レクサス高級ミニバン『LM』日本販売に向けて執るべき戦略とは

アジアではすでに販売されているLEXUS高級ミニバン『LM』(上海モーターショー2019にて)
アジアではすでに販売されているLEXUS高級ミニバン『LM』(上海モーターショー2019にて)全 8 枚

「ラグジュアリー・ミニバン」ではなく、「ラグジュアリー・ムーバー」の頭文字をネーミングとしたレクサス初のミニバン『LM』。日本では未発売だが、筆者はこの路線はどんどん進めていくべきだと考えている。

アジアの中でのレクサス『LM』

なぜなら、これが欧州でもアメリカでもなく、アジア発のプレミアムブランドとして世界をリードしてく成長分野であり、レクサスがより強固なポジションを得るためのツールになり得ると感じているからだ。アジアではすでに販売されているLEXUS高級ミニバン『LM』(上海モーターショー2019にて)アジアではすでに販売されているLEXUS高級ミニバン『LM』(上海モーターショー2019にて)

まずはLMに関しておさらいしておこう。同車は2019年4月に初公開され、現在では中国、香港、マカオ、台湾、インド、そしてタイやインドネシアなど東南アジアで販売されているが、日本では売られていないモデルだ。

ベースはトヨタ『アルファード』、そしてトヨタ『ランドクルーザー』に対するレクサス『LX』のように、ボディなどを共用しつつ、内外装をレクサス級に仕立てたモデル、と考えれば分かりやすい。アジアではすでに販売されているLEXUS高級ミニバン『LM』(上海モーターショー2019にて)アジアではすでに販売されているLEXUS高級ミニバン『LM』(上海モーターショー2019にて)

LMとアルファードは、ボディシェルやパワートレインが共通だ。一方で異なるのが内外装の仕立て。レクサス仕様の外観になっているだけではなく、より立派で快適な2列目を備えるなどラグジュアリーテイストが全面的に引き上げられている。もちろん静粛性もだ。

欧州とアジアではミニバンへ対する概念が違う

そんなLMがアジア各地で用意されたのには背景がある。実はアルファードが絶大な人気を持ち、富裕層の移動車として売れまくっているのだ。オーナーが乗るのは2列目で、いわゆる「ショーファードリブン」である。

メルセデスベンツ『Sクラス』などのハイエンドセダンではなくアルファードが選ばれる理由は、快適性が高いという前提の上に、室内が広いからに他ならない。この空間を一度知ると、もうセダンには戻れないのだ。アジアではすでに販売されているLEXUS高級ミニバン『LM』(上海モーターショー2019にて)アジアではすでに販売されているLEXUS高級ミニバン『LM』(上海モーターショー2019にて)

また、アジア地域では欧州と違って移動平均速度が低いからミニバンボディで不利になる高速安定性が重視されないという事情もある。高速道路をかっ飛ばして時間を節約するより、渋滞を快適に過ごすことのほうが大切なのだ。モバイルオフィス的に車内での仕事もしやすい。アルファードを好んでいるのは富裕層だから、彼らが「さらに上」を求めるのは当然の話。そこで登場したのが、アルファードの上を行くLMなのだ。

欧州のプレミアムブランドに「高級ミニバン」という概念はない。なぜなら背の高いクルマはあくまで「荷物運搬車の延長」であり、富裕層が好んで乗るクルマというポジションになり得ないと考えられていたからだ。メルセデスベンツに『Vクラス』というバンがあるけれど、あくまでちょっと高級な多人数乗用車であり送迎などが主な使い方。2列目のオーナーの快適性を追求したクルマとは言い難い。商用車がベースで、完全に乗用車設計のアルファードとは乗り心地や乗降性に大きな差があるのも、考え方の違いである。渋滞が多くて移動速度が低いアジアならではの、ショーファーカーの新しい形。LMは、これまで欧州のプレミアムブランドにはなかった新感覚のリムジンなのだ。

レクサス色をさらに強め、アルファードとの明確な差別化が必要 

アジア発、日本発のラグジュアリーカーとして、おもてなしの心に満たされたLM。これまで、レクサスは欧州ブランドをベンチマークとし、それに追いつけ追い越せというモチベーションで進化してきた。しかし、将来において進むべき道は、欧州勢のラインナップに捕らわれない独自の提案ではないだろうか。そう考えたとき、LMの持つ意味は大きいし、今後はさらにLMのような欧州勢とは異なる展開で世界中の富裕層に独自の提案をしていくのが発展の近道に思える。アジアではすでに販売されているLEXUS高級ミニバン『LM』(上海モーターショー2019にて)アジアではすでに販売されているLEXUS高級ミニバン『LM』(上海モーターショー2019にて)

気になるのがLMの日本発売があるかどうかだろう。現行モデルはないと予想する。なぜなら、用意しても日本では「アルファードのレクサス版」と思われ、レクサスらしさが霞んでしまう可能性が高いからだ。

しかし、この先アルファードがフルモデルチェンジを迎えた後には、その新型をベースにエクステリアの差別化を増してレクサス色を強めた次期LMを国内展開する可能性は少なくないと感じている。その際は、パッと見ただけではアルファードと共通のボディとは思えないほど、スタイルの差異を強めるのではないだろうか。

《工藤貴宏》

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ホンダ N-BOX など7車種1万2653台リコール…過去の改善措置が不適切
  2. メルセデスベンツ『ウニモグ』、低床仕様登場…荷台高1200mm以下で作業効率向上
  3. スズキ初の量産EV『eビターラ』に期待の声!「リーフとどっちが安い?」など価格に注目集まる
  4. トヨタ RAV4 新型の価格は390万~630万円と予想…電動グレード体系に再編
  5. ベントレーの超高級住宅、最上階は「55億円」 クルマで61階の自宅まで
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 茨城県内4エリアでBYDの大型EVバス「K8 2.0」が運行開始
  2. 中国EV「XPENG」、電動SUV2車種を改良…新電池は12分で80%充電可能
  3. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  4. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  5. 三菱が次世代SUVを初公開、『DSTコンセプト』市販版は年内デビューへ
ランキングをもっと見る