アウディのスローガン「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」。このフレーズがこの世に生まれてから2021年で50年たった。きっかけは1969年、アウトウニオンとNSUが合併したことにある。
2社が合併してアウディNSUアウトウニオンが誕生し、それが現在のアウディになる。合併当時の製品ラインナップは、空冷エンジン後輪駆動のNSU『プリンツ』シリーズ、水冷4気筒エンジン前輪駆動のアウディ『60』や『100』、さらにロータリーエンジンを搭載した未来的デザインのNSU『Ro 80』などで構成されていた。
寄せ集めになるのはやむを得ないが、この技術的な多様性を訴求してアドバンテージにしようと思いついたのが、広告部門にいたハンス・バウアーだった。1970年のことだったという。そして「Vorsprung durch Technik」という文言が生まれる。
このスローガンが初めて消費者の目に触れたのは1971年1月、新聞の大型広告だった。すぐにカタログや印刷物において使用されるようになる。100、「100クーペS」、『80』、『50』と、「Vorsprung durch Technik」がプロモーションで展開された。「Vorsprung durch Technik(技術による先進)」が大盤の広告に使用された最初の例(1971年1月)
スローガンはその後、「Audi. Ein schönes Stück Technik(アウディ、すばらしい技術の粋)」「Audi. Gelassen fahren mit perfekter Technik(アウディ、完璧な技術による安心のドライビング)」といった変化を見せるが、数年でオリジナルのキャッチに戻る。
1980年の『クワトロ』の導入以来、「Vorsprung durch Technik」のスローガンはより多くの機会で使われるようになる。当時、欧州最大の照明広告とされたのが、ドイツのアウトバーンA9号線・インゴルシュタット北出口のそばにあったアウディの広告だ。アウディの赤いオーバルのそばには「Vorsprung durch Technik」の文字が添えられていた。
1986年、新型80のカタログにはこの文字が載っており、このころまでに「Vorsprung durch Technik」は、明確にアウディのコーポレートアイデンティティを構成するようになっていることがわかる。アウディRS e-tron GT(2021年)「Vorsprung durch Technik」の50年