新型「ランドクルーザー」の納期はなぜ長いのか あの地域との深い関係とは

2021年:ランドクルーザー300系(ステーションワゴン)=新型
2021年:ランドクルーザー300系(ステーションワゴン)=新型全 10 枚

新型になったランドクルーザー(300系)は、納期がとても長い。メーカーは「契約から納車までに1年以上を要する」としているが、販売店では「今は2年以上に達しており、正確な納期をお伝えできない」という。

納期が2年以上では、ユーザーも困る。2年後には転勤している可能性もあり、企業によっては海外拠点で働いていることも考えられる。納期が長すぎて、購入に踏み切れないユーザーも多いと思う。

新型ランドクルーザーの納期は、なぜ2年以上なのか。先代型は長くても半年程度だったから、新型では大幅に延びた。納期が遅延している理由を開発者に尋ねると、以下のように述べた。

「ランドクルーザーは海外の需要が多い。生産総数の50%以上が中東で販売される。そこにロシアとオーストラリアを加えると90%に達する。新型は海外でも人気がきわめて高く、これにコロナ禍の影響も加わり、納期が大幅に延びた」。2018年:地域別販売台数(単位は1万台)2018年:地域別販売台数(単位は1万台)

具体的には、ランドクルーザーのどのような魅力が海外の好調な売れ行きに結び付き、納期を延ばしているのか。この点も尋ねた。

「一番の魅力は、悪路の優れた走破力と耐久性だ。海外には立ち往生したら生命に危険が及ぶルートも多い。従ってランドクルーザーでは、必ず生還できることが使命になる。走破力が優れ、なおかつ絶対に故障しない信頼性を徹底的に高めた。そのためにランドクルーザーは、新型もハイブリッドシステムを採用していない。万一、故障の原因になったら困るからだ。このクルマ造りが、世界のお客様、特に中東、ロシア、オーストラリアといった過酷な地域の方々から高く評価された」。新型 トヨタ ランドクルーザー 300系新型 トヨタ ランドクルーザー 300系

ランドクルーザーはどのように使われているのか。「日常的な移動のほか、顧客を乗せて砂漠を走破するツアーなども実施されている」。砂漠の走行では、横転の危険も伴う。専門的な運転技術と併せて、悪路における優れた走行安定性も重要だ。

このように中東などには、ランドクルーザーが真価を発揮する場面が多い。中東といえば裕福な印象が強く、ランドクルーザーの豪華さが人気を呼んでいる面もあるだろうが、本質は悪路の走破力だ。生命に係わるから、車種選びも厳格に行われ、信頼性の高いランドクルーザーに特化されて納期も延びている。

《渡辺陽一郎》

渡辺陽一郎

渡辺陽一郎|カーライフ・ジャーナリスト 1961年に生まれ、1985年に自動車雑誌を扱う出版社に入社。編集者として購入ガイド誌、4WD誌、キャンピングカー誌などを手掛け、10年ほど編集長を務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向した。「読者の皆様に怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も大切と考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  2. 最後のフォードエンジン搭載ケータハム、「セブン 310アンコール」発表
  3. 船上で水素を製造できる「エナジー・オブザーバー」が9年間の航海へ
  4. 高機能ヘルメットスタンド、梅雨・湿気から解放する乾燥ファン搭載でMakuake登場
  5. 「三菱っぽくないけどカッコいい」ルノーの兄弟車となる『エクリプス クロス』次期型デザインに反響
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 米国EV市場の課題と消費者意識、充電インフラが最大の懸念…J.D.パワー調査
  2. 低速の自動運転遠隔サポートシステム、日本主導で国際規格が世界初制定
  3. 「やっと日本仕様が見れるのか」新世代ワーゲンバス『ID. Buzz』ついに上陸! 気になるのはサイズ?価格?
  4. BYD、認定中古車にも「10年30万km」バッテリーSoH保証適用
  5. 「あれはなんだ?」BYDが“軽EV”を作る気になった会長の一言
ランキングをもっと見る