【BMW M2コンペティション 新型試乗】走り屋さん、いらっしゃ~い!…中村孝仁

BMW M2コンペティション
BMW M2コンペティション全 21 枚

走り屋さんを自任するなら、探すだけの価値はある

まず初めにお断りしておく。すでに本国では新しい『2シリーズクーペ』が発表されていて、日本ではこの『M2コンペティション』はカタログ落ちした。というわけで、もしこのクルマを御所望なら、ディーラーをめぐって在庫の確認を急ぐべきだろう。

その価格といい(試乗車の場合オプション込みで983万5000円)、サイズ感といい、卓越した性能といい、新しく誕生するであろうM2がこの値段を超えることは想像に難くないから、古くても走り屋さんを自任するユーザーなら、探すだけの価値のあるクルマだ。

実は現行のM2コンペティションは意外なほどの短命で、デリバリーが開始されたのは2019年だというから、僅か2年でのバトンタッチということになる。もっとも新しい2シリーズクーペが出たといっても、M2はまだ公表されていない。だから新たなモデルが来るまではまだしばらくの間がある。

コンパクトなボディによくぞ直6をぶち込んだ

BMW M2コンペティションBMW M2コンペティション

そんなわけだから、改めてこの2年前に出たM2コンペティションに試乗して思ったことは、このコンパクトなボディによくぞデッカイ直6をぶち込んだな、というもの。ボディは3サイズ 全長4475×全幅1855×全高1410mm。全幅がでかいのは腫れあがったリアフェンダーに起因する。因みにタイヤサイズは前後で異なりフロントに245/35ZR19、リアに265/35ZR19を履く。銘柄はミシュラン・パイロットスーパースポーツである。

今回は都会のど真ん中での試乗。そんなわけだからこのクルマのポテンシャルを存分に発揮するというわけにはいかなかったのだが、まあ実力の片鱗だけは見せてくれた。そして、改めてBMWのストレート6エンジンの良さを再認識した印象である。このクルマに搭載されているのはS55のコードネームを持つ3リットルのツインパワーターボである。2015年に誕生したM2に搭載されていたのはN55のコードネームを持つもので、S55はいわばそのハイパフォーマンスバーションである。

MTモードでパドルを駆使するのが楽しい

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地下駐車場でエンジンをかけた瞬間から、如何にも獰猛そうなサウンドをあたりにまき散らす。トランスミッションは7速DCTで、予備知識なく一般道に出てみると、どうもシフトラグがある。特にダウンシフトの遅さは相当なもので、なんだこれ?と思ったのだが、シフトレバーの根元につくスイッチによって、シフトのタイミングを調節できることが判明。これを一番速くしてやって問題は解決した(タイミングは3段階で調整できる)。もっとも一番タイミングの遅いポジションはいったい誰が使うのか?であったが…。

BMWはグレードの低いモデルにDCTを採用しているが、このM2コンペティションも7速のDCT。かつてはその電光石火のシフトの素早さでスポーツモデルには好まれたのだが、今やステップATでも同等の効果が得られてしまい、必ずしもアドバンテージはない。ただ、やっぱりこの種の車に乗れば、ほぼ当然のごとくMTモードでパドルを駆使した方が楽しい。

実はこのDCTにはPポジションがない。話を聞くと、どこに入っていても基本的にエンジンを切ればPポジションに入るそうだ。知らなかったのでNをチョイスしてエンジンを切ったらワーニングが出る。もっともそれでPに入るのだが。

このパフォーマンスにしてこの乗り心地

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では都内をめぐってこのクルマの乗り味というか、乗り心地がどうだったか…である。単刀直入に言えば相当に固い。しっかりと締め上げられているのが実感できる乗り心地なのだが、では「我慢」を強いられる乗り心地かというと、実はそうではなくて「納得」の乗り心地という印象である。このパフォーマンスにしてこの乗り心地は仕方ないなという納得である。

個人的にかつて空冷のポルシェ『911』を所有していたが、全く異なるエンジンなのに何故かある特定の回転領域で、あの独特な911風サウンドを聞かせてくれて、ついマニュアルで固定のまま、その回転領域でエンジンサウンドを楽しんだ。

恐らく無理な走りをすれば手痛いしっぺ返しが来るような気がするが、そこそこのレベルで走るとこんなに楽しいクルマはない。

BMW M2コンペティションBMW M2コンペティション

■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★

中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来44年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

《中村 孝仁》

中村 孝仁

中村孝仁(なかむらたかひと)|AJAJ会員 1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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