/uploads/2020/04/urd_2019_-3-avril_14h.pdf
