ドイツのマイクロカー事情…IAAモビリティ2021

XEV YOYO
XEV YOYO全 24 枚

IAAモビリティ2021は、GM、ステランティス、日本勢の出展がないが、その穴をうめるように目立っていたのは「L7/L7e」カテゴリーと呼ばれるマイクロEVたちだ。クラウドファンディングなどを活用しドイツを始めとしたEU各国のベンチャーのブースが賑わっている。

【写真】ドイツのマイクロカー(全24枚)

日本でも超小型モビリティとして法整備などが進んでいるが、道交法の制限や型式認定のハードルなどの理由で、いまひとつぱっとしない。なにより日本の道路事情では、平均的な車道で超小型モビリティと乗用車、バス・トラックが共存させることが難しい。

EU諸国の古い街並みでは、以前から車両乗り入れ禁止エリアが設けられいることがある。大型トラックなどは市内への進入がかなり制限されている。市内の道路と都市や街をつなぐ幹線道路・ハイウェイの役割分担が明確なEUでは、超小型モビリティが市街地で共存しやすい土壌がある。これに加えて、昨今のカーボンニュートラル、ゼロエミッション、コロナパンデミックによる社会生活の変化が、乗用車以外の移動手段への期待が高まっている。

たとえば、XEVの『YOYO』は交換式バッテリーのマイクロEVだ。同社の特徴は車両だけでなく交換式バッテリーの供給チャネルもビジネスモデルに組み込んでいる点だ。おもにガソリンスタンドなどに交換ステーションを整備して普及を図る。ステーションといっても、10.3kWhの小さいバッテリーなので、電動の手押しフォークリフトで簡単に交換できるようにしている。

ACMの『CITY ONE』も交換式バッテリーのマイクロEVだ。厳密には交換式というより電池パックを増設できる仕様になっている。フロアには走行用の固定バッテリーが搭載され、それだけでも240kmほどの航続距離を持つ。追加で電池パックを4つ搭載できるようになっており、用途によって使い分けることができる。用途は、ラストマイルやデリバリーを主に想定しているが、シェアリングやタクシー用に4人乗りにも改装可能になっている。充電は普通充電(AC)が基本だ。フル充電までの時間は220VのEUのAC電源で約8時間。ただし、3相380V3.6kWhのAC電源にも対応する。

バッテリーの交換は、約20kgのパックを手作業で荷台下に差し込む。パックはホイールのついた専用キャリーで運ぶ。このキャリー自体が充電器にもなっている。

じつはマイクロEVを手掛けるベンチャーで、交換式バッテリーを採用するのはXEVだけではない。彼らの顧客は一般消費者よりまず、ラストマイルやシェアリングカーの用途だ。これらの場合、夜間充電よりも稼働率を優先させたいため、交換式のほうがベストと判断している。交換式は以前にイスラエルで商用サービスが失敗しているが、近年はNIOが中国でビジネスを軌道にのせつつある。中国ではガソリンスタンドにEV急速充電器とNIOの交換ステーションなどがまとまった「エネルギー港」が存在する。EUはマイクロEV用に簡易交換ステーションが広がるかもしれない。

シェアリングと個人利用を想定したマイクロEVも存在する。microlinoの『m-cro』は、メッサーシュミットのようにフロントハッチから乗り降りする。丸みを帯びたデザインも独特で、先進的な都市やEUの古い街並みにもマッチする。普通充電対応で航続距離は150kmモデルと200kmモデルがある。価格は12000ユーロから。独自の衝突安全ボディも売りだ。なお、microlino社は親子で起業したベンチャーだ。

『CITY TRANSFORMER』(社名・車名同じ)はバイク感覚で乗れるマイクロ4輪EV。ルノー『ツイギー』のように縦に2人乗ることができる。こちらも個人利用を意識して、コネクテッド機能なども装備される予定だ。トランスフォームの意味はトレッド幅を広げたパフォーマンスモデルが用意されるためだ。「ボディシェル」は同じだが、パフォーマンスモデルはシャシー(バッテリー)部分が大きくなり、より自動車に近い走行性能、乗り心地となる。基本となるシティモードは車幅1000mm。乗用車用の駐車スペースなら4台停まるという。パフォーマンスモードは1400mmまで広がる。

これらのマイクロEVの最高速度は90km/hとなっている。

《中尾真二》

テクノロジージャーナリスト・ライター  中尾真二

アスキー(現KADOKAWA)、オライリー・ジャパンの技術書籍の企画・編集を経て独立。現在はWebメディアを中心に取材・執筆活動を展開。インターネットは、商用解放される前の学術ネットワークの時代から利用し、ネットワーク、プログラミング、セキュリティについては企業研修講師もこなす。エレクトロニクス、コンピュータのバックグラウンドを活かし、自動車業界についてもテクノロジーを中心に取材活動を行う。

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