【アウディ A3セダン 新型試乗】「意識の高いドライバーに向けた車」と感じる…中谷明彦

ちょうど良いサイズな「A3セダン」

「意識の高いドライバーに向けた車」と感じる

コクピットのレイアウトは、走りに振った印象

セダンとしてのバランスが良い

アウディ A3セダン 新型(30TSI アドバンスド)
アウディ A3セダン 新型(30TSI アドバンスド)全 14 枚

ちょうど良いサイズな「A3セダン」

アウディ『A3セダン』はコンパクトカークラスで、全長4495mm、全幅1815mmとなっていて日本で使うにはちょうど良いサイズと言える。

今回試乗した『A3セダン 30TSI アドバンスド』のパワートレインは、1リットル(999cc)直列3気筒DOHCインタークーラー付ターボチャージドエンジンに、48Vマイルドハイブリッドシステムを加え、7速Sトロニックのツインクラッチトランスミッションで構成される。駆動方式はFF(前輪駆動)だ。

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試乗車に装着されていたタイヤは225/18インチで、乗り心地は路面の段差等がやや感じられるが、全体的にはしなやかでステアリングの追従性の良い足回りのセッティングになっていた。フロントは「マクファーソンストラット式」、リアには「トレーリングアーム式」のサスペンションシステムを採用している。

アウディはここ数年、世界中の自動車メーカーのベンチマークになるような非常に優れたハンドリングに仕上げていたが、電動化等の方向性に車のバリエーションが広がってきたため、SUVも含め、中には足回りが硬すぎて全体的に走りの質感が少し落ちていると感じられるところではある。

新型A3セダンもまた、ライントレース性や操縦安定性は非常に優れているが、乗り心地面の硬さについては少しコストダウンされたような印象を受ける。

「意識の高いドライバーに向けた車」と感じる

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注目の48Vマイルドハイブリッドシステムは、フォルクスワーゲンの『ゴルフ8』が採用したものとほぼ同じシステムを使っていて、スペック的にもほぼ同じだ。

車体重量は1330kgとやや大きめだが、最高出力は110ps、最大トルクは1リットルながら200Nmを引き出せていて、7速のギアを組み合わせているので、山道等のワインディングロードを走ってみたもパワー不足感はほとんどなかった。ただ、ドライビングモードのセレクトスイッチがなく、どちらかというと「速く走る」というよりも「スムーズに環境に配慮して走る」ということに重きを置いている設定の車だと感じられる。

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4ドアセダンということで、ドライバーだけでなく同乗者が複数人となる場合も考慮し、快適かつスムーズでゆったりと環境に配慮しながら走る、そういった意識の高いドライバーに向けた車というのがメーカーから発信されていると感じ取れた。

A3には、『S3』や『RS3』(新型は未発表)といった上級のスポーティグレードもあるので走りに対する共通したイメージの演出がなされているようだ。

コクピットのレイアウトは、走りに振った印象

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外観は、A3に詳しくない方が見ると新旧の差別化が難しいかもしれない。逆にいうと、アウディのデザイントレンドが強く残された外観デザインで、S3やRS3になるとまた違った迫力のあるスポーティーな印象を受けるだろう。

コクピットは、ドライバーゾーンのレイアウトだけを見ると走りに振った印象を受ける。メーターはデジタル式のバーチャルコクピットで液晶を使用したメーターがあり、ダッシュボード中央にはインフォテインメントディスプレイが配置されている。これらは全てドライバーの方向に向いていて、レーシングカーの操縦席のような非常にかっこいい作りになっている。

運転席はドライバーオリエンテッドで操作性も物理的なスイッチが多く残されているが、シフトレバーは従来の大きなシフトレバーではなく小さなレバーで操作できるスイッチレバー方式となるなど新旧の個性が組み合わされている。ドライビングモードの選択もないので、車に任せた運転ができるという意味において非常に扱いやすくなっている。

セダンとしてのバランスが良い

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後席は、若干背もたれが起き上がっていて彫りが深くサポート性も良いが、リクライニング機構は付いていない。ゆったりと倒して優雅に乗る訳にはいかないと思うが、コンパクトカークラスのセダンとして見ればヘッドクリアランスもあるし、足元の広さも申し分ない。

センターフロアにセンタートンネルがあったが、「クワトロ」の場合はここにプロペラシャフトが入るのだろう。FF車だと通常、フラットなフロアになっているはずなのだが、ボディ剛性を出す意味でもセンタートンネルがある場合がある。今回はそれほど大きくないものの、フロアは少し盛り上がっていた。

ラゲッジルームは奥行きもあり深めな設計のため、大きな荷物もラクラク積み込める容量が確保されている。

全体的に、セダンとしてのバランスが良く、重量、走り、居住空間、荷室、レイアウト全てにおいて非常に優れているので、日常的に扱いやすく乗りやすいセダンに仕上げられていた。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★
オススメ度:★★★

中谷明彦|レース&テストドライバー/自動車関連コンサルタント
大学在学中よりレーサー/モータージャーナリストとして活動。1988年全日本F3選手権覇者となるなど国内外で活躍。1997年よりドライビング理論研究会「中谷塾」を開設、2009年より東京大学と自動車新技術の共同研究に取組む。自動車関連の開発、イベント運営など様々な分野でのコンサルタントも行っている。

《中谷明彦》

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