マツダとミズノが「ドライビングシューズ」を共同開発…そのねらいは?履き心地は?

マツダとミズノが共同開発した「マツダ/ミズノドライビングシューズ」
マツダとミズノが共同開発した「マツダ/ミズノドライビングシューズ」全 45 枚

マツダは7月6日、大手総合スポーツ用品メーカーであるミズノと共同開発した、新しいドライビングシューズ「マツダ/ミズノドライビングシューズ」を発表、クラウドファンディグサービス「MAKUAKE(マクアケ)」で、同日14時から予約受注を開始した。製作は日本のシューズ職人によるハンドメイドのため、限定1000足。デリバリーは2022年3月以降、予約順に行われる予定だという。

ペダル踏み換えが楽になって、ドライブが楽しくなるシューズ

マツダとミズノが共同開発した「マツダ/ミズノドライビングシューズ」マツダとミズノが共同開発した「マツダ/ミズノドライビングシューズ」
このドライビングシューズの狙いは、「軽快でありながら、安定感のある快適なペダル操作」だという。

シューズの背面に織り込んだ、ストレッチ素材の戻る力(収縮力)がつま先を引き上げる動作をサポートすることで、アクセルペダルとブレーキペダル(3ペダルの場合はクラッチ操作も)の踏み換えをしやすくした。踏み込み時には、ストレッチ素材の伸びを抑える力により、踏み込み加減の微調整がしやすくなっている。

ミズノが競泳水着開発で培った姿勢制御技術を活かし、「背面サポートアッパー」や「ラウンドソール」、歩行時の履き心地向上とダイレクトなペダルフィールを両立する「MIZUNO COB(ミズノコブ)」を採用した点がポイントだ。

「マツダ/ミズノドライビングシューズ」を試す「マツダ/ミズノドライビングシューズ」を試す
足首をマジックテープ式のベルトでしっかりとホールドするため、他のメーカー製のシューズと比べて、見た目はかなりゴツい。だが、ミズノ担当者の指示通りに履いてみると、シューズ全体のしなり具合が絶妙で、実に履き心地が良い。また、見た目の印象とは違って、非常に軽いので(片足で約270g)、靴を履いている感覚が薄く、裸足の延長線のようだ。

試乗車として用意されていた『NAロードスター』(5速MT)を駆り出してみると、確かに、ペダル操作がラクに感じる。シューズの中で、つま先が戻される反発力が働くので、ペダル踏み換え動作がテンポよく出来るのだ。このまま芦ノ湖スカイラインのような、ペダル踏み換えが多いドライブへと出かけてみたい気持ちになった程だ。

このドライビングシューズの狙いは、「軽快でありながら、安定感のある快適なペダル操作」だという。このドライビングシューズの狙いは、「軽快でありながら、安定感のある快適なペダル操作」だという。

マツダの操安性能エンジニアも開発に携わった

シューズの開発には、マツダの操安性能担当のエンジニアも携わっている。普段は、開発車両の走行テストやサスペンションの検討などを担当されている方だが、「ドライバー研究の一環として、開発に取り組みました(マツダ 車両開発本部 操安性能開発部 上席エンジニア 梅津大輔氏)」とのこと。

ペダル操作時の2つの動き、「底屈」(ペダルを踏み込む腓腹筋(ふくらはぎ側の筋肉))と、「背屈」(つま先を引き上げる前脛骨筋(すね側の筋肉))のうち、後者をサポートするシューズ構造だと、踏み込み量の調整がしやすくて操作がしやすい、という実験結果に至ったという。その動きを実現する方策をミズノ開発チームと詰めていった。

ミズノ グローバルフットウェアプロダクト本部の南場友規氏(奥)とマツダ デザイン本部の寺島佑紀氏(手前)ミズノ グローバルフットウェアプロダクト本部の南場友規氏(奥)とマツダ デザイン本部の寺島佑紀氏(手前)
「瞬間的に大きな荷重を受けるスポーツとは違い、ペダル操作は数十ニュートンという繊細な荷重操作が行われており、荷重入力の大きさが何十倍も違いました。そのため、これまでのシューズ開発の延長線とはいきませんでした。」(ミズノ グローバルフットウェアプロダクト本部 企画開発デザイン部 部長 南場友規氏)とのこと。スポーツ用品作りのプロ集団としても、やりがいのある仕事だったそうだ。

なお、シューズの表皮は、ヌバック(=牛本革を用いて表面処理をした革製品)製だ。ウルトラスウェードのような人工皮革とは違って、ホンモノの牛革素材を使っている。色味もマツダのデザイナーが吟味し、マツダのトレンド「マシングレーメタリック」の色味を採用したという。「本革のため染色を安定させることが難しく、色味は職人の方と、何度も調節しました(マツダ デザイン本部 カラー&トリムデザイングループ デザイナー 寺島佑紀氏)」。

「マツダ/ミズノドライビングシューズ」の試作と。「マツダ/ミズノドライビングシューズ」の試作と。

マツダとミズノ、共通点は「人間中心のモノづくり」

人馬一体の走りを追求する自動車メーカーのマツダと、スポーツ用品開発を基幹事業とするミズノ。今回の2社の協業は、2015年ごろに異業種との技術交流の場で出会ったのがスタートだったという。当初はマツダが、ミズノの得意としていたカーボン素材の技術に興味を持ったことから始まったとのことだが、交流を深めるうちに、「人間中心のモノづくり」という考え方が非常に近いことで、お互いが共感し、今回の共同開発に至ったそうだ。

発注メーカーとサプライヤという関係ではなく、エンジニア同士がひざを突き合わせ(時節柄、リモートも使いながら)、あーでもない、こーでもないと、論議を繰り返してつくり込んでいったという。お互いの専門用語の理解や、要望のすり合わせには時間もかかり、苦労も多かったというが、元開発エンジニアである筆者としては、めちゃくちゃ楽しい時間だったのではないだろうか、と想像する。

価格は税込3万9800円!! 売り切れ必至か!?

マツダとミズノが共同開発した「マツダ/ミズノドライビングシューズ」マツダとミズノが共同開発した「マツダ/ミズノドライビングシューズ」
新カテゴリーにチャレンジするための新たな手法として、一般流通する商品として生産、販売するのではなくクラウドファンディングサービスMAKUAKEを選んだ。これまでにない形でのファンづくり、マーケティング戦略といえるだろう。

MAKUAKEでの販売価格(応援購入価格)は税込3万9800円、サイズは24.5~28.0cm、カラーはグレー×ブラックの一色のみとなる。限定1000足とは、ずいぶんと控えめな目標数。マツダのファンアイテムとしても魅力があるだけに、おそらく一瞬で売り切れるのではないか。

マツダとミズノが協業で生み出したプレミアムなドライビングシューズは、後にも先にもこれのみだ。「(現時点では)再生産の計画はない」とのことなので、欲しい方はすぐにでも注文することをお勧めする。

《吉川賢一》

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