エンジンが“深化”し成熟度が増した…日産『GT-R NISMO』2022年モデル

日産『GT-R NISMO』2022年モデル
日産『GT-R NISMO』2022年モデル全 19 枚

日産自動車は4月14日、『GT-R NISMO』2022年モデルと「GT-R NISMO Special edition」2022年モデルを先行公開した。両モデルの価格発表は本年の8月、発売は10月を予定している。今回の発表にともない、オンライン発表会も開催された。

発表会ではまずチーフ・プロダクト・スペシャリストの田村宏志氏が登壇し、GT-R NISMO開発についての思いなどを述べた。

「GT-Rは究極のドライビングプレジャーを追求してきた。この追求という言葉が大事で、“終わりなき深化”という気持ちを日産自動車として皆さまに伝えていきたい。本当に些細なこと、たとえばこんな部分の性能を上げたいとか、こんなデザインをしてみたいなど、そういったことをひとつひとつ紡いでいく。仲間とともに語り合いそれを伝えていくという、日産自動車の姿をGT-Rに託して進めてきた」

次にチーフ・ビークル・エンジニアの川口隆志氏、グローバルデザイン本部主管の森田充儀氏も登壇し、田村氏と一緒にGT-Rについての開発秘話を語った。まず森田氏がカラーリングについて説明。

「ボディカラーにNISMO専用で新色の『NISMOステルスグレー』を設定した。NISMOらしい、GT-Rらしい色はなんだろうと考えたとき、この車の生まれたバッググラウンド、レーシングフィールドに立ち返って、“R”の意味をサーキットに求めた。グレーはサーキットの路面の色。ただ風景に馴染んでしまうのではなく、グレーだけど存在感があるものを目指した。サーキットの路面より青く、空の色よりはグレーでというイメージになっている。またパールやメタリックなどを使わず、ソリッドカラーにした。これは無駄な装飾を排して研ぎ澄ます、“引いていくデザイン”という考え方だ」日産『GT-R NISMO』2022年モデル日産『GT-R NISMO』2022年モデル

続いて森田氏は、実車を前に見てもらいたいというポイントも解説した。

「今回のデザインでは、際立つ明度を出すのに苦労した。フェンダーのキャラクターラインより上は空のスカイトーンを写しこむ。エッジから下の部分は地面のリフレクションを映し出す。これら2面が見せるコントラストによって、車のシャープさやダイナミズムを表現している。車トータルとしてはソリッドで塊感のあるイメージに注力した。NISMOの象徴でもあるレッドアクセントを、今回はホイールにも入れた。ボンネットはカーボン地をそのまま出して見た目のインパクトを出して、軽量化にも貢献している」

このカーボンボンネットについて田村氏から補足があった。田村氏によると、過去に発売した「R34スカイラインGT-R」に、スーパー耐久レースに出場するためのベース車両としてカーボンボンネット採用モデルが登場している。

「カーボンボンネットはこのモデルで初めて登場したが、カーボンだということをしっかり見せていこうということで、塗装をしない状態で発売されたとのこと。重量については通常モデルとの差が、たった100グラムほど軽いだけだったが、たとえそれでもレースにかける思いを人々に届けたいということで採用した」

続いて川口氏が、2022年型で進化した部分を説明した。

「技術的にポテンシャルを上げることをコンセプトに開発を進めた。2007年に発売されたGT-Rは480馬力だが、このモデルは600馬力ある。吸気、燃焼効率を追求し、パーツにある段差もミクロン単位で調整するなど、愚直に開発を進めて来た結果、2007年モデルに比べて燃費も上がって出力も上がっている。今年のモデルはエンジンを“深化”させることに注力した。ピストンリング、バルブスプリング、コンロッド、クランクシャフトなどの精度を上げ、フリクションを下げることを第一に考え開発を続けた。精度のばらつきを半減させることで性能アップを図っている」

田村氏によると、今回のモデルを開発するにあたり「スカイラインGT-R VスペックII Nür」(R34)をイメージしたとのこと。“ニュル”に搭載されたエンジンは、パーツのばらつきをグラム単位で管理していた。現在のGT-Rでは今までも、十分に精度の高いパーツが組み込まれていたが、さらになにをすればいいかと考えたとき、グラム単位で精度を上げるような、チューニング業界で取り組んでいるような、“ポテンシャルを上げる”ということが、GT-Rの生き様ではないかと考えたという。日産『GT-R NISMO』2022年モデル日産『GT-R NISMO』2022年モデル

さらに川口氏は新型で心配な点についても語った。

「エンジンのチューニングを行ったことで、エンジンの振動が少なくなったとか、エンジンがスムーズに回るといった進化をしているが、タイヤからの振動や入力のほうが大きいので、ユーザーにはエンジンの進化がわかりづらいかもしれない。さらにエンジンの内部のパーツの進化なので、見た目ではなにが変わったかわからないというジレンマもある。その代わりではないが、エンジンに貼り付けられる『匠』のネームプレートは、文字を赤い色にした特別なものに変更した」

発表会の最後に田村氏はGT-R NISMO 2022年モデルについて、次のように締めくくった。

「GT-Rに対してだけではなく、日産自動車にかける思い、お客様に対する思いなど、湧き上がるものはいろいろある。自動車は見るだけではわからない部分もある。百聞は一見にしかずというが、一度機会を作っていただき、どこかで乗って、GT-Rの息吹を感じて欲しい」日産チーフ・プロダクト・スペシャリストの田村宏志氏日産チーフ・プロダクト・スペシャリストの田村宏志氏

《関口敬文》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ショッピングセンターに320台の名車・旧車が大集結…第5回昭和平成オールドカー展示会
  2. 『V』クラスより上級のミニバンか? メルセデスベンツが2026年に『VLE』『VLS』導入へ…上海モーターショー2025
  3. 「通勤とか買い物にちょうどよさそう」オシャレ系特定小型原付『ウォンキー』にSNSでは反響
  4. 日産がエルグランドなど新型4車種投入へ…NISSAN START AGAIN
  5. 【VW ゴルフGTI 新型試乗】自動車を運転することが楽しかった時代に引き戻される…中村孝仁
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 東レ、偏光サングラスでの利用を可能にする新たなHUD技術を開発…フロントガラス全面展開も視野に
  2. AI家電を車内に搭載!? 日本導入予定の新型EV『PV5』が大胆なコンセプトカーに
  3. 住友ゴム、タイヤ製造に水素活用…年間1000トンのCO2削減へ
  4. AI導入の現状と未来、開発にどう活かすか? エンジニアの声は?…TE Connectivityの独自リポートから見えてきたもの
  5. トヨタ「GRファクトリー」の意味…モータースポーツのクルマづくりを生産現場で実現【池田直渡の着眼大局】
ランキングをもっと見る