カーナビの先を拓く5Gとモビリティプラットフォーム…アイシン CSSカンパニー 牛田孝一氏[インタビュー]

カーナビの先を拓く5Gとモビリティプラットフォーム…アイシン CSSカンパニー 牛田孝一氏[インタビュー]
カーナビの先を拓く5Gとモビリティプラットフォーム…アイシン CSSカンパニー 牛田孝一氏[インタビュー]全 1 枚

変革にさらされる自動車業界において、サプライヤーもその例外ではない。国内勢でもデンソーを始め、アイシンのグループ会社再編、日立Astemoに見る業界再編が進んでいるが、ここでの共通キーワードは「業態変革」だといえる。

一般には内燃機関からモーター+バッテリー技術への転換がサプライヤーの課題として挙がっている。しかし、モビリティ革命を俯瞰した場合、製造業としての既存モデルをデジタルツイン、サイバーフィジカルシステム、DXというグローバル経済モデルにどう対応していくかという視点も欠かせない。製品がよければ売れる時代から、消費生活を取り巻くサービスエコシステムにいかに製品を組み込むかという、発想の転換が求められている。

この変革のハード面・機能面では、コネクテッド機能と自動運転が新しい消費財としての価値と生産財・都市交通の価値・機能を高める変革の要といえる。この2つを支える要素技術には、GPSなどの位置情報技術、高精度3D地図、カメラを含むセンサー技術、そして5Gに代表される移動体通信技術とそのバックエンドを担うクラウドコンピューティング技術がある。

8月31日に開催される 【無料・オンラインセミナー】5G時代の自動車V2X技術では、Tier1サプライヤーのアイシンがこれらの変革にどう取り組んでいるのかが語られる予定だ。登壇するのは同社CSSカンパニー Chief Project General Manager 牛田孝一氏だ。講演に先立ち、牛田氏に話を聞いた。

――今回のセミナーは5GやV2Xがメインテーマで、アイシンとしての取り組みを話されると思います。どんな内容になるのでしょうか。

アイシンとしては、グループのもつ幅広い商品を開発してきた技術をもとにプラットフォームを構築し、様々な社会課題解決に向けたサービスを外部と協業しながら提供することを考えています。セミナーでは、この概要と、実際の取り組みについて紹介するつもりです。具体的には、カーナビにおけるコネクティッドサービス(Map on Demandやハイブリッドナビなど)の実装事例、サービス事例をいくつか紹介します。また、これらの技術を活用した「みちログ」のような取り組みも始めており、今後どう発展していけるのか、どんな応用が広がるかもお話する予定です。

――MODはカーナビの地図データの動的な差分配信技術ですね。みちログは新しいサービスのようですが、簡単に説明していただけますか。

走行車両のセンサーデータや画像データを収集して路面状態を推定し、道路管理やメンテナンスに役立てるというものです。自治体の車両、ごみ収集車などをプローブカーとして活用することで、補修計画や維持管理を効率化します。バンダイナムコエンターテインメントとのコラボにより、地図上にフルーツが表示されたり、パックマンのキャラクターがルートを移動したりもします。

――なるほど。キャラクターを取り込むことでゲーム性がだせると、従来からある自治体プローブカーやオープンガバメント(行政データやインフラを解放しソーシャル活動によって自治体サービスと品質を向上させる取り組み)を、ビジネスとしての可能性も広げそうですね。

はい。先ほど述べたプラットフォームを活用することで、サプライヤーが持つ車両製品技術を、車両単体への機能・性能提供からモビリティ社会全体へのサービス提供へ広げることができます。自動運転、カーシェア、ロジスティックス、旅客交通といった視点で車両を見た場合、各コンポーネント機能を有機的に統合するプラットフォームの存在が欠かせないと考えています。

――現所属のCSSカンパニーはそのプラットフォームを担う部署ということでしょうか。

ご存じのようにアイシンは2021年にアイシン精機とグループ会社のアイシン・エィ・ダブリュが合併し、単独で車体部品からパワートレインやカーナビまで幅広い事業ポートフォリオを持つ大きな企業になりました。CSS(Connected and Sharing Solutions)カンパニーの前身はアイシン・エィ・ダブリュのカーナビ部門でした。

そのカーナビのコアである位置情報技術を活用したモビリティプラットフォームの構築を行っています。位置情報だけでなく、車両の各コンポーネントの動作データと組み合わせた分析をすることで、さまざまな社会課題の解決や、移動ニーズを満たすために必要なコンテンツを生成することができると考えています。

これらを、モビリティプラットフォームのAPI(アプリケーションプログラミングインターフェイス)やSDK(ソフトウェア開発キット)として提供するだけでなく、車両OEMを始め、モビリティサービスプロバイダーや交通事業者、ロジスティック事業者、自治体などと企画から一緒に困りごと解決に取り組んでいます。

――5Gやこれらのプラットフォームが整備されたとして、たとえばMODやみちログはどのように進化していきそうですか?

カーナビがクラウドにつながるだけで、いろいろな機能が広がります。突発的な道路工事や事故処理による車線規制を反映したり、道路状況のリアルタイムな把握によるルートガイドや運転支援の予測制御が可能になると思っています。これらの一部は製品化・サービス化されていますが、リアルタイム性が十分でなかったりします。今後は、プラットフォーム上のさまざまな情報を統合的に管理し、リアルタイム性や予測精度が向上していくでしょう。

5Gのような高帯域・低遅延の通信インフラが利用できると、動画データの送信、リアルタイムの処理が期待できます。これらは自動運転や安全運転支援で応用が期待されています。                           

これらの制御に必要なデータは、ビッグデータとしてクラウドに集約されるだけは不十分です。計算や予測結果がカーナビなどに表示されるだけでなく、実際の車両各部の制御にもフィードバックする必要があります。この点、パワートレイン、サスペンション、ブレーキ、ステアリング系、各種電装品まで多くのコンポーネントを手掛けるサプライヤーの役割が重要になっていくと考えます。

牛田氏は8月31日に開催される 【無料・オンラインセミナー】5G時代の自動車V2X技術に登壇し詳説する予定だ。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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