「立てない!曲がれない!」二輪ライターも悲鳴を上げた、立ち乗り水上バイク「スーパージェット」の奥深さとは

ヤマハの新型マリンジェット『SUPERJET(スーパージェット)』に試乗する青木タカオ氏
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ヤマハ発動機の新型マリンジェット試乗会に参加したバイクジャーナリストの筆者(青木タカオ)。スーパーチャージャー付き1.8リットルエンジン搭載の超弩級モンスター『GP1800R SVHO』にまず乗り、その加速力と旋回性の高さには舌を巻くばかりだった。

そして、ヤマハスタッフにもう1台の新作マシンを紹介される。3気筒4ストローク「TR-1エンジン」を搭載する、その名も『SUPERJET(スーパージェット)』だ。

これまで水上バイク(特殊小型船舶免許)の免許取得時とレンタルツーリングでしかマリンジェットに触れた経験がない筆者としては、初めて見る一人乗りスタンドアップモデル。

前後長が極端に短く、シートがない。可倒式ハンドルはどのように使うのだろうかと、わからないことだらけであったが、まさか「乗って走ることすらできない」なんて、水上に出るまでは想いもしなかった。そう、完全にナメていたのだ。

レースを想定した圧倒的な走行性能

ヤマハの新型マリンジェット『SUPERJET(スーパージェット)』ヤマハの新型マリンジェット『SUPERJET(スーパージェット)』
“スーパージェット”。名前からして過激なモデルであることを示しているが、初代「SUPERJET650」が登場したのは1989年10月。以来、レースやフリースタイル、サーフライドで活躍してきたが、2019年を最後にラインアップから姿を消していた。今回、満を持してのカムバック、新発売である。

先代は2ストロークエンジンを積んでいたが、小型軽量・高出力・高耐久性に加え、低燃費でかつ環境性能を備えた4ストローク3気筒の1049cc TR-1エンジンを搭載。スロットル開度をデジタル信号化する電子制御式スロットルも採用され、66psだった出力は101.4ps/7300rpmにまで向上した。

コンパクトで軽い新設計のハルは「VaRTM(バータム)」と呼ばれる真空含浸工法を採用。フロントワイド形状を踏襲しつつ、ハル底面に強力なグリップを生むストライプを深く刻み、旋回性能を向上させている。フッドトレイは約20%幅を拡大し、より自由度の高いスタンスが可能になった。

ヤマハの新型マリンジェット『SUPERJET(スーパージェット)』ヤマハの新型マリンジェット『SUPERJET(スーパージェット)』
レースシーンを想定したアルミ製ハンドルポールは、+25/0/−25mmの3段階で長さ調整が可能。競技志向を感じるメーターはシンプルで、フューエルゲージと警告灯、そして最大出力を約80%に抑えビギナーも安心なLモードの設定を確認することができる。

また、ジェットノズルは回転角度を16度から19度のいずれかに調整でき、アグレッシブなターンを選ぶか安定性を求めるか、ライダーのスタイルによりセレクトする。説明を聞いて、だんだんとわかってきた。プロフェッショナルも使う“ガチ”(本気度満点)なレーシングモデルであることが……。

ヤマハの新型マリンジェット『SUPERJET(スーパージェット)』ヤマハの新型マリンジェット『SUPERJET(スーパージェット)』

初心者は立って走るのも難しい!?

乗り込んだ途端に、バランスを失ってひっくりかえるではないか!

これまでに体験したことがあるシートに座って乗るタイプと、まったく違うと言っていいほどの別モノだ。ライディング方法を1から、いやゼロから教わる必要がある。

インストラクターに教えてもらうと、まずは正座かヒザ立ちで乗り、速度が上がってきたらさっと立つとのこと。体幹がしっかりしている人なら、すぐにスタンディング姿勢で走ることができるのかもしれないが、筆者はこれさえできないから恥ずかしくなってくる。

ヤマハの新型マリンジェット『SUPERJET(スーパージェット)』に試乗する青木タカオ氏ヤマハの新型マリンジェット『SUPERJET(スーパージェット)』に試乗する青木タカオ氏
感覚的には一輪車であったり、モーターサイクルで例えるなら、雨が降ってドロドロのマディをいくオフロードバイクのような感覚。アクセルを開けて駆動力を得ていれば転倒しないが、スロットルを戻した途端にバランスを失って転んでしまう。

これに気づいた時に、かろうじてまっすぐ走ることができた。マリンジェットもまた推進力を得ているときは安定するから、スロットルをなるべくワイドオープンし、スタンディング姿勢で積極的にバランスをとって、初めて乗って走れるのだ。

左右のステップは前後に構え、野球で右バッターボックスに入るなら左足が前だという。ヒザをフレキシブルに曲げ、バランスを取り続ける。

ヤマハの新型マリンジェット『SUPERJET(スーパージェット)』に試乗する青木タカオ氏ヤマハの新型マリンジェット『SUPERJET(スーパージェット)』に試乗する青木タカオ氏

モトクロスのコーナリングに似ている

コーナリングはもっと難しい。曲がろうとイン側に荷重した途端、すぐに転覆してしまう。バイクの場合、コーナーの手前でアクセルを閉じて減速するが、それをすると推進力が足りず水面に放り出されてしまうのだ。

推進力がまったく足りていない。直線でも旋回時でも、アクセルをもっと大きく開けなければならないことはアタマでは分かっているが、間近に迫る水面を見ればスピード感がタップリあって怖気づく。

上達に応じて、インストラクターが少しずつアドバイスしてくれる。今度はライディングポジションでの重心が、リヤに寄りすぎていることを指摘してくれた。バイクもそうだ。旋回するにはフロント荷重が欠かせない。ステップをもっと前にし、頭の位置をフロント寄りに移そうと意識すると、だんだんと曲がる感覚がわかってくる。

ヤマハの新型マリンジェット『SUPERJET(スーパージェット)』に試乗する青木タカオ氏ヤマハの新型マリンジェット『SUPERJET(スーパージェット)』に試乗する青木タカオ氏
モーターサイクルでは加減速でメリハリをつけるが、スロットルの開け締めも丁寧かつスムーズな方が良く、筆者のようなビギナーなら一定に保つくらいでもいいのかもしれない。

旋回時はスロットルレバーをよりしっかり引き、イン側へ体ごと倒れる前に推進力で前へ進む。モトクロスでのバンクを使ったコーナリングに少し似ている。繊細で絶妙なスロットルワーク、大胆なボディワークと細やかな荷重移動、これらが大事だ。

もっと上手くなりたい!奥深き魅力がある

『SUPERJET(スーパージェット)』開発ライダーの走り。速度、傾き、コーナリング、すべてが別次元『SUPERJET(スーパージェット)』開発ライダーの走り。速度、傾き、コーナリング、すべてが別次元
ハンドルを握る両腕、不安定な船体の上でバランスを取る下半身、スロットルレバーを引く人差し指、だんだん疲れてフィジカルがもうもたない。まさに全身運動。不慣れだから余計なところに力が入って、体力も筋力も音を上げている。

運動不足の筆者がギブアップすると、インストラクターが「初めての人はスタンディングできない人もいますよ」と慰めてくれる。聞けば、この人こそ開発テストライダー。華麗なライディングには見惚れるばかりだったが、原稿を書いているいま思い出すと、また『SUPERJET』に乗りたくて仕方がない。

ライディングテクニックは奥深く、上達したときの達成感は素晴らしい。エンジンパワーを全身でコントロールしつつ、アグレッシブなライディングを楽しむマリンジェットは、モータースポーツの楽しさと難しさが凝縮されている。インストラクターが見せてくれた豪快なコーナリングを夢見て、また悪戦苦闘してみたい。

ヤマハの新型マリンジェット『SUPERJET(スーパージェット)』に試乗する青木タカオ氏ヤマハの新型マリンジェット『SUPERJET(スーパージェット)』に試乗する青木タカオ氏

青木タカオ|モーターサイクルジャーナリスト
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク関連著書もある。

《青木タカオ》

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