ホンダ「安全運転コーチングシステム」の実験車に同乗…リアルタイムの助言など自習支援

ホンダ 安全運転コーチングシステム 4つのドリル
ホンダ 安全運転コーチングシステム 4つのドリル全 5 枚

ホンダセンシングと連携させ運転状況を把握

ホンダは交通事故死亡者ゼロに向けた対策の一環として、ドライバーのスキル向上などを支援する「安全運転コーチングシステム」(仮称)の開発を進めており、近い将来にグローバルでの実用化を目指す。

栃木県内の公道での実験に入っており、このほど本田技術研究所の担当エンジニアが運転する開発車両に同乗し、取材する機会を得た。システムはホンダの安全運転支援システムである「ホンダセンシング」の機能と連携させ、車間距離や加速、ブレーキ操作などの運転状況をリアルタイムで把握して、コーチングする仕組みだ。

同乗した車両は『ステップワゴン』で、ナビも搭載したディスプレイオーディオに、システムがインストールされている。スマホにシステムをダウンロードして車両のディスプレイと通信させるなど多様な連携方法を開発中であり、すでにスマホ向けにグローバルでの展開を前提とした英語版のプロトタイプも試作している。実用化段階では新車への採用だけでなく、ホンダセンシングを搭載する既販車での利用も視野に入れているという。

ホンダ 安全運転コーチングシステム ACCの学習ホンダ 安全運転コーチングシステム ACCの学習

入門からADAS領域まで幅広いドリルで学びを支援

開発中のシステムは、学習段階に応じ(1)入門ドリル、(2)基礎ドリル、(3)応用ドリル、(4)特別ドリル―の4コースが用意されている。入門ドリルでは、まず運転に慣れることや夜間の運転の不安解消など、基礎ドリルでは、事故防止のための車間距離の取り方や同乗者を不快にさせないためのブレーキ操作などが学習できる。また、特別ドリルではACC(アダプティブクルーズコントロール)やLKAS(車線維持支援システム)といったADAS(先進運転支援システム)領域の機能を使いこなすためのコーチングプログラムが入っている。

ホンダ 安全運転コーチングシステム 安全運転でコインをゲットホンダ 安全運転コーチングシステム 安全運転でコインをゲット

同乗取材では、安全な車間距離や、道路の真ん中を走るためのドリルなどが使われた。車間距離は、先行車との距離だけでなく、「2秒以上」という時間軸で安全な間合いを体得していくというドリルもあった。日本の自動車教習所でも推奨される内容というが、運転キャリアだけは長い筆者も、安全運転を再認識させられる有意義なアドバイスだった。

ドリルではディスプレイ上に表示されるイラストのコーチャー役が、音声で指示する。コースによっては適切な習得に応じてコインが与えられ、ゲーム感覚で安全のスキルを蓄えていくような工夫もしている。一方、ACCのように初めて使う人が多い先進機能については、安全のために停車した状態で学習し、そのうえで実走行しながらアドバイスが受けられるようにドリルを構成している。

ホンダ 安全運転コーチングシステム 客観評価のグラフホンダ 安全運転コーチングシステム 客観評価のグラフ

また、ホンダセンシングの認識機能などを生かしながら、「少しブレーキが遅れました」、「落ち着いて右折しましょう」といったリアルタイムでの運転アドバイスが得られるのも特徴で、事故防止やスキル習得を効果的にサポートしていく。ドリルを行った後は、「認知」、「判断」、「操作」など5つの視点で採点を行い、ドライバーの特性や技量をグラフで客観的にフィードバックする仕組みもある。

二輪用も検討し、グローバルでの普及にらむ

ホンダ 安全企画部 髙石秀明部長ホンダ 安全企画部 髙石秀明部長

ナビ使用中は、システム画像でなく地図画面を優先させることが可能で、ドリルの進行は基本的にシステムの音声のみでドライバーが理解できる構成としている。開発を担当する本田技術研究所の岸本雄也アシスタントチーフエンジニアは「一人でいつでもどこでもレッスンできるのがこのシステムの特徴。免許を取ったばかりの若葉マークの方からベテランまで、様々なドライバーが利用しやすいよう改良を進めていく」と話す。

ホンダの安全企画部部長で、本田技術研究所のエグゼクティブチーフエンジニアを兼ねる高石秀明氏(※)は、システムのリリース時期について「地域によっては時間のかかるケースもあるが、早期に出せるようにしたい」と述べた。また、有償か否かについては「ある程度対価をいただいた方が、普及が進むケースもある。難しいチョイスだが、普及させることが大事」と指摘した。さらに、二輪車の顧客を多く抱えるアジア地域などを含むグローバルでの利用促進を前提としており、「二輪車向けも検討を進めたい」と語った。※高ははしご高

安全運転を支援する簡易型システムは、一部の損保会社がドライブレコーダーを活用して開発しているが、車載の安全運転支援システムなどと連携した自動車メーカーの本格的なシステムは、世界でも異例となる。ホンダは今年4月に就任した三部敏宏社長が、2050年に二輪車を含むホンダ車が関与する交通事故での死亡者をゼロにするという安全目標を掲げた。開発中の安全運転コーチングシステムも、こうした目標達成に向けた重要な支援ツールとなっていく。

《池原照雄》

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