インナーバッフルは必需品![プロショップでスピーカー交換]

ワンオフした「インナーバッフル」でスピーカーを取り付けた例(フォーカルデモカー)。
ワンオフした「インナーバッフル」でスピーカーを取り付けた例(フォーカルデモカー)。全 5 枚
「スピーカー交換」に興味を持っているドライバーは案外多い。しかし「自分で交換するのは大変だし、かといって専門店も敷居が高い…」、そう感じている人もまた、結構いる。当特集はそういう人たちに向けて、プロショップで行う「スピーカー交換」の実践法を紹介している。

◆「インナーバッフル」は、スピーカーを取り付ける際の必需品!

ところで、スピーカーを交換する作業には実は、さまざまなコツやセオリーが存在している。なので、クルマいじりに慣れていたとしても、より良いコンディションでスピーカーを装着できるか否かは、また別の話となる。というわけで今回から数回にわたり、より良いコンディションでスピーカーを取り付けるためのポイント、つまりはプロのテクニックについて説明していく。当回ではまず、「インナーバッフル」をテーマに据えてお贈りする。

さて、最初に「インナーバッフル」とは何なのかを説明していこう。これはつまり、スピーカーを取り付ける際の土台となるパーツだ。純正スピーカーはスピーカーと土台が一体化している場合が多い。なので取り外すと鉄板がむき出しの状態となる。

で、その鉄板にスピーカーを直付けするのはNGだ。なぜなら、そうするとスピーカーの振動が鉄板に直接伝わってしまうし、スピーカーの奥側が窓ガラスと干渉してしまう場合も多くなる。しかし、土台となるパーツをスピーカーと鉄板の間にかませれば、スピーカーの振動によって鉄板が振動するのを抑制でき、そしてスピーカーを立ち上げられるので、ある程度の厚みがあるスピーカーでも取り付けられるようになる。

ちなみに、市販スピーカーを鉄板に直付けしようと思っても、そもそもそれは困難だ。なぜなら、スピーカーのフレームに開いているネジ穴の位置と鉄板に開いているネジ穴の位置が一致する可能性が低いからだ。そうであれば鉄板に穴を開けなくてはならなくなる。

しかし、鉄板に開いたネジ穴の位置に合致する穴を設けた「インナーバッフル」を用意すれば、あとはスピーカーのネジ穴の位置がどこであろうとも「インナーバッフル」でネジを受けられる。

市販「インナーバッフル」の一例(カロッツェリア)。

◆「インナーバッフル」を使うと足場が固まり音が良化!

そして「インナーバッフル」にはもう1つ、重要な役割がある。それは、「足場を固める」というものだ。ドアの鉄板は鉄製ではあるものの案外薄っぺらいので、強度は高くない。対してスピーカーは磁気回路で生まれた力を振動板に伝えて音を発するのだが、それを行うにあたっては足場は堅ければ堅いほど性能を発揮しやすくなる。

例えば野球のピッチャーにとって、マウンドはある程度堅い方が良い。足場が軟弱だと体の力がボールに上手く伝わらない。要するに、力をロスしてしまうのだ。スピーカーにとってもそれは同じだ。足場が柔らかいと、磁気回路で生み出された力を多少なりともロスしてしまう。

しかし「インナーバッフル」を使えば、足場が強固になる。木材製である場合が多いが、それでもある程度の厚みがあるので、薄っぺらな鉄板のみの状態と比べて足場が固まる。

続いては、「インナーバッフル」の種類について説明していく。まず「インナーバッフル」には市販品がある。各メーカーから、車体メーカーごとに用意されている。

ちなみにその多くはMDF製だ。MDFとは難しい言葉で言うと「中密度繊維板」で、つまりは木質繊維を原料とする成型板(ファイバーボード)の一種だ。また、上級モデルとなると金属製のものも存在している。金属製であると強度も耐久性も高いので、音質的にもアドバンテージを発揮する。

ただしMDF製のものと比べると、スピーカーに対しての適合性は低くなる。MDF製であれば表面のどこでもネジを受けられるが、金属製の場合はもともと設定されているネジ穴の位置とスピーカーのネジ穴の位置が合わないケースも出てくる。ただし、それをアジャストさせるアタッチメント的なパーツも存在しているので、さらにコストは上がってしまうがそれを使えば使用は可能だ。

市販「インナーバッフル」の一例(カロッツェリア)。

◆専門店は、車両にもスピーカーにもベストマッチする「インナーバッフル」をワンオフできる!

なお、カーオーディオ・プロショップで「スピーカー交換」を行う場合には、「インナーバッフル」はワンオフされることが多い。既製品と比べると少々予算は多くかかるが、ワンオフすると、取り付ける車両に対しても装着するスピーカーに対しても最良のものを用意できるようになるからだ。

というのも市販品は車体メーカーごとで用意されているので車両側のネジ穴の位置とは大体合うが、しかし車種ごとで異なる部分も少なからずあり、ジャストフィットというわけでもない。鉄板の凹凸の形状に部分的に合わないことや、取り付け穴(スピーカーがすっぽりと入る穴)の大きさと微妙に異なる場合も出てくる。

しかしワンオフすれば凹凸を上手くかわせるし、取り付け穴に対してジャストな大きさに作れる。つまり、ドアの鉄板が「インナーバッフル」をしっかり受け止められるものを作れる。

さらには、取り付けるスピーカーに対してもジャストな大きさに仕上げられる。フレームを100%支えられる大きさで作れるので、スピーカーの力をロスしないものに仕上げられる。

またカーオーディオ・プロショップでは、素材にもこだわりを注ぎ込む。スタンダードなのはMDFだが、さらに堅い合板が使われたり、場合によってはアクリルが使われたりアルミを削り出して成形されることもある。ものによりコストも相応に上がっていくが、強度と耐久性が高い方が音的にも利が出てくるし経年劣化にも強くなる。

このようにカーオーディオ・プロショップで「スピーカー交換」を行えば、「インナーバッフル」にもこだわりを注ぎ込める。

今回は以上だ。次回以降もプロショップで「スピーカー交換」を行うことの利点解説を続行する。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

これがなければ始まらない!? プロショップで実行する「スピーカー交換」、その手順とコツと利点を完全伝授! Part3「インナーバッフル」

《太田祥三》

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