ドアをスピーカーに作り替える!?…デッドニング[プロショップでスピーカー交換]

インナーパネルへの制振材の施行例。
インナーパネルへの制振材の施行例。全 6 枚写真をすべて見る

「スピーカー交換」に興味を持つドライバー諸氏に向けて、それを「プロショップ」で行う場合の流れと利点を紹介している当特集。今回は、「デッドニング」をテーマに、これが何で、プロはこれをどのように行っているのかを解説していく。

クルマのドアは、スピーカーとしてのコンディションが至って劣悪…。

最初に、「デッドニング」とは何なのかを説明していこう。ちなみに“デッド”という言葉は音響分野で使われる場合、「響きにくい」という意味となる。そして対義語は“ライブ”で、こちらは「響きやすい」という意味を持つ。例えばリスニングルームの音の響き方を評するときに「この部屋はデッドだ」というような使われ方がされる。

で、カーオーディオにおいての「デッドニング」の“デッド”も、「響きにくい」という意味を持つ。実際「デッドニング」は、ドア内部の鉄板を響きにくくする作業、つまり共振を止める作業が中心となっている。ゆえに「デッドニング」という名称で呼ばれているというわけだ。

とは言いつつも「デッドニング」は、鉄板の振動を抑えるだけのものではない。むしろ、「スピーカーボックスを作る作業」だと捉えるべきだ。というのもクルマのドアは、ホーム用のスピーカーのボックスに相当する。しかし、クルマのドアはスピーカーとして設計されてはいない。ゆえに、音響的なコンディションは至って劣悪だ。

例えば、スピーカーを取り付ける鉄板は薄っぺらくて強度が低い。またホーム用のスピーカーは密閉性が高いがクルマのドアは水抜きの穴も開けられていて、インナーパネルにはサービスホールと呼ばれるメンテナンス用の開口部も設けられている。スピーカーボックスとしては出来が悪いと言わざるを得ない状況なのだ。

というわけで「デッドニング」とは、このようにスピーカーとしての体裁を成していないクルマのドアを、スピーカーとして仕上げていくための作業なのである。

デッドニング用部材(吸音材)の一例(フェリソニ・C-1)。

「スピーカー交換」をしたら「デッドニング」まで行わないともったいない!?

よって、もしも「スピーカー交換」をするのであれば特に、そのスピーカーユニットの性能を一層引き出すためには「デッドニング」もできればセットで行いたい。そうしないとせっかく購入した市販スピーカーが「宝の持ち腐れ」になりかねない。

なお「デッドニング」には、さまざなコツやセオリーが存在している。なにせ「スピーカーを作る」という作業であるわけなので、そこには理論があってしかるべきで、各専門店は長年の実践から得られた経験に基づくノウハウを持っている。「スピーカー交換」をカーオーディオ・プロショップでオーダーする場合には、そのノウハウを振るってもらえる。結果、より良いスピーカーに仕上げてもらえる。

ただし、手をかければかけるほど相応のコストがかかってくる。取り付け作業というよりも「製作作業」であるわけなのでそれもそのはずだ。なので、コストを抑えたいと思ったら、段階を踏んで徐々に工程を足していくという手もある。最初からフルメニューを実行した方がより良い結果が得られることは間違いないが、段階を踏むのはアリだ。実際、カーオーディオ・プロショップでは、「デッドニング」をオブションとしているケースは少なくない、そしてそれを「松竹梅」的に、初級から上級まで内容を変えてメニュー化している場合も多い。

なお、ステップアップしていった方が楽しさも広がる。なぜなら、「効果のほどがよく分かるから」だ。段階を踏むと、何をするとどのように音が変わるかを体験できるので、それぞれの作業の必要性を知ることができ、そして何より、都度音が良くなる感動を味わえる。

スピーカー裏への吸音材の施行例。

「背圧」がしでかすさまざまな“悪さ”を、1つ1つ消していく!

続いては、「デッドニング」で行われる作業内容を具体的に説明していく。ショップごとでそれぞれノウハウがありやり方は細かくは異なるが、一般的なものを紹介していく。

まず、アウターパネル(外側の鉄板)のスピーカーの真裏には、吸音材や拡散材が貼られる。というのも、スピーカーは裏側にも音を発していて、この音エネルギー(背圧)がさまざまな“悪さ”をしでかす。「デッドニング」では、それによる弊害を1つ1つ潰していくことが目指されるのだが、その1つ目の作業として、背圧の影響がもっとも大きい場所への対処が施されるというわけだ。

なおこの「背圧」がしでかす最初の“悪さ”は、「スピーカーの振動板の動きにストレスを与えること」というものだ。背圧がアウターパネルで跳ね返ってスピーカーの振動板にぶつかると、その圧力で振動板の動きが鈍る。結果、音も悪くなる。吸音材や拡散材は、それを防ぐために貼られる。背圧を吸ったり散らばらせることで跳ね返る力を弱めようとするわけだ。また、この段階で背圧のエネルギーを弱めることも目指される。そうできれば、その他の弊害も小さくできる。

そして吸音材や拡散材が貼られたその周辺やその他の共振しやすい場所に制振材が貼られて、アウターパネルが振動して異音を発生するのを抑制していく。

インナーパネル(ドア内部の車室内側の鉄板)に対しては、以下のようなことが行われる。サービスホールを塞ぐ作業を行い背圧をドア内部にある程度閉じ込めることが目指され、さらにはビビりそうなところの制振作業も行われる。また内張りパネルに対しても制振材や吸音材が貼られ、背圧による内張りパネルの共振や音漏れを抑制していく。

こういった作業を行うことで、クルマのドアのスピーカーとしての完成度が高められていく。カーオーディオ・プロショップは、それを確実に実行してくれるのだ。

今回は以上だ。次回もカーオーディオ・プロショップで行う「スピーカー交換」の手順と利点についての解説を続行する。お楽しみに。

太田祥三|ライター
大学卒業後、出版社に勤務し雑誌編集者としてキャリアを積む。カー雑誌、インテリア雑誌、そしてカーオーディオ専門誌の編集長を歴任した後、約20年間務めた会社を退職しフリーに。カーオーディオ、カーナビ、その他カーエレクトロニクス関連を中心に幅広く執筆活動を展開中。ライフワークとして音楽活動にも取り組んでいる。

ドアをスピーカーに作り替える!? プロショップで実行する「スピーカー交換」、その手順とコツと利点を完全伝授! Part4「デッドニング」

《太田祥三》

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