【スズキ アドレス110 試乗】安さだけで評価するのは大きな間違い…伊丹孝裕

スズキ アドレス110
スズキ アドレス110全 28 枚

コストパフォーマンスに優れたシティコミューター、スズキ『アドレス110』に試乗。その機動力や利便性をじっくり体感してみた。

【画像全28枚】

安さだけで評価するのは大きな間違い

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アドレス110は2015年に発売され、これまで二度のマイナーチェンジを受けている。2018年に排ガス規制への対応を済ませ、2020年には前後連動ブレーキの採用を経て今に至っているわけだが、その間も価格上昇は最小限に抑えられ、イニシャルコストの安さが支持されているのは間違いない。裏を返せば、純粋な日常の足であり、走りをあれこれ評価するような対象ではない……と思いきや、これがなかなかどうして味わい深いものがあった。

スクーターというよりもバイク的なフィーリング

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大きな要因は、エンジンだ。112ccの空冷4ストロークSOHC単気筒は、8.8ps/7750rpmの最高出力と0.88kgf・m/6250rpmの最大トルクを発揮する。これ自体は平均的な数値ながら、アイドリング+α付近の鼓動感が強く、単なるスクーターというよりもバイク的なフィーリングなのだ。ちゃんと空冷っぽいというか、単気筒らしいというか、ささやかながらも「トットットッ……」という爆発が明確で、手やお尻に伝わってくる心地いいバイブレーションがなんだか微笑ましい。

走り始めると、その鼓動が力強さに変換されるところが好印象だ。ゼロ発進からのダッシュこそ、マイルドな加速に抑えられているものの、タイヤが数回転する頃にはダイレクトなレスポンスを披露。低回転域からグイグイと車速を引き上げていく、厚みのあるトルクが頼もしい。

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スペック以上の加速に感じられるのは、100kgという車重も無関係ではない。125ccクラスのスクーターになると、軽くても115kg前後、重たければ130kgを超えることが珍しくないが、アドレス110は装備を必要最低限に抑え、車体もスリムにすることで軽量化を実現。足着き性や乗降のしやすさも群を抜き、日常性に特化した作りが貫かれている。

例えばそれは、幅が切り詰められたハンドルもそうだ。狭い場所でも扱いやすく、渋滞路やバイク同士がひしめく駐車場でも楽に取り回せるなど、「通勤快足」としてのツボを外していない。

濡れた路面での安心感も高い

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ハンドリングもいい。車体をリーンさせる初期の手応えは軽く、ヒョイと倒れる一方、決して神経質過ぎない。ある一定のバンク角に達するとそれが止まって安定。峠道のコーナーで長くバンクさせるよりも、交差点のような短い区間でクルリと曲がる軽快感が重視されている。

また、今回たまたま雨にも祟られたわけだが、濡れた路面での安心感が高かった点を評価したい。標準装着タイヤ(IRC・SS530)の性能は特別なものではないが、ストロークの長いサスペンションのおかげで接地感が分かりやすく、悪コンディションの中でも走らなければならない、配送サービスのような使い方に向いていそうだ。

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それを踏まえると、数少ないウィークポイントがABS非装着という点だろう。このクラスにはまだABS装着義務はなく、前後連動ブレーキがその代用として認められている。スズキは2020年のマイナーチェンジでこれをクリアしてくれているわけだが、リヤタイヤは簡単にロックするため、普段ABS装着車に乗り慣れているライダーは注意が必要だ。

足りない収納力をおぎなう手段も

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さて、ではスクーターの最重要事項である利便性はどうだろう。最も多用するであろうシート下スペースは20.6リットルの容量と10kgの積載許容量が確保され、フルフェイスのヘルメットを楽々収納することができる。他の荷物がかさばる場合は2個分用意されているヘルメットホルダーが活用できる他、足もとには簡易的なインナーラックも用意されている。

ただし、既述の通り軽量スリムな車体ゆえ、収納力そのものは特筆に値しない。それがネックとなって、ワンランク上のスクーターを選ぶユーザーも少なくないのが現実である。スズキもそれをよく分かっていて、現在「トップケースセット購入キャンペーン」(2022年3月20日まで)を実施。

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これは、車体後部に付けるトップケースとそれを装着するためのアダプタープレートの割引クーポンがプレゼントされるというもので、これを活用すれば収納スペースは一気に30リットル分も追加されることになるのだ。

今回の撮影車両に装着されているケースがまさにそれ。お世辞にも色気や上質さを向上させるものではないが、この手の装備は一度使うとやめられない超実用のアイテムになるはずだ。

コストパフォーマンスを重視するユーザーなら

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もっとも、スズキが実利一辺倒で華やかさにまったく無頓着かと言えば、案外そうでもない。2021年8月に追加された車体色がそれで、既存の4色(シルバー/ホワイト/ブルー/ブラック)の他に、キャンディマックスオレンジとマットセレネゴールドメタリックというきらびやかな色をラインナップ。全6色という豊富なバリエーションの中から好みの外装を選択することができる。

力強くトルクフルなエンジン、軽くて扱いやすい車体、最低限必要な収納力がバランスしたシティコミューターが、このアドレス110である。コストパフォーマンスを重視するユーザーなら、高い満足度が得られるに違いない。

スズキ アドレス110と伊丹孝裕氏スズキ アドレス110と伊丹孝裕氏

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★

伊丹孝裕|モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

《伊丹孝裕》

モーターサイクルジャーナリスト 伊丹孝裕

モーターサイクルジャーナリスト 1971年京都生まれ。1998年にネコ・パブリッシングへ入社。2005年、同社発刊の2輪専門誌『クラブマン』の編集長に就任し、2007年に退社。以後、フリーランスのライターとして、2輪と4輪媒体を中心に執筆を行っている。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム、鈴鹿8時間耐久ロードレースといった国内外のレースに参戦。サーキット走行会や試乗会ではインストラクターも務めている。

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