セアトの旋風は届くか…スポーツ&デザイン[日本にまだないブランド]

セアトの歴代スポーツコンパクト
セアトの歴代スポーツコンパクト全 21 枚

スペインの自動車メーカー、セアトが誕生したのは第二次大戦後の1950年。官主導の設立で、SEATはスペイン乗用自動車会社(Sociedada Espagnola de Automobiles de Turismo)の頭文字を取ったものである。

親会社はドイツのフォルクスワーゲン。80年代初頭、フィアットがセアトから手を引いたさいに入れ替わりで提携関係を結んだ格好だった。が、フォルクスワーゲンにとって初の本格的な海外メーカー買収は難産の連続で、商品開発、品質向上から営業に至るまで長く混乱が続いた。90年代に入り、サブコンパクトカーの第2世代『イビサ』がヒットしたことでようやく経営が安定しはじめ、ブランドアイデンティティも明確になっていった。

そのブランドアイデンティティはスポーティさと低価格。フォルクスワーゲングループが擁するフォルクスワーゲン、シュコダ、セアトの3つのノンプレミアムブランドの中で最もターゲット年齢が若く、最もスポーティ志向が強く、最も価格が安い。

3ブランドの中でも特徴的なのはデザインコンシャスであること。経営が混迷していた80年代に発売にこぎつけた唯一のマトモな新モデル、初代イビサのデザインにジョルジェット・ジウジアーロ氏を起用したのを皮切りに、アルファロメオ『156』のデザイナーとして知られるヴァルテール・デ・シルヴァ氏、ランボルギーニ『ガヤルド』を手がけたルーク・ドンカーヴォルケ氏などの大物が起用されてきた。歴代モデルを見ても大変モダンで魅力的なデザインを持つものが多い。セアト・イビサ初代セアト・イビサ初代

現在のラインナップはサブコンパクトクラスのイビサ、フォルクスワーゲン『ゴルフ』に相当するコンパクトハッチバックの『レオン』、小型SUV『アローナ』『アテカ』、3列シートSUV『タラコ』、3列シートミニバン『アルハンブラ』。

なお、2018年にセアトから新モータースポーツ&スポーツカー製造会社「クプラ」が分離独立した。クプラはそれ以前はセアト車のスポーツグレードに付けられていたサブネームで、それがそのままブランド名になった格好で、日本ではトヨタのガズーレーシングに相当する。2020年にはオリジナルモデル『フォルメントール』も発売するなど活動は活発で、今後の動向が注目される。セアト/クプラ・フォルメントールセアト/クプラ・フォルメントール

《井元康一郎》

井元康一郎

井元康一郎 鹿児島出身。大学卒業後、パイプオルガン奏者、高校教員、娯楽誌記者、経済誌記者などを経て独立。自動車、宇宙航空、電機、化学、映画、音楽、楽器などをフィールドに、取材・執筆活動を行っている。 著書に『プリウスvsインサイト』(小学館)、『レクサス─トヨタは世界的ブランドを打ち出せるのか』(プレジデント社)がある。

+ 続きを読む

【注目の記事】[PR]

ピックアップ

教えて!はじめてEV

アクセスランキング

  1. ポルシェ、新型『911カップ』発表…520馬力にパワーアップ
  2. トヨタ『ハリアー』6年ぶりのフルモデルチェンジへ…注目ニュースベスト5 2025年上期
  3. 「リアウィンドウがない」のが斬新と評価! ポールスター『4』がデザイン賞の最高賞に
  4. コルベット史上最強の「ZR1X」、60年ぶりマット塗装の限定車は約3575万円から
  5. エアレスタイヤ搭載でペダルもなし、免許不要の特定小型原付「Future smart」発売
ランキングをもっと見る

ブックマークランキング

  1. 「AIディファインド」の衝撃、日本の自動車産業は新たな波に飲み込まれるのか…アクセンチュア シニア・マネジャー 藤本雄一郎氏[インタビュー]
  2. EV充電インフラ-停滞する世界と“異常値”を示す日本…富士経済 山田賢司氏[インタビュー]
  3. ステランティスの水素事業撤退、シンビオに深刻な影響…フォルヴィアとミシュランが懸念表明
  4. SUBARUの次世代アイサイト、画像認識技術と最新AI技術融合へ…開発にHPEサーバー導入
  5. 「ハンズオフ」は本当に必要なのか? 高速での手離し運転を実現したホンダ『アコード』を試乗して感じた「意識の変化」
ランキングをもっと見る