自動運転下で交通制約者にとって必要な設備とは?…NTTデータ経営研究所が評価会

茨城県つくば市の日本自動車研究所において実施された交通制約者や専門家による評価会
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NTTデータ経営研究所は6月30日、茨城県つくば市の日本自動車研究所において、交通制約者が安心して利用できるバスのデザインガイドライン案の策定を目標に、実際のバス車内でモックアップやVRを使った交通制約者や専門家による評価会を開催した。

評価会の目的は「交通制約者に優しい自動運転バスに係る基礎調査」

VRで体験しての評価も行われたVRで体験しての評価も行われた

この評価会は、NTTデータ経営研究所が新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下:NEDO)の「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/自動運転(システムとサービスの拡張)/交通制約者に優しい自動運転バスに係る基礎調査」を2020年6月に受託したことを受け、その評価することを目的として実施されたものだ。

その背景には、近い将来実現するとされる、公共交通機関の自動運転化がある。これまでは運転手がその都度、交通制約者のサポートを行ってきたが、自動運転車となれば運転手は乗車しておらず、交通制約者は自ら対応することが求められる。そうした際の不安を解消し、より安心して自動運転バスを利用できるサービスに必要な要件とは何か。それらの実用化や社会実装を明らかにするために同研究所が本事業を立ち上げたわけだ。

専門家として各自動車メーカーの当該担当者による評価も行われた専門家として各自動車メーカーの当該担当者による評価も行われた

今回の評価会を開催するにあたってNTTデータ経営研究所では、事業において考案したアイデアを実際のバス車内やVR上に構築。交通制約者の方々に体験してもらうことで、その有効性を評価する方法を採った。しかも、VRではデータを単なるCGではなく、実際に寸法撮りして反映させた3次元CADを使用するなど、VR体験時によりリアさが伝わっているように工夫されているという。

会場には、身体に障害を持つ交通制約者(電動車いす利用者や杖・装具利用者、ベビーカー利用者、聴覚障害者、視覚障害者)に加え、各自動車メーカー等で当該分野を担当する専門家が参加。各自が実際に体験した上で、それぞれの立場で評価を行った。

車いすをワンタッチでロックでき、ロックを解除できるシステムも紹介された車いすをワンタッチでロックでき、ロックを解除できるシステムも紹介された

評価はリアルなバス車両と、VR上のバス車両の二通りで実施

では、評価会で提案されたものはどんなものか。まずはバス内部に準備されたものをいくつかピックアップしたい。

フロアにガイド戦を用意することで、車いすでの誘導を補助することにもなるフロアにガイド戦を用意することで、車いすでの誘導を補助することにもなる

車いす固定装置は車いす側にロックするための専用のアンカーボルトを用意し、これをこの装置に引っかけて車いすを固定する。ロックの解除は固定位置から手が届く位置に設置した専用スイッチを使う。さらにロックに至るまでの動線をフロアに描いておくことで、一人でも楽に固定できることがわかった。一方で、この固定装置はフロアに出っ張るため、使わない時は障害物となってしまう。さらに車いす側にも専用金具を普及させる必要もある。

電動スロープはオランダ製のフロア収納型を提案した。一般的に多く使われるスロープは、出入口に準備されたパネルを出入口に運転手が設置して利用するもの。電動スロープなら利用者はボタン一つでスロープを出して収納もできる。ただ、収納式では両端に縁取りがなく、どの方向からでも乗り込めるメリットがある一方で脱輪の不安も指摘された。

折り畳み式の椅子は便利な側面がある一方で、別の障害者には普通剛が生じることもわかった折り畳み式の椅子は便利な側面がある一方で、別の障害者には普通剛が生じることもわかった

自動跳ね上げ式座席では、車いすの利用で邪魔にならないように、使っていないときは自動的に折りたたんだ状態に配慮した。しかし、杖を持った交通制約者がこの椅子に座ろうと手すりにつかまって座席を下ろしても、直後に元の状態に戻ってしまって不便だという感想を持つ人もいたようだ。また、聴覚障害者にとっては、アナウンスが聞こえない分、視覚に訴える表示に工夫が必要との意見も聞かれた。

別の部屋に用意されたVRでの再現では、車いすやベビーカーを収める場所を3カ所区切って用意。それぞれを固定するのではなく、進行方向に向かって真横に置き、さらにバーを上から下ろして各自がそれを掴んで自らホールドする、ジェットコースターのような方法も提案された。これにより前後方向Gに対して一定の強度を保ちつつ、自由度の高い利用が可能となる。

電動式スロープは誰でも気軽にスロープによる乗降が可能になる電動式スロープは誰でも気軽にスロープによる乗降が可能になる

日本のバスは幅2.5mの制約下にあることで、様々な困難がある

VR制作を担当したアイ・モビリティプラットフォームの代表取締役 川本雅之氏は、「現状では運転手が交通制約者のために様々なサポートをすることになっているが、実際はそのための負担はかなり大きい。さらに自動運転が普及した際は交通制約者も自身で乗り込み、安全も確保しなければならない。そうした対応を図るためにも今回の研究は極めて重要だ」と、今回の評価会の意義について語ってくれた。

スイッチの位置やサイズの検証も行われたスイッチの位置やサイズの検証も行われた

また、川本氏は「日本のバスは横幅2.5m内で作る必要があり、これが交通制約者に対応するのに大きなネックになっている。今後はさらに30cm幅を広げられると、ここまで大きな効果が得られるとのVRも作ってみたい」との今後の展開にかける意気込みを語った。

なお、この評価会の結果についてNTTデータ経営研究所では、9月頃を目途に「手引き(もしくは目安)」となるものをまとめていく予定としている。

聴覚障害者にとっては表示がすべて。その位置やサイズにもこだわった議論が交わされた聴覚障害者にとっては表示がすべて。その位置やサイズにもこだわった議論が交わされた

《会田肇》

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