VW ティグアン 改良新型、SUV 3兄弟の棲み分け…商品企画担当[インタビュー]

VW ティグアン
VW ティグアン全 13 枚

VW『ティグアン』がマイナーチェンジした。海外はもとより日本市場でも人気が高いクルマだ。さらに、積極的にSUVをラインナップしているフォルクスワーゲングループジャパン(以下VGJ)としては柱の1台となろう。そこで、今回のマイナーチェンジのポイントやラインナップの棲み分けや特徴について、商品企画担当に話を聞いた。

【画像全13枚】

ティグアンとT-Rocの差別化

----:今回のマイナーチェンジですが、かなり手が入っているようですね。

フォルクスワーゲングループジャパン営業本部商品企画課プロダクトマネージャーの沢村武史さん(以下敬称略):そうですね。マイナーチェンジですから骨格は変わりませんが、エンジンも変わりましたし、トランスミッションも変わりました。

----:トータルの印象としては『T-Roc』との差別化がすごく難しいようにも感じましたが、売りわけとしてはどのようにお考えですか。

沢村:商品的なキャラクターでは、ティグアンはSUVのど真ん中の、オーセンティックできちんと室内空間もそれなりに確保し、見た目の力強さや、車格感もしっかりあるイメージです。T-Rocはどちらかというとクーペスタイルで、ある程度、室内空間や荷室は割り切って、このスタイルが欲しいというお客様に対して買ってもらおうと考えています。

必然的にターゲットカスタマーは変わって来ます。どちらも男性といいつつも、ティグアンは家庭があって、お子さんもいて、普通に送り迎えなどでリアシートも使う家族を想定しています。

もともと乗っていたクルマを見ると、やはり大きいクルマからの乗り換えや、ミニバンからの乗り換えが結構多いのです。そういうお客様は、例えばミニバンに乗っていて、子供に手がかからなくなったり、手が離れたりで夫婦で行動することも多くなったものの、時には送り迎えでリアシートを使う。そうなるとMPVから次にまたMPVというよりは、SUVはスタイルも良いですし、いまの流行りのボディタイプでもあり、かつアイポイントが高いのでミニバンから乗り換えても違和感がないでしょう。あえてミニバンに行かずにSUVというところもあると思うのです。

T-Rocの場合は2人で使うことがより多いクルマです。ハッチバックとの競合や、乗り換えが多いですね。その意味ではやはり、購入層が違うので、そこでの売り分けは自然に出来ていると思います。また価格帯的にも、T-Rocが350万ぐらいからなので、ティグアンに対して50万円くらい差があります。そこはある程度予算的にも分かれてくるでしょう。

----:基本はT-Rocとティグアンでカニバリはないイメージですか。

沢村:ないとは100%言い切れませんが、影響は少ないだろうと思います。

----:そうするとT-Rocのユーザーの多くは他社流入が多いというイメージ、言い換えると純増のイメージですか。

沢村:非常に難しいのが、T-Rocが出たのが去年の7月で、コロナ禍の中、クルマ全体が売れなくなる厳しい時期でした。またティグアンと『ゴルフ』がモデル末期で、台数的にも先細っているところにT-Rocが出たわけです。VGJトータルのビジネスとしてみれば、2019年に対して減っていた中でしたので、純増というのはちょっと難しいかもしれません。

結局ゴルフがモデル末期ですから、それまでゴルフを勧めていたお客様にT-Rocを勧めるケースも当然あるわけです。どちらかというとT-Roc自体がハッチバックに近いコンセプトのクルマですし。そういう状況下でもありますので、オントップでと答えられれば良いのですが、実際にはそうはなってはいなさそうです。

----:今年は新型ゴルフも発売されますので、それ以降でいえばT-Rocが他社流入でシェアを稼げそうな印象なのでしょうか。それともゴルフからの移行も多いのでシェアを伸ばすのは難しいのでしょうか。

沢村:前保有や比較検討車両としてゴルフは高く出て来るでしょう。単なる数字上の傾向でいくと、新規のお客様が取れている率では、『T-Cross』の方が多い印象です。VW T-RocVW T-Roc

T-Crossの競合は日本のコンパクトハッチ

----:それではT-Crossはどういった傾向ですか。

沢村:T-Crossは結構面白くて、300万円台のかなり前半からちょっと超えた価格帯です。最初に1stと1st+という特別仕様車を出したのですが、その比較検討として挙がっているのは日本車のコンパクトSUVなどでした。つまりT-Roc以上ですと、輸入車競合が結構多いのに対して、T-Crossは国産競合が多いのです。

もうひとつT-Rocで面白いのはスタイルとスポーツ、R-Lineの3バリエーションがあるのですが、スタイルのお客様の男女比率は4割くらいで他と比較すると女性が多いです。一方でR-Lineとスポーツになると一気に男性比率が8割から9割に上がる。ひとつのモデルなのに、グレードによってユーザー層がかなり違うのも面白い傾向です。VW T-CrossVW T-Cross

----:では、どちらかというとVGJにとって新しいユーザー層が来ているイメージですね。一方、ティグアンはもともとものVWユーザーや、そこに近い人たちが来るイメージになると。

沢村:これまでの売れ方で見ると、ティグアンは長く売っているクルマでもありますし、それなりにVWの顧客基盤から来ているところはもちろんあります。初代ティグアンはクロスオーバーに近く車高も低めでしたが、2代目では、よりマッシブで力強い、正統派SUVの形になった。そこから周りと比較検討するクルマのグループが広がったのではないかと思います。そこから台数的も増える傾向が見えてきたのでしょう。

----:ではティグアンのユーザーはどんな人達なのでしょう。

沢村:ティグアンのユーザーは、50代で家族構成は4人、あるいは子供達が巣立つぐらいで、年収は高くて、1000万を超えているくらいというイメージです。ただしティグアンの中でも今回は導入できませんでしたが、TDIの4MOTIONとTSIと比較すると、TSIのお客様の方がちょっと若くてより子供と暮らしている比率が高く、荷室とかリアシートを使う機会が多いという傾向が見られました。

Rのラインナップを広げる

----:さて、今回は本国でも新規導入された「ティグアンR」が発売されますね。なぜこれを日本でも出したのですか。

沢村:これは想像なのですが、多分“Rビジネス”を広げることを考えると、もともとゴルフがあり、次にT-Roc、そしてティグアンが続きます。本国には『トゥアレグR』もありますが、これはV6のプラグインハイブリッドですので、ちょっと置いておいて。

このようにラインナップを広げて行った時に、次は『ポロ』ではなかった。たぶんポロのコンパクトな車形でさらに四駆を搭載するというのはRビジネスとしては少し違うという考えのようです。そうするとハッチバックとしてはゴルフしかないので、ラインナップを広げるならSUVしかなくなります。さかのぼれば『シロッコR』がありましたが、いまはクーペはやっていませんので、そうなると、広げるという意味では、SUVになるわけです。

----:つまりVWとしてSUVは柱であり、よりスポーティなイメージも出したいということですね。

沢村:それと同時に輸入車ではハイパフォーマンスのSUVが多いので、そこに追従するという意味合いもあります。VW ティグアンRVW ティグアンR

ライトサイジングエンジン

----:今回のマイナーチェンジでは、エンジンの排気量が1.4リットルから1.5リットルになりましたが、これはどういう理由なのでしょう。

沢村:端的にいえば本国サイドのエンジンの世代交代の波です。基本的に元々あった1.2リットルと1.4リットルはそれぞれ1リットルと1.5リットルに置き変わっています。本国サイドではティグアンに限らずゴルフをはじめ、他のクルマも全部そうです。

----:欧州の傾向として一時極端なダウンサイジングエンジンを搭載していましたが、最近は適正値を求め始めています。それの傾向もあり1.5リットルになったのでしょうか。

沢村:そうだと思います。2017年辺りにこのエンジンは現行ゴルフに搭載されたのですが、海外の媒体などでライトサイジングという言葉をよく使っていました。つまりダウンサイジングが行き過ぎて、それを少し戻す。結局排気量は、ある程度あった方が排ガスなどに良い効果をもたらしますので、そういったところでの見直しがあったのです。VW ティグアンVW ティグアン

《内田俊一》

内田俊一

内田俊一(うちだしゅんいち) 日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験を活かしデザイン、マーケティング等の視点を中心に執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。保有車は車検切れのルノー25バカラとルノー10。

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