ハンズオフ&アイズオフがもたらす「レベル3」の解放感、ホンダ レジェンド 新型…SIP試乗会

「ホンダセンシング・エリート」のトラフィックジャムパイロットを実行中
「ホンダセンシング・エリート」のトラフィックジャムパイロットを実行中全 11 枚

4月20日と21日の2日間にわたって開催された戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)による自動運転の現在地を知るための試乗会。今回は、世界で初めて自動運転レベル3での型式認定を受けた、新型ホンダ『レジェンド』の、「ホンダセンシング・エリート」の試乗レポートをお届けしたい。

試乗会には自動車メーカーがトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、スバルの4社が参加した。その他、サプライヤーからはコンチネンタルとヴァレオが、自動運転のソフトウェアを開発するベンチャー企業であるティアフォー、金沢大学の計8団体が参加。ダイナミックマップ基盤が作成した高精度マップを使った(スバルを除く)ことによる、その成果を披露した。

法律の改正や、高精度マップなどの提供がレベル3実現へと導いた

ホンダセンシングエリートで注目は、何と言っても自動運転レベル3(条件付き自動運転車/限定領域)において型式指定を取得したことだ。これは「トラフィックジャムパイロット」と呼ばれる機能を指すもので、ホンダセンシングエリートの一部として提供される。

既に何度も繰り返されていることだが、「レベル2」と「レベル3」では責任の所在が大きく違う。レベル2までは責任があくまでドライバーだったが、レベル3ではそれがシステム側へと移る。この実現にあたっては、技術的には可能であっても法的な改正は絶対に必要だったし、さらには車両を誘導する高精度マップも欠かせなかった。

そうした中、昨年4月に国土交通省管轄の道路運送車両法と警察庁管轄の道路交通法が改正されて、自動運転に対して規制を緩和。さらに2016年に設立されていたダイナミックマップ基盤企画が、日本の高速道路を中心とした約3万kmを高精度マップで整備が完了した。これによってレベル3を世に送り出す準備が整った。つまり、レベル3の実現にあたっては、ホンダの技術力とオールジャパンの体制があって初めて可能となったことでもあるのだ。

それを実現するために新型レジェンドに搭載されたセンサーは、これまでの市販車にはなかった充実したものとなっている。高価なLiDARを前後に5基搭載し、ミリ波レーダーも前後に5基、さらにフロントウインドウ上部には短/遠距離用とする単眼カメラ2基の計12基。これらに加え、高精度マップや準天頂衛星「みちびき」を含むGNSSを組み合わせることで自動運転レベル3を実現するに至っている。

それと自動運転化される中で避けて通れないのが「OTA(Over The Air)」だ。今後、自動運転は安全性や機能を高めるためにソフトウェアのアップデートが欠かせない。そこで時間差なくスピーディに対応するためにOTAへの対応が求められるわけだ。そこでホンダは、ラフィックジャムパイロット機能を実装するにあたって、日立アステモ製となる自動運転用制御ユニット(AD ECU)を採用。ここにOTA技術を投入し、ネットワークによってECUのアップデートを可能としているのだ。

前さえ見ていればクルマ任せ!ハンズオフ機能付き「高度車線変更支援機能」

今回の試乗は首都高速上で体験した。まず渋滞追従機能付アダプティブクルーズコントロール(ACC)と車線維持支援システム(LKAS)を作動させた“ハンズオフ高速走行”からとなった。これはレベル2領域の機能であるが、約65km/h~約125km/hの速度域でステアリングから手を離して走行できる“ハンズオフ走行”が可能となるもので、解放感たっぷりのドライブが楽しめるのがポイントだ。

ステアリングにあるメインスイッチを入れてACCとLKASを作動させ、速度が約65km/h以上でシステムがハンズオフ可能と判断するとステアリング、ナビ画面上部、グローブボックスにあるイルミネーションがブルーに光った。これドライバーがは前方を視認するという条件下であれば、手をステアリングから離してもACCで設定した速度に合わせて走行していけるという合図でもある。ハンズオフ走行に入った後の安定感は抜群で、カーブでの曲がり方も自然そのもの。前さえ見ていれば実に快適なドライブとなった。

中でも見逃せないのが世界初のハンズオフ機能付き「高度車線変更支援機能」である。自車より遅い先行車に追いついた場合、システムが追い越しの可否を判断して提案し、自動的に車線変更してくれるのだ。この時、ドライバーはウインカー操作をすることもなく、自動で先行車を追い越して再び元の車線に戻る。まさに自動運転の世界を垣間見せてくれる機能と言っていいだろう。また、追い越しは手動でも行え、その時は1秒ほどウインカーを軽く半押し操作するだけ。その後はハンズオフのまま車線変更を行ってくれる。

ただ、ドライバーの視線はナビ画面のすぐ左にある赤外線カメラによって管理されており、横を向いたりするとすぐにシステムから注意される。センシングはかなり厳しいようで、顔だけ正面を向けて視線を外すことでも前方を向くように注意されてしまった。

長距離移動の疲労を劇的に軽減する! トラフィックジャムパイロット

そしていよいよ“待望”の渋滞に遭遇し、ここからがレベル3の体験がスタートすることとなった。自動運転レベル3を実現するホンダセンシング・エリートのトラフィックジャムパイロットは、高速道路など自動車専用道路上で、渋滞に遭遇して「車速30km/h以下」まで落ちた状態で初めて作動し、以後、車速50km/hまで作動状態が維持されることになっている。つまり、渋滞時にのみ、その機能は体験できるのだ。

最初はどこまで“フリー”としていいか戸惑ったが、ステアリングから手を離し、恐る恐る視線を左方向へ外してみた。しかし、今度はシステムから注意されることはない。次にDVDを再生してみるが、普通に再生でき、それを見続けても何ら注意はされないし、カーナビの設定も自在に行えた。これはハンズオフ走行以外にアイズオフ走行までも可能にしたことを意味する。限定された範囲内とはいえ、従来の“運転支援”から定義上はついに“自動運転”を実現したことになる。

一方で、条件によってはこの機能がキャンセルされることもある。たとえばドライバーが真横を見たり、スマホを見るために視線を下に降ろしてもトラフィックジャムパイロットは一時的にキャンセルされる。また、合流地点に差し掛かって合流車がある場合などでもキャンセルはされるようだ。また、豪雨や降雪などでセンサーが外部の状況を検知できないなどは「条件外」となり、システムがドライバーに運転を代わるよう要求されるという。

残念に思えたのはモニターの画質レベル/画面サイズが今の時代に合っていなかったことだ。画面サイズは8インチと、今となってはコンパクトカークラス並みで、解像度もVGAレベルでしかない。せっかく渋滞にはまってTVやDVDを見ようと思った時、このクォリティでは個人的には満足はできなかった。ましてや、オーディオは自慢の「Krell」が組み合わされているのだ。ここはもう少し気張って欲しかったというのが正直な気持ちだ。

とはいえ、それでも渋滞時での自由さをドライバーに与えたことの意味合いは極めて大きい。ACCとLKASによる125km/hまで可能なハンズオフドライブとの合わせ技によってその効果は絶大。開発スタッフが「チェックのために青森まで東北道を走ってきたけど、ほとんど疲れは感じなかった」と話していたが、今回の体験からその話も納得できる。ホンダセンシング・エリートによって長距離移動の疲労を劇的に軽減してくれることは間違いないだろう。

《会田肇》

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