【ホンダe 新型試乗】長距離乗ろうとは思わないが、癒されるクルマだ…中村孝仁

ホンダe アドバンス
ホンダe アドバンス全 40 枚

電気自動車(EV)なんて、どれに乗っても同じでしょ?そう言い切ってしまう同業者もいるくらい、電気自動車に対する考えは様々であるように思える。

個人的に電気自動車が好きかと言われたらあまり好きではないし、自分の自動車の使い方にはあまり馴染まないような気もする。そもそも、自動車を普段どのように使っているかによって、電気自動車に対する考え方は大きく変わるのではないかと思う。

「そうだ、御殿場行こう」となっても…

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我が家の場合、クルマは基本的にあらゆるシーンでなくてはならない存在。その使い方もコンビにまでの買い物から泊りがけの旅行まで様々だが、一番決定的だと思うのは、いつも突然「そうだ〇〇に行こう…」と言ってかなり無計画に出かけることが多いことだろう。そんな時電気自動車は、例え満充電されていたとしても行き先によっては途中での充電が必須になったり、そのために場合によっては長時間待つ必要がある。

『ホンダe』は、35.5kwhのバッテリーを搭載し、WLTCモードで259km(アドバンスの場合)の航続距離を持つとある。今回は4日間お借りして、毎日我が家で充電したのだが、たとえ100%の充電状況でも航続距離の表示が200kmを超えることはなかったから、外気温が30度を超えていた試乗時はやはりこの程度が限界なのだと思う。

因みに使用時の電費は5.7km/kwh。普通に使った状況ではこの程度なのだろうか。そんなわけだから突然思い立って御殿場に行こう…となった時は、必ず充電の心配をする必要がある。

現在充電設備は全国に2万1400基もあって、これはガソリンスタンドの数に迫るもの(2019年度のガソリンスタンド件数は2万9637件)だから、充電設備が少ないという考えは当たらないのだが、大抵のガソリンスタンドは1件で最低でも一度に4台ぐらいの給油が可能で、しかも滞留時間は精々1台につき5分。これが充電となると1基しか存在しないというところも非常に多く、しかも滞留時間は1台につき30分程度はかかるので、対等の比較はできない。これが我が家には不向きな一番の理由である。

タイヤのチョイスにビックリ

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冒頭の「どれに乗っても同じ」は当然パフォーマンスの差などがあるし、航続距離もそれなりに違うから、まあ「どれに乗っても同じ」は当たらないと思うのだが、ガソリン車の場合は五感のうち聴覚に訴えかけるものがあって、これは結構大事な要素になるから当然「どれに乗っても同じというわけではない」。それにパワーの出し方などもトランスミッションとの組み合わせやエンジンのチューニングによってメーカーが特性を発揮する部分は多いが、電気の場合はまだまだその境地に達しておらず、そうしたファインチューニングの分野では正直どれに乗っても同じようなものと感じてしまう。

さて、ホンダeである。このクルマ、正直言ってとても割り切りが潔くて、ある特定の使い方に特化した場合には大いに評価されるモデルではないかと思えた。そもそも初対面でずいぶんツルンとした格好だなぁと感じたのだが、よく見ればグリルレスに始まって余計なアクセサリーが一切つかず、ワイパーにしてもレインモールにしてもすべてコンシールド化した結果、このツルンが出来上がったわけで、ドアハンドルもすべてボディに収まってしまっているし、サイドミラーは量産モデルでは初だそうだが、カメラに置き換えられているから、ツルリ感は一層際立つ。

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ビックリしたのはタイヤのチョイスだ。銘柄はミシュラン・パイロットスポーツ4。全長が4mに満たないサイズで前後異なるサイズを履く。フロントは205/45 ZR17。そしてリアに至っては225/45 ZR17と分不相応と思えるタイヤがチョイスされている。車重が1540kgもあるからなのか理由は定かではないけれど、おかげで運動性能は中々のものだし、ホイールベースが短いにもかかわらず、乗り心地も相当に良い。何より当たり前だが非常に静かである。

都内を走り回るにはうってつけ

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カメラが司るサイドミラーは、左右共に遠近両用メガネをかける筆者でも問題なく視認可能だった。ただし、リアビューミラーは目線移動だけでの視認は遠近両用使用者にとっては厳しく、安全のために断念した。夜間も使用してみたが、予想外にその視認性は高かったのだが、距離感がつかみにくいという難点があった。この点は慣れが解決するのだと思うが、使い始めは特に車庫入れなどの際に苦労する。そんなことを見越してかパーキングアシストが装備されている。

このクルマの売りでもあるサイドカメラを含む5つのディスプレイが占拠するダッシュボードはなかなか面白い。じっくり取説を読み込んで使えばさらに面白い発見があったのかもしれないが、アクアリウムという熱帯魚が水槽の中を泳ぐようなディスプレイに嵌ってしまい、常時これをつけていた。

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走行中は魚の動きがフリーズするが、停車すると泳ぎ出す。外界が暑かったことも手伝って、これを見て清涼感を得ていたといっても過言ではない。

我が家から銀座までその距離はおよそ35kmほどだが、2人乗車で渋滞の中を走っても間違いなく2往復半はできる。短距離移動に特化した使い方なら何の不満もなく、快適な乗り心地と高い静粛性、それに取り回しの良さから都内を走り回るにはうってつけと感じた。

残念ながらシートは個人的には合わず、長距離乗ろうとは思わない。でも、そのデザインと言い、内装やディスプレイ表示など癒されるクルマだと感じた。もっともお値段もそれなりだから、購入は躊躇する。

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■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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