呼出型最適経路バス「MyRide のるる」が実証運行---地方の公共交通機関として期待

呼出型最適経路バス「MyRide のるる」実証運行の模様
呼出型最適経路バス「MyRide のるる」実証運行の模様全 20 枚

茨城県の高萩市、茨城交通、みちのりホールディングス、Via Mobility Japanは6月28日、呼出型最適経路バス「MyRide のるる」の実証運行の事前説明会を開催した。実証運行は7月1日より茨城県高萩市内において開始する。

利用者のリクエストに応じて、AIがルートと運行ダイヤを自動生成!

この事業は2021年3月23日に、高萩市と茨城交通、みちのりHDで締結した「ダイナミックルーティング実証実験にかかる協定書」に基づいて実施するもので、実証運行は高萩市が管轄し、システムは国土交通省の認定の下で運用される。

高萩市ではすでに山間地域において「デマンド型乗合タクシー」を約100台のタクシーを活用しており、新たに加わる呼出型最適経路バス「MyRide のるる」と合わせることで、主として昼間の時間帯に在宅する高齢者などの足として活用する考えだ。

「MyRide のるる」は人工知能(AI)を利用して、利用者からのリクエストに合わせてバスの運行経路とダイヤを最適化して運行するサービスとなっている。そのために既存の標柱バス停96カ所に加えて、システムの地図上に仮想バス停(バーチャルバス停=VBS)を28カ所追加してきめ細かく設定。これによって従来のバス運行のような定時制はなくなるものの、利用者はより自宅に近いところから乗車でき、より目的地に近いところで下車できるようになる。

利用にあたっては、専用アプリ「MyRide のるる」か、あるいは電話を使って出発地と目的地をリクエストする。このリクエストに応じてAIが他の乗客の予約内容や道路混雑状況等に合わせて最適な運行経路とスケジュール(ダイヤ)を生成する仕組みだ。システムそのものはTransitTech(トランジットテック)のパイオニア Via Transportation, Inc(本社:米国)、及びその日本法人 Via Mobility Japanにより提供される。

実証期間は来年3月まで。3段階に分けてその後の本格運用を目指す

今回の実証運行では、7月より段階的に対象利用者を拡大していき、年度内には高萩市内の既存の路線バス運行エリアほぼ全域において利用可能となる。第1段階(2021年7~9月)は大規模団地である向洋台団地周辺の住民を対象としてスタートし、第2段階(10~12月)ではさらにエリアを拡大。ここまでは従来の路線バスも併用する。そして、第3段階(2022年1月~3月)では路線バスが運行するすべての市内エリア(高萩清松高校沿線地域除く)で本サービスが運用される予定だ。

本サービスに投入されるバスは第1段階で1台だが、第2段階では2台、第3段階では計4台(土日2台)にまで拡大される。運行時間は午前8時30分~午後3時で、主として昼間時の在宅者を対象としていることがわかる。利用料金は1乗車に付き300円(乗り継ぎ割引あり)。運賃は降車時に現金/ハイカード(電子マネー)/高萩市内区間の茨城交通の通勤通学定期券で支払う。なお、市内在住の65歳以上の高齢者には運賃半額助成制度があるほか、障害者/小児割引も用意されている。

説明会終了後には、実際にアプリと連動させたデモ走行も実施された。その方法は利用者から高萩市総合福祉センターから乗車して高萩市役所で下車するとのリクエストが待機中のバスに届き、それに応える形。バス側に用意されたタブレットで運転手がリクエストに応じると、利用者のアプリにもその情報が反映されて到着予想時刻とバスの位置がリアルタイムで表示された。利用者はその状態をチェックしつつ指定した乗車場所へ移動すればいいわけだ。

また、リクエストに応じている最中に別の人からリクエストが入った場合、AIがそのリクエストの内容を判断してもっとも効率の良いルートを生成する。場合によっては最初のリクエストを出した人の到着が遅れる可能性はあるが、これはリアルタイムで到着時刻が表示されることでサポートはできる。つまり、この利用イメージは海外で普及している複数人と乗合して利用するライドシェアの形に近い。定時制よりも多くの人がオンデマンドで利用できる利便性を重視したところに、このサービスの最大ポイントがあると言えるだろう。

「市民に良かったと思ってもらえるよう、スマホ講習会も開催していきたい」大部市長

この日の説明会には高萩市の大部勝規市長、茨城交通の任田正史社長、みちのりホールディングスの松本順CEOが出席。大部市長は冒頭、「地方における公共交通機関がどんどん脆弱化しているのは高萩市も例外ではない。その一方で市民からは公共交通機関の充実を求める声が大きい。全国からも注目されているサービスが今回提供する“のるる”。今回の実証実験を踏まえ、来年からの本格運用を目指したい」と挨拶。

任田社長は「実証実験後の本格運用が実現できるようにより多くの人に利用してもらい、その利便性を市民に感じてもらえるよう、しっかりPRしていきたい」と語り、みちのりホールディングスの松本CEOは「これをきっかけに公共交通のサステイナビリティが保たれると、SDGSの観点でも追い風となる。全面的に協力していく」と述べた。

また、大部市長は説明会後のメディア向けブリーフィングで、「これまでもデマンド型乗合タクシーで免許を返納した高齢者に対応してきたが、今回のサービスを合わせることで、家族に頼らず自分の足で買い物や用事を済ませられるような環境を提供していきたい」と今回のサービスを導入した趣旨を述べた。

一方でこのサービスは電話でも使えるものの、利便性を考えればアプリを前提としている。これを念頭に大部市長は、「最終的にはこのサービスの導入が市民にとってホントに良かったと思ってもらえるようにするのが目的。市としてもスマホの講習会などを積極的に開いて、より多くの人にこのサービスを便利に使えるようにしていきたい」と、の実証運用から本格運用へ向けた今後の発展に期待を寄せた。

《会田肇》

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