日産リーフで11年重ねた技術の層、リチウムイオン電池はさらに進化するのか…二次電池展 9月29日開幕

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エンビジョンAESCジャパン 副社長執行役員 チーフテクノロジーオフィサー(CTO)の明石寛之氏
エンビジョンAESCジャパン 副社長執行役員 チーフテクノロジーオフィサー(CTO)の明石寛之氏全 5 枚

2021年9月29日(水)から10月1日(金)の3日間にわたり、東京ビッグサイトで第1回[国際]二次電池展[秋]が初開催される。毎年3月に開催をしていた本展だが、世界的な電気自動車(EV)需要の高まりにともない、今年から9月[秋]にも開催される。ますます注目される二次電池・キャパシタの研究開発・製造に必要な部品・材料、装置、および二次電池が一堂に出展する国際商談展だ。日本中から業界関係者が来場する専門展として業界に定着している。

世界最⼤級のエネルギーの総合展、スマートエネルギーWeekの中で開催される同展。コロナ禍でビジネスの接点がオンラインに寄りがちな今だからこそ、リアルに人と情報が集まる貴重な場となるはずだ。会場内での徹底したコロナ安全対策を実施し、予定通り開催される(9月13日現在)。

「リアルな展示会」が目玉の二次電池展、多岐にわたる業界関係者や著名人による専門セミナーもLIVEで開催する。今回は全固体電池やEV社会などをテーマに、全110講演が開催予定となっている。

「社会課題に貢献する二次電池が創る未来とは?」をテーマに行われる基調講演で、「持続可能社会実現に向けた車載用リチウムイオン二次電池の将来技術について」と題し登壇するのは、エンビジョンAESCジャパン 副社長執行役員 チーフテクノロジーオフィサー(CTO)の明石寛之氏(以下、明石CTO)だ。

2010年に世界初の量産型電気自動車(EV)として発売された『日産リーフ』初代モデルからリチウムイオン電池を供給しているエンビジョンAESCジャパンは現在、エネルギー密度600 Wh/リットルの高エネルギー密度を有する新世代リチウムイオン電池『Gen5』の量産化を進めている。

明石CTOは「全固体電池の研究開発も進めているが、液系リチウムイオンバッテリーも未だ発展途上だ。少なくとも、この5年間はまだまだエネルギー密度を引き上げていく。単にエネルギー密度を上げるだけではなく、新たな付加価値と抱き合わせた「次世代製品」を市場投入していく。」と語る。

日産リーフのリチウムイオンバッテリー日産リーフのリチウムイオンバッテリー

11年間蓄積した技術の層とロードマップ

世界的なEVシフトが進む中、車載用電池のグローバルサプライヤー間の技術競争も激しさを増している。明石CTOは「リチウムイオンバッテリーサプライヤーに対して求められる技術水準は高くなってきている。その中でやはり私たちは、競合と引けを取らないエネルギー性能を持ったリチウムイオンバッテリーを世の中に出させて頂いている」と胸を張る。

というのも「競合と私たちとの大きな違いとして、バッテリー品質があると思っている。日産は11年前からEVをグローバルに展開しており、その数はグローバル市場に約60万台。リチウムイオンバッテリーパックに積まれている大型セルは1億を超えているが、いわゆる発火事故、重大な品質事故はゼロ。一般論として、エネルギー密度を上げていくと安全性能はトレードオフになってしまいがちだが、当社はその点もしっかりと対策をしながら、なおかつエネルギー密度を上げてきた。」という強みがあるからだ。

明石CTOは「バッテリー技術というものは層を成し、その厚みは経験・試行錯誤により増していく。NECとNECトーキンの民生LiB事業で培われたノウハウに、日産自動車の車載用大型LiB開発と車両設計・生産ノウハウを融合させながらグローバルに事業を立ち上げてきた、この11年間の蓄積は、それなりの重みがあると思っている。これからもエネルギー密度をまだまだ引き上げていくが、いたずらにエネルギー密度の高い材料を使うだけではなく、それを使った場合に起こりえる不具合事象を先取りして製品設計に未然予防策をしっかりと落とし込み、それを量産技術の造り込みプロセスに反映させていく。この一連の流れを私たちの将来にわたる強みにしたい」と語る。

では、新世代リチウムイオン電池Gen5で600Wh/リットル超えを果たした後のロードマップをどう描いているのか。「ブレイクスルーの一つは、負極材料にある」と明石CTOは明かす。

具体的には「負極の材料を黒鉛から別の高エネルギー密度材料に2ステップで切り替えていく。ファーストステップは、黒鉛よりも高いエネルギー密度の材料を、黒鉛と併用する。」さらに「セカンドステップでは、金属リチウムに置き換えていく。もう抜本的に黒鉛とかシリコンとかの粉体ではなく、リチウムイオンの集合体、つまり金属。これを使ってしまおうというのが究極のチャレンジで、そうしたことをすると1000 Wh/リットルくらいまで見えてくる。そのあたりで全固体電池が登場してくる」と明石CTOはみる。

その上で「800Wh/リットルはひとつのマイルストーン。ここまでは今の液系リチウムイオンの技術延長で狙えるレンジ。また、この技術はキー材料のサプライチェーンも確立されているので、安定供給ならびにコストメリットも出しやすい。中期レンジでは、この技術をベースに温室効果ガス削減の切り札とされる再生可能エネルギー普及に蓄電池技術ソリューションを提供していきたい。その先に究極のリチウム金属を使ったバッテリーにチャレンジしていくというのが私たちの考え方」と話す。

リチウムイオン電池の需要が10倍に拡大する中で

充電する日産リーフ充電する日産リーフ
リチウムイオン電池のさらなる性能向上に取り組む一方で、明石CTOは「リチウムイオン電池の生産量も今後10年間で10倍以上の急拡大が見込まれる」とも指摘している。

実際、エンビジョンAESCグループはこの夏、フランス、イギリス、茨城県での工場建設計画を矢継ぎ早に公表している。明石CTOは「莫大な投資額になる。一般論として、伸びしろの高い市場に対し、早期に積極的な投資を検討していくというのがグローバル市場でのひとつの考え方。ただ昨今の蓄電池市場は、それほど単純な話ではなく、国家・地域レベルでの戦略として、自国産業をいかに成功に導いていくのかという議論が多分ここに噛み合ってくると思う。国内蓄電池産業についても、電池議連、関係省庁、自動車工業会、電池工業会、バッテリーサプライチェーン協議会(通称BASC)などとのコミュニケーションを通じて、より実践的な戦略を模索していくことが必要だ。」とみる。

2030年代でのガソリン車廃止に向けて積極的なEVの市場投入が完成車メーカー各社から打ち出されている中で、車載電池の性能向上や生産能力増強は必須となるが、その性能や生産規模に見合うだけの原料や素材の確保、安定調達も避けて通れない。

明石CTOも「そこは重要な経営課題」とした上で、「需要が10倍に拡大するという時に、バッテリーの生産設備能力だけではなくて、サプライチェーン全部が10倍に能力を増強しなければいけないとなる。当然、アップストリーム側の人たちとも対話を重ねないといけない。投資のリスクという同じ問題に直面するからだ。そこをどうやってミニマイズしていくかという時に、これはどうしても仲間づくりになる。できれば当社のような一番川下のバッテリーサプライヤーが全体のみなさんにお声掛けさせて頂いて、より良いソリューションを模索していきたい」。

1社では解けない課題も共有して

エンビジョンAESCジャパン 副社長執行役員 チーフテクノロジーオフィサー(CTO)の明石寛之氏エンビジョンAESCジャパン 副社長執行役員 チーフテクノロジーオフィサー(CTO)の明石寛之氏
そう話す明石CTOは、東京ビッグサイトで開催される二次電池展の初日(9月29日)に行われる基調講演に「持続可能社会実現に向けた車載用リチウムイオン二次電池の将来技術について」をテーマに登壇する。

明石CTOは「まずはエンビジョンAESCとして次世代バッテリー技術の方向性をお示ししたい。これは皆さん共通の関心事項だと思うので、私どもの考え方をクリアなメッセージとしてお届けしたい」と話す

さらに「最近話題に上り始めているサーキュラーエコノミーとバッテリーリサイクル。これはグローバル社会が直面する新しい課題であり、1社単独では解けない課題です。当社の課題認識と具体的な取り組みをご紹介し、もし聞いて頂いている皆さんが検討されている新しいアイデア・ソリューションがあれば是非共有して頂けたらと思います。」と期待を寄せていた。

本講演の詳細はこちら

■第1回[国際]二次電池展 秋
会期:2021年9月29日(水)~10月1日(金)10時~18時(最終日は17時まで)
会場:東京ビッグサイト
主催:RXジャパン株式会社

※9/13(月)現在、本展は予定通り開催いたします。最新情報は展示会HPをご確認ください

二次電池展 公式HP

二次電池展の無料来場登録はこちら

《小松哲也》

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