ウェットでも“みずみずしい”接地感、誰もが安心してツーリングを楽しめる ブリヂストン「BATTLAX SPORT TOURING T32」とは?

ブリヂストン「BATTLAX SPORT TOURING T32」/ Kawasaki 『Z900RS』(テスト車両)
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ブリヂストンより今春発売されたスポーツツーリング用タイヤの新作、「BATTLAX SPORT TOURING T32」を試乗。その実力を検証してみた。

「BATTLAX」というブランドだが、1983年に誕生して以来、ツーリングからスポーツ、レースまで幅広いカテゴリーで展開してきたブリヂストンの2輪車用タイヤである。バイクの性能をフルに引き出すための技術革新を続け、多くの新車装着タイヤ(OEタイヤ)として2輪メーカーと共に開発してきた実績がある。

また、モータースポーツでも国内外の様々なカテゴリをサポートしており、現在はFIMロードレース世界耐久選手権(EWC)を開発の舞台としている。レース環境が刻一刻と変化する中で、安全と速さがも求められるレースで培われた技術とノウハウがストリート用タイヤにも惜しみなく注がれている。

水を切り裂く“パルスグルーブ”とは?

ブリヂストン「BATTLAX SPORT TOURING T32」ブリヂストン「BATTLAX SPORT TOURING T32」

今回デビューしたT32は従来のT31の後継モデルとなるが、ほぼ全ての性能面で全方位的に進化しているのが特徴だ。特に強調したいのが2つの要素、ウェット性能の向上と接地性の向上である。

まず、ウェット性能については、「BATTLAX」初のパルスグルーブを採用することで均一な水の流れを実現。排水性を向上し、ウェット路面でのグリップ性能を確保。急な天候変化でも高い安全性と安心感のあるハンドリングを実現している。

ブリヂストン「BATTLAX SPORT TOURING T32」ブリヂストン「BATTLAX SPORT TOURING T32」

パルスグルーブは脈動形状とディフレクターによってグルーブ(タイヤの溝)を流れる水の速度を高めることで、速やかな排水が可能となった。同社のテスト結果では、従来のT31に比べウエットブレーキ性能が向上し制動距離が“7%”短縮(フロントタイヤ)。また、フル加速時の後輪のスピニングが抑えられることで、トラクション性能がアップし加速性能も大幅に高められている。

接地性についても独自のシミュレーション&計測技術である「ULTIMAT EYE」(アルティメット アイ)により、粘着域を増加しつつリヤタイヤの接地面積を“13%”向上させたことで、ドライからウェットまであらゆる路面での接地感を高めるとともに、コーナリング時のグリップ性能も向上。

さらに中・重量車向けに溝配置とパタン剛性を最適化したGTスペックをラインナップ。従来比で“10%”アップの耐摩耗性を実現。走るシーンを選ばないオールラウンドなスポーツツーリング用タイヤの大本命として注目されている。

彫刻刀で刻まれたような、斬新なグルーブに大注目

ブリヂストン「BATTLAX SPORT TOURING T32」ブリヂストン「BATTLAX SPORT TOURING T32」

今回はT32を人気のネオクラシックモデル Kawasaki『Z900RS』に装着して、いろいろなシチュエーションで試乗してみた。まず、見た目が従来モデルのT31と大きく異なる。その印象はパルスグルーブからくるものだ。グルーブの配列そのものは似ているのだがグルーブ形状がまったく異なり、T32はまるで彫刻刀で刻まれたように複雑なデザインになっている。

パルスの言葉どおり、溝は広くなり狭くなり脈を打つように有機的な形状で、さらに溝の中間部分に水切りの役目をする「ディフレクター」を設けることで溝を流れる水の流速を上げる仕組みになっている。そのグルーブを水が流れていく様子を想像すると、まるで渓谷を勢いよく流れる川のようだ。さしずめディフレクターは流れにメリハリを与える中州に当たるかもしれない。

排水性のアップによりタイヤの接地面は安定し、スリップ率も低減する。つまり、ライダーは安心感を得ることができ、実際のところ安全マージンも高まるわけだ。ブリヂストンが得意とするコンピュータを駆使した最新の解析技術もさることながら、自然の摂理の中にヒントを見出したとも思える発想の新しさには脱帽である。

大排気量マシンでも軽快に操れる、安定したグリップで自然なコーナリング

ブリヂストン「BATTLAX SPORT TOURING T32」ブリヂストン「BATTLAX SPORT TOURING T32」

ウェット路面での印象は後ほどとして、まずはドライ路面で走ってみた。街中で走り出した瞬間から、ちゃんと路面をつかんでいる安心感が伝わってくる。4月下旬で路面温度も心配するほどではないにしろ、ウォームアップの必要を感じさせない初期グリップの良さだ。

これは通勤・通学など街乗りメインのライダーにとっては有難い感触だろう。少しペースを上げて幹線道路に合流していくが、ハンドリングは軽やか。レーンチェンジなどで車体を軽くロールしていくときの応答性も自然な感じで、急かされずかといって遅れることもなくライダーの意思どおりに動いてくれる。

ハイグリップタイヤのようなネッチリとした接地感ではないものの、路面離れの良さが逆にメリットとなり軽快感につながっている。大排気量マシンの中では、元々軽快でスポーティなハンドリングを持つZ900RSとの相性もバッチリだ。

高速道路の速度域でも、絶対的な安心感で軽快に走行可能だ高速道路の速度域でも、絶対的な安心感で軽快に走行可能だ

高速道路でも依然、安心感があり軽快。速度を上げていってもそのフィーリングは変わらない。ガチッとした剛性感ではないが、おそらくは専用のラジアル構造による路面を優しく包み込むようなクッション性があり、ハイスピードレンジにおける路面の細かな凹凸もうまくいなしてくれている感じだ。

郊外を抜けてそのままワインディングへ。右へ左へとタイトコーナーが続く峠道では扱いやすさを実感。倒し込みもスムーズでクセがなく、前後輪ともに同時にリーンして自然にステアリング舵角が当たる感じ。立ちが強くて逆操舵が必要とか、舵角が決まる前にフラッと寝すぎて怖い…などのクセが強いと気持ち良く走れないものだが、そういった心配はご無用。ライントレースもオン・ザレール感覚で、目線を向ければ曲がっていく素直なキャラだ。

行きたい方向に目線をむけると、自然にバイクがついてくるフラットな特性行きたい方向に目線をむけると、自然にバイクがついてくるフラットな特性

一方で、コーナーで荷重をかけていってもアスファルトに食らいつくような強力な接地感は出てこないが、逆に言えば速度や路面温度にあまり影響を受けずに安定したグリップ性能を発揮してくれるタイヤということ。また、かなり路面が荒れている場所ではリヤタイヤが少し跳ねるような挙動も感じられたが、これは車両の特性もあるので何とも言えないところ。当日は車両メーカーの指定空気圧に合わせていたが、サスセッティングで調整できる範囲だと推測される。

信頼できる接地感と驚きのウェット性能はツーリングの心強い味方になるはず

雨でも感じられる“みずみずしい”接地感は、確実にライダーの不安を減らしてくれる雨でも感じられる“みずみずしい”接地感は、確実にライダーの不安を減らしてくれる

自慢のウェット性能を確かめるべく、日を変えて雨天の中も走ってみた。雨が降ったり止んだりで路面はフルウェット状態の中、走り出してすぐに伝わってきたのが“みずみずしい”接地感。通常のタイヤであれば、ウェット路面ではどうしても接地感は薄くなりがちで、これが顕著に表れるハイグリップ系などでは恐怖でしかない。

それがどうだろう。T32では直接路面にトレッド面が接しているような確かな実感があるのだ。これには正直驚いた。試しに信号待ちからのスタートダッシュで強めに加速してみたが、大排気量モデルのトルクだと路面の白線やマンホールをきっかけにリヤタイヤがスピンし始めることがよくあるが、T32の場合は滑りづらく滑っても回復が早い。

“パルスグルーブ”が効果的に水を切り裂くように排水している“パルスグルーブ”が効果的に水を切り裂くように排水している

続いて安全な場所で急制動のような強めのブレーキをかけてみたが、前後タイヤがしっかり路面をつかんで減速してくれる。ABSが介入するタイミングもかなり遅めで、結果的に制動距離も短く止まれることができた。水を得た魚のよう、とはこのことだ。

続いて、首都高にもトライしてみた。ご存じのとおり、首都高は急カーブも多く路面も良いとはいえず、鉄板の継ぎ目が数多く露出するライダー泣かせのスポットだ。ここでも最初の感覚として飛び込んできたのが、信頼できる接地感だ。ドライ路面並みと言っては語弊があるだろうが、それに近い感覚で自然に乗れてしまう。水の膜を一枚かましたような、あの曖昧さがないのだ。轍に溜まった水を切り裂き、勢いよく後方に排水するイメージが脳裏に浮かんでくるようだ。

首都高名物の鉄板の継ぎ目もそれほど気にすることもなく、普段ならバイクを起こして通過するカーブでもわりと普通に走れてしまう。もちろん、「ウェットに強いタイヤ」という前口上あっての信頼感もあるが、実際に試してみて濡れた路面の影響を受けづらいことは確かだと言える。

ブリヂストン「BATTLAX SPORT TOURING T32」ブリヂストン「BATTLAX SPORT TOURING T32」

ツーリングでは荒れた路面もあれば、気温低下や雨などの悪条件も容赦なく降りかかってくる。そんなときこそ、平常心をキープしつつバイクとタイヤを信頼して走り続けられることが大事だろう。T32は安心と安全によって操る楽しさを約束してくれる、とてもライダー思いのタイヤである。

ブリヂストン「BATTLAX SPORT TOURING T32」の詳細はこちら

モーターサイクルジャーナリスト 佐川健太郎氏モーターサイクルジャーナリスト 佐川健太郎氏

佐川健太郎|モーターサイクルジャーナリスト
早稲田大学教育学部卒業後、出版・販促コンサルタント会社を経て独立。編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら、「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。(株)モト・マニアックス代表。バイク動画ジャーナル『MOTOCOM』編集長。日本交通心理学会員。MFJ公認インストラクター。

《佐川健太郎》

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