【アウディ e-tron スポーツバック 新型試乗】スペック以上に強烈な「ブーストモード」…丸山誠

航続可能距離は405km

スペック以上に強烈な「ブーストモード」

50対50の前後重量バランスが効いている

アウディ e-tron スポーツバック
アウディ e-tron スポーツバック全 16 枚

アウディ『e-tron スポーツバック』は、女優の柴咲コウさんをアウディe-tronサポーターとして起用したことで話題になり、注目している方も多いと思う。このモデルは2018年9月に世界初公開されたが、そこから導入までに時間がかかり、2020年9月にようやく日本でも販売が開始された。もちろんアウディ初のピュアEV(BEV)だ。

日本にはスポーツバックが先行導入され、それを追ってSUV版が設定された。今年1月にはバッテリー容量71kWhの「50」を追加している。

アウディのEV戦略は、まず大型のプレミアムモデルから本格的に展開して順次拡大していくというもの。
先日には『Q4』系がワールドプレミアされた。日本での先陣を切ったe-tron スポーツバックのボディサイズは、全長4900mm、全幅1935mm、全高1615mmで日本ではアッパーミドルクラスのSUVとなる。実車を見るとサイズよりもずいぶん大きく、立派に見える。

ルーフからなだらかに下るルーフラインだけ見れば、クーペそのもののスタイリングでとてもスタイリッシュなフォルムだ。大きな8角形のシングルフレームグリルを近くで見ると、空力性能向上のためほとんどがふさがれていて、一部だけが通気できるようになっている。このデザインはいかにもEVらしい点だ。

航続可能距離は405km

アウディ e-tron スポーツバックアウディ e-tron スポーツバック
充電リッドも特徴的でフロントフェンダー後方にあるボタンを押すとカバーが平行に下がって充電口が姿を現す。面白いのは、充電口は両側のフロントフェンダーにあることだ。左側がCHAdeMO(チャデモ)規格の急速充電用で、右側が200Vの普通充電用。通常、急速と普通充電口は横並びでレイアウトされているものが多いが、左右に分けているモデルは少ない。

前後に駆動モーターをレイアウトし、フロア下に95kWhの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載。前後の駆動アクスルを機械的に結ばないクワトロはもちろんこれが初めてで、当然前後独立して駆動できるスプリットタイプだ。システム最大出力は300kW・664Nmで、この数値はブーストモード使用時で、通常は265kW・561Nmに抑えられている。航続可能距離は405km(WLTCモード)だから300kmちょっとぐらいのロングドライブはこなせるはずだ。

バッテリー容量量を少なくしたスポーツバック 50 クワトロは、71kWhでシステム出力は230Kw/540Nm。満充電での走行距離は316km(同モード)とちょっと足が短い。

アウディ e-tron スポーツバックアウディ e-tron スポーツバック

スペック以上に強烈な「ブーストモード」

まずは注目のブーストモードにチャレンジ。物理的なスイッチではなく、走行モードをスポーツのSレンジにセットしてからアクセルを床まで一気に踏み込めばブーストモードに移行する。フロアまで踏み込むと、蹴とばされた感じで頭を後方に大きく振られてしまうほど。ヘッドレストに頭が当たりそうなほど強烈な加速感なのだ。

このときも車内は静かで、タイヤのスキール音さえもまったくない。0‐100km/h加速は5.7秒というスペックだから数値的にはそれほどでもないが、アクセルを踏んでからのレスポンスとトルクの高まりは、エンジン車とは比較にならないほど早い。

滑りやすい路面や急加速やコーナリング時など4WD走行が適切とシステムが判断するとフロントモーターも駆動される。トルクが立ち上がるまでわずか0秒03だというから、ICE(内燃エンジン)はかなわないはずだ。664Nmの大トルクを瞬時に発生するため加速が強烈なのは当然で、ブーストモードを楽しんでいるとバッテリーの消費が激しく、残量が少なくなってしまう。

アウディ e-tron スポーツバックアウディ e-tron スポーツバック

50対50の前後重量バランスが効いている

街なかを流すような走りでも操舵感の滑らかさが実感でき、プレミアムモデルらしい仕上げになっている。クワトロだが通常走行はリヤ駆動がメインでフロントモーターはほとんど作動しないため、すっきりとしながらもしっとりした操舵感は出来のいいFRのようだ。乗り心地と姿勢制御もいい。これは前後重量バランスが50対50というのも効いている。

こうした挙動はフロア下に重いバッテリーをレイアウトするEVに共通する傾向で、これが重厚感のあるプレミアムモデルらしい乗り心地を実現している要因でもある。

■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★

丸山 誠|モータージャーナリスト
日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。自動車専門誌やウェブで新車試乗記事、新車解説記事などを執筆。先進安全装備や環境技術、キャンピングカー、キャンピングトレーラーなどにも詳しい。

《丸山 誠》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

アクセスランキング

  1. タイヤブランドGTラジアルよりオールシーズンタイヤ「4シーズンズ」発売
  2. マツダ、電動セダン『EZ-6』世界初公開、24年発売へ SUVコンセプトも…北京モーターショー2024
  3. スバルとスカイラインにフィーチャー…第4回アリオ上尾 昭和平成オールドカー展示会
  4. 【ホンダ ヴェゼル 改良新型】開発責任者に聞いた、改良に求められた「バリュー」と「世界観」とは
  5. トヨタが新型BEVの『bZ3C』と『bZ3X』を世界初公開…北京モーターショー2024
  6. ディフェンダー 最強モデル「OCTA」、V8ツインターボ搭載…7月発表へ
  7. 郵便局の集配車が「赤く蘇る」、KeePerが8000台を施工
  8. アルファロメオ『ステルヴィオ』後継モデルは、大容量バッテリー搭載で航続700km実現か
  9. 見逃せない! ホイールのブレーキダスト除去術 ~Weeklyメンテナンス~
  10. Sズキが電動マッサージ器を「魔改造」、25mドラッグレースに挑戦!!
ランキングをもっと見る